MUJI HOUSEが問い直す、家の本質 「木の家」20年変わらないかたちが体現する設計思考 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
MUJI HOUSEが問い直す、家の本質 「木の家」20年変わらないかたちが体現する設計思考

MUJI HOUSEが問い直す、家の本質 「木の家」20年変わらないかたちが体現する設計思考

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2004年に販売を開始したMUJI HOUSEの「木の家」は、発売から20年以上が経つ今も、当初と変わらないかたちのまま販売し続けています。建築家の難波和彦氏が提唱した「箱の家」のコンセプトをベースに共同開発された「木の家」は、無印良品の家が掲げる「永く使える、変えられる」という思想を具現化する、一室空間の原点となりました。

南面に大きな開口部と深い庇のある、一室空間。「格好よさ」や「流行」を追ったものではなく、素材からかたちのひとつひとつに「いつでも、誰にでも、何処ででも」快適で暮らしやすい家を目指し続けてきた「木の家」は、2015年に、同じコンセプト・デザインで販売され続けていることが認められ、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞しています。

仕切りのない開放的な大空間を、日本の厳しい気候や敷地条件のなかで快適に成立させるために、どのような技術的アプローチと設計の工夫が積み重ねられてきたのでしょうか。『TECTURE MAG』が、建築的側面からMUJI HOUSE「木の家」について機能と意匠の両面を読み解きます。

「自由に設計する家」ではなく、「自由に暮らせる家」

「木の家」が日本の住宅の常識と異なる点のひとつに、間取りをつくりこまないことが挙げられます。

この発想の背景には、「今の自分の暮らしのかたち」に合わせた家の限界についての問いがあります。15年後には家族構成が変わり、30年後には別の人が暮らしているかもしれない。特定の暮らしのかたちに合わせてつくり込まれた家ほど、その他の「暮らしのかたち」には合わなくなります。そこでMUJI HOUSEは「いつでも、誰にでも、何処ででも」快適であるために、「最初から何もつくり込まない」という解に辿り着きました。

この「木の家」の間取りのない空間=「一室空間」を支えているのは、SE構法です。一般的な在来軸組工法では、大きな吹き抜けや仕切りのない大空間をつくろうとすると、耐震性を確保するために室内に多くの耐力壁や柱を設ける必要があり、空間が細分化されてしまいます。これに対し「木の家」は、全棟に対して厳密な構造計算を行い、建物の外周部と主要なフレームだけで十分な耐震性を担保することで、内部の耐力壁を最小限に抑えることに成功しました。

柱や梁をむやみに太くする力技ではなく、力学的に合理的な設計により、「通し柱」を均等に格子状に配置するという構造の合理化を突き詰めた結果が、「木の家」のシンプルなかたちにつながっています。

SE構法がもたらす「一室空間」の大きなのメリットは、間仕切りで細かく仕切った家では絶対に得られない「開放感」と、住み手がライフステージの変化に応じて、いつでも自由に間取りを編集できる可変性にあります。新築時は仕切りのない広いワンルームとして使い、子どもが生まれたら家具や可動収納などで緩やかに空間を仕切り、子どもが独立した後は再び元の大きな一室空間に戻す。構造が空間の自由度を担保しているからこそ、ライフステージの変化に柔軟に対応し、世代を超えて永く住み継ぐことができる合理的な住まいを成立させています。

「魔法瓶より暖かい家」を、設計でつくる

一室空間は、間仕切りがなく温熱環境を部分的にコントロールできないため、家全体を冷暖房することが前提になります。MUJI HOUSEでは、この前提がマイナスではなくプラスに作用するように、「魔法瓶のような家」ではなく「魔法瓶より暖かい家」を目指しました。

日本の夏は、高い角度から強烈な日差しが降り注ぎます。「木の家」の深い軒は、夏の厳しい日光の侵入を防ぎ、室内に熱を入れないことで、エアコンの冷房負荷を軽減します。一方で、冬になると太陽の高度は低くなるため、低い角度から差し込む冬の光を室内深くまで取り込むことができ、空間が自然と暖まります。特徴的なファサードデザインは、奇をてらったものではなく、外部環境をうまく生かすために生み出された「パッシブデザイン」なのです。

