CULTURE

〈長野県立美術館〉4/10開館

設計は宮崎浩+プランツアソシエイツ

CULTURE2021.04.02

長野県唯一の県立の美術館として、エリア一帯の再整備を含めて建て替えが進められていた〈長野県立美術館〉が4月10日にオープンします。

宮崎浩+プランツアソシエイツ設計:長野県立美術館(旧称長野県信濃美術館)

水辺テラスを望む東山魁夷館との連絡ブリッジ

旧称は長野県信濃美術館(今回のオープンにあわせて改称)。日建設計のチーフアーキテクトで副社長も務めた林 昌二氏(1928-2011)の設計により、1966(昭和41)に開館しました。その後、日本画家の東山魁夷(1908-1999)から寄贈された作品の収蔵を目的に、谷口吉生(1937-)が設計した東山魁夷館が1990年(平成2)に開館。HPシェル(双曲放物面シェル)構造が特徴的な林昌二作品の本館棟と共に、2館で運営されてきました。

その後、両館ともに老朽化のため、長野県が整備事業を計画。東山魁夷館は改修(2017年5月より休館、2019年10月リニューアル・オープン)、林昌二の本館棟は全面改築となり、2017年に長野県が実施したプロポーザルにおいて、建築家の宮崎 浩氏が率いるプランツアソシエイツ(Plants Associates Inc.)の案が最優秀案に選出されています(次点はSANAA)

新美術館と既存の東山魁夷館、さらにエリア最大のシンボルである善光寺との位置関係は、2020年11月に発表されたイメージビジュアルから読み取れます。

宮崎浩+プランツアソシエイツ「長野県立美術館(旧称長野県信濃美術館)」計画案

宮崎浩+プランツアソシエイツによるイメージビジュアル(2020年11月時点)

宮崎浩+プランツアソシエイツ「長野県立美術館(旧称長野県信濃美術館)」計画案

宮崎浩+プランツアソシエイツによるイメージビジュアル(2020年11月時点)

宮崎浩+プランツアソシエイツ「長野県立美術館(旧称長野県信濃美術館)」計画案

宮崎浩+プランツアソシエイツによるイメージビジュアル(2020年11月時点)

施設全体のコンセプトは「ランドスケープ・ミュージアム」

美術館を内包する城山公園、隣接する善光寺東側公園や神社の杜などのランドスケープと、新築および既存の建築とが融合した空間・環境を目指します。

新美術館は、これまでになかった常設展示室を設け、延べ1万平米にスペースを拡充。国宝・重要文化財の展示や全国規模の巡回展が開催される見込みです。

レイアウトとしては、展示室や収蔵庫などの美術館本来の機能を有する諸室と、多目的ホールや県民ギャラリーなど多目的に自由に使える諸室と、大きく2つの施設に機能を分離したうえで、美術館施設として一体化するよう、宮崎氏により計画されています。

館内には、善光寺を正面に周囲の山々を見渡せる屋上広場「風テラス」やレストラン、ライブラリーや、チケットなしで自由に入れる無料ゾーンも用意(フロアマップ緑色部分)。誰もが気軽に立ち寄れる開かれた公共施設を目指します。

宮崎浩+プランツアソシエイツ「長野県立美術館(旧称長野県信濃美術館)」計画案

館内フロアマップ(仮・2020年11月時点)

長野県立美術館

本館2F「ミュゼレストラン 善」内観、窓外の正面に見える寺社は善光寺

長野県立美術館

長野県の食材を使った「ミュゼレストラン 善」ランチメニュー(イメージ)

宮崎浩+プランツアソシエイツ設計:長野県立美術館(旧称長野県信濃美術館)

善光寺を正面に望む屋上広場「風テラス」

隣接する善光寺とのアクセスも、地盤の高低差をなだらかにつなげて行き来をしやくししており、旧館において不足していたバリアフリー化も進め、全体でユニバーサルなデザインを採用しました。さらに、地域の気候や風土に適した施設計画で、開館後は環境負荷の低減を図ります。

