「建築界のノーベル賞」といわれる「プリツカー賞」の2022年の受賞者が発表された。
(タイトル写真=ポートレート:Lars Borges、〈Gando Primary School〉:Erik-Jan Ouwerkerk)
51人目となる受賞者は、西アフリカの国、ブルキナファソ出身のディエベド・フランシス・ケレ氏(Diébédo Francis Kéré、1965-)。ドイツのベルリン工科大学で学び、2005年に自身の事務所をベルリンに設立し、建築家、教育者、社会活動家として活躍している。
Kéré Architecture
https://www.kerearchitecture.com
黒人建築家としては初めての受賞者となる彼は「建築のプロセスを通じてコミュニティに力を与え、変化させた」ことが評価された。クーデターが頻発したブルキナファソの情勢下で幼少期に適切な教室や学習環境に不足していた彼は、地域社会が直面する問題に具体的な解決策をもたらすことを目指し、建築に関わってきた。
ケレ氏が手掛けた初めての建物は〈ガンド小学校(Gando Primary School)〉(2001年、ブルキナファソ)。酷暑の環境で資源が限られるなか、土着の材料や技術を用いながら地元の人々と建設した施設は、地域コミュニティに貢献し安定させる成果をあげた。
「地域社会とともに、地域社会のために泉をつくり、必要なニーズを満たし、社会的不公平を是正する」というケレ氏の思想は、ここで築かれたもの。以降、ケニア、モザンビーク、ウガンダといったアフリカ諸国の学校や医療施設、公共施設などを手掛け、デンマーク、ドイツ、イタリア、スイス、イギリス、アメリカなどで活躍の場を広げている。
「私は、自分の仕事はプライベートなタスクで、コミュニティに対する義務であると考えていました。しかし、あらゆる人は時間をかけて、すでにあるものを調査することができます。私たちは、人々の生活を向上させるために必要な質をつくるよう、戦わなければならないのです」とディエベド・フランシス・ケレ氏は語る。
プリツカー建築賞の公式声明では「美しさ、謙虚さ、大胆さ、そして発明を示す建築物を通して、また彼の建築と振る舞いの誠実さによって、ケレはこの賞の使命を優雅に守っている」と説明されている。
建築が持つ力や役割を改めて気付かせてくれる、ケレ氏の活動。
現在建設中の〈ベナン国民議会〉や、政治情勢で一時的に中断しているブルキナファソ国会議事堂のプロジェクト〈ブルキナファソ国民議会〉の完成も、楽しみにしたい。
プリツカー賞は、才能、ビジョン、献身といった資質を兼ね備え、人類と建築に対して一貫して重要な貢献を果たしてきた現役の建築家を毎年、ハイアット財団(The Hyatt Foundation)が顕彰しているもの。昨年はラカトン&ヴァッサル、2020年はグラフトン・アーキテクツ、2019年には磯崎 新氏(1931-)が受賞している。(jk)
The Pritzker Prize Web Site
https://www.pritzkerprize.com/