家の断熱性能は、家の各部位に使用されている断熱材の種類と厚み、窓の断熱性能を総合的に計算して算出する「UA値(外皮平均熱韓流率)」という数値で表され、この数値が小さいほど熱が逃げにくい、つまり断熱性能が高いことを意味します。
しかし実際の室温は、窓の位置・方向や大きさ、周囲の環境、つまり外気温と太陽光の入り方によって、同じ断熱性能でも、大きく変わってきます。

「木の家」では、壁の内と外に二重の断熱層を持つ「ダブル断熱」、窓には「トリプルガラス」とアルミ・樹脂のハイブリッドフレームを採用し、高い断熱性能を有しています。そのうえで、太陽光の入り方を、窓の位置・大きさ、方位に加えて庇の形状に加えて、外部環境、気象庁のデータまで掛け合わせて、家全体が取得する太陽熱をシミュレーションしています。(全棟温熱シミュレーション「+AIR」)
これにより、高い断熱性能+外気温+太陽熱の影響により、エアコンなどの空調無しでの室温を割り出し、そこから快適温度に補正するために必要な空調エネルギー(=冷暖房コスト)を割り出して、実際にどう心地よく暮らせるかを一棟一棟確認しているのです。

簡素であることは、余白をつくること

2025年、従来のコンセプトとデザインはそのままに、「木の家」に新仕様が加わりました。新仕様により加えられたのは、余白をより豊かに感じさせるための素材と陰影です。

壁材に採用されたのは、廃棄される卵の殻の特性を活かし、調湿性を持たせたクロスです。色は、複数の淡い色調から選択が可能で、これまでの白一色から脱し、空間に色みと質感の選択肢が生まれました。床材には、木そのものの素性が際立つよう、幅広で長尺、表面の木材の厚みが採用され、階段は、直線基調のシンプルな形状と、光を吸収するグレー色に刷新されました。存在感が抑えられたことで、空間全体の静けさと陰影がより際立っています。

さらに、扉やサッシの枠をできるだけ小さくして「空間に露出する線」を消し、光と影の変化がより繊細に感じられる空間をつくりあげています。また、カーテンのたたみ代の確保を兼ねて、南側の窓はあえて少し控えめにし、時間帯によって移ろう陰影を室内に招く設計になっています。

「より達者で成熟した絵描きが、白以外や定形外のキャンバスを選ぶように」と表現された今回の新仕様は、機能を増やすのではなく、簡素さの中にある余白の質を上げることで、20年変わらなかった「木の家」が、同じ思想のまま未来に向かう姿勢が示されています。

(左)新仕様(右)従来仕様

「ちょうどいい」という豊かさ。木の家平屋

同じく2025年から発売されている「木の家 平屋」は、「木の家」の思想をそのままに、「小さな家」として展開されました。開発の出発点にあったのは、「家の豊かさ・快適さと、大きさは正比例ではないのではないか」という問いでした。そして、「ミニマルで快適な家の作法ができれば、それをベースに大きくつくることはたやすい」という発想から、快適で使い勝手の良い、ちょうどよくコンパクトな家は開発されました。

この空間を支える構造は、他の商品同様のSE構法ですが、柱の寸法や小屋組などは、「木の家 平屋」専用に設計・構造計算されています。緩やかな登り梁を大胆に見せることで空間に動きをもたらし、天井高の変化が見た目だけでなく採光にも機能しています。また、新たな空間の仕切り方として、ファブリックを用いた緩やかな空間を区切り方や、シンクとコンロを2列に分けた「2列型キッチン」の採用などが提案されており、より自由度の高い「自分流」の仕切り方が住み手に委ねられています。

「木の家 平屋」は、「本当に必要なものだけに囲まれて、肩の力を抜いて暮らせる」という問いに対する「木の家」が20年かけて積み上げてきた、現時点での答えといえるでしょう。


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MUJIHOUSE(木の家)ウェブサイト   https://www.muji.net/ie/kinoie/

 

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