建築コンセプト「ランドスケープ・ミュージアム」の概要は、工事中の現地での撮影や模型なども使って、設計を担当するプランツアソシエイツ / 宮崎 浩氏自身が説明している動画が、美術館の公式YouTubeチャンネルにて公開されています。


美術館公式YouTubeチャンネル「ランドスケープ・ミュージアム 〜開かれた美術館として〜」(2020/07/20)

今後の展示計画としては、大自然に恵まれた長野県唯一の県立美術館として、「人と自然」を基本テーマに収集・展示を行う予定です。
絵画・彫刻のみならず、写真・ビデオ・アニメーションなどの現代美術も積極的に取り上げ、高度技術文明、情報社会下における人と自然の実り豊かな共存・共栄など、今日的テーマに関する開かれた学びと話し合いの場を提供していきます。

宮崎浩+プランツアソシエイツ設計:長野県立美術館(旧称長野県信濃美術館)

中谷芙二子〈霧の彫刻 #47610 -Dynamic Earth Series Ⅰ-〉2021

施設の設計コンセプトである「ランドスケープ・ミュージアム」を象徴する作品として、国内外で作品を発表しているアーティストの中谷芙二子氏(1933-)による〈霧の彫刻 #47610 -Dynamic Earth Series Ⅰ-〉が常設で展示されます。信州の山々を遠景に、新美術館と東山魁夷館の間の水盤周辺を舞台に、時間や天候によってさまざまな表情をみせる幻想的な現代アートです。

4月24日(土)には、この中谷氏の「霧の彫刻」を舞台として、舞踏家の田中 泯氏(1945-)による「場踊り」が開催されます(4月1日より美術館公式ウェブサイトにて予約受付を開始、定員に達したため、申し込み締め切り)

開館にあわせて開催されるそのほかのイベント、完成記念展、プロジェクトなどについては、美術館の公式ウェブサイトを参照してください。(en)

長野県立美術館

長野県立美術館完成記念 未来につなぐ~新美術館でよみがえる世界の至宝 東京藝術大学スーパークローン文化財展

長野県立美術館

左:新ロゴをあしらった紙バッグ
右:ファッションブランド「Mame Kurogouchi(マメ クロゴウチ)」のファッションデザイナー、地元長野出身の黒河内真衣子氏がデザインした女性スタッフのユニフォーム

VI(ビジュアルアイデンティティ)に展開されているロゴマークは、デザイン事務所・KMD(Kei Miyazaki Design)を率いるデザイナー宮崎 桂氏によるもの。長野の森をイメージした深い緑と、英語表記の美術館名の頭文字「NAM」の文字が、水に映り込んだ上下相称のデザイン。〈緑響く〉などの東山魁夷作品にも多い「水鏡」をイメージしています。

宮崎浩+プランツアソシエイツ設計:長野県立美術館(旧称長野県信濃美術館)

新美術館ロゴマーク

長野県公式ウェブサイト
「長野県立美術館(旧称:信濃美術館)整備事業に関する情報」一覧
https://www.pref.nagano.lg.jp/shisetsu/infra/kensetsu/proposal/shinanobijutsukan.html


美術館公式YouTubeチャンネル「2021年4月10日新築オープン 長野県立美術館」(2021/02/23)

長野県立美術館

(旧称:長野県信濃美術館)
所在地:長野県長野市箱清水1-4-4(善光寺東隣 Google Map
本館棟(新築)
延床面積:約11,000m²
構造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
規模:地下1階+地上3階
工事概要:全面改築
設計:プランツアソシエイツ
開館予定日:2021年4月10日

東山魁夷館(既存)
延床面積:約2,000m²
構造:鉄筋コンクリート造
規模:地上2階
設計(1990年):谷口建築設計研究所
工事概要:老朽化した設備改修、機能改善、本館棟との共用化を考慮した改修
リニューアルオープン:2019年10月5日

公式ウェブサイト
開館記念展詳細https://www.npsam.com/exhibition

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