東京・原宿に、OMAの重松象平のデザインによる新たなランドマークが誕生します。
2021年10月に閉館した商業ビル・原宿クエストの建て替え計画に基づくもので、NTT都市開発が新築工事に着手したことを発表しました(2022年10月26日プレスリリース)。
新生「原宿クエスト」は2025年春の竣工を予定しています。
昨年10月に閉館した原宿クエストは、電電公社総裁公邸跡地に建てられたもので、原宿・表参道沿い、原宿駅から徒歩3分という好立地。ファッションテナントのほか、カフェ・レストランなどの飲食店、多目的ホールも有した複合施設として、33年間にわたり営業していました。
本プロジェクトの事業主であるNTT都市開発では、原宿クエストの北西側に位置する原宿駅前に、2020年6月に大型複合商業施設〈WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)〉をオープン。周辺地域の歴史の継承と文化発信の一翼を担うエリア開発に取り組んできたとのこと。今回の建て替えプロジェクトもその一環となります。
新生「原宿クエスト」の施設全体のコンセプトは「Re: HARAJUKU CULTURE」。世界有数のトレンド発信地・原宿にふさわしく、表参道に面した店舗には有名ブランドのフラッグシップストアが誘致される予定です。
また、既存の〈ウィズ原宿〉と同様に、表参道・竹下通りから内側に入ったエリア(いわゆる”奥原宿”)へと抜ける”路地”を敷地内に設け、入り組んだ住宅地である一帯の回遊性を高めます。
原宿ならではの出会いと交流の場の創出を目指す回遊性の向上は、NTT都市開発が奥原宿エリアで保有する物件の利活用にもつながり、同社が取り組む街づくりとしてもエリアの価値向上に貢献できるとしています。
建物のデザインアーキテクトは、建築家の重松象平氏(OMAパートナー、OMAニューヨーク事務所代表)が担当。
世界有数のブランドの旗艦店が並ぶ表参道と、個性豊かな路面店が点在する”奥原宿”の境界に位置する計画地の特性を活かした建築がデザインされました。
重松象平氏プロフィール
建築家。
1973年福岡県久留米市生まれ。九州大学工学部建築学科卒後オランダに渡り、1998年より建築設計集団OMAに所属。2006年にOMAニューヨーク事務所(OMA New York)代表に就任、2008年よりOMAのパートナーとなる。日本国内の最新プロジェクトは、2021年9月に竣工した〈天神ビジネスセンター〉で建築デザインを担当。
九州大学大学院人間環境学研究院教授、BeCAT(Built Environment Center with Art & Technology)センター長。OMA New York Website
https://www.oma.com/news/oma-new-york-office現在、OMAニューヨークでは、米国・ボストンのシーポート・イノベーション地区におけるオフィスビル、ニューヨーク生命医科学キャンパス内の高層研究施設、シカゴ・イリノイ州立大学の新コンサートホール、マイアミのリーフライン水中彫刻公園など多数のプロジェクトが進行中。中でも、米国ニューヨーク市、SANAA設計で知られる〈ニュー・ミュージアム〉に隣接して建設される新館のプロジェクトが話題となっている。
日本国内では、都内にて超高層複合建築・虎ノ門ヒルズ ステーションタワーが建設中。米国ではニューヨーク州バッファローのオルブライト・ノックス美術館新館、ニューヨーク五番街でティファニー本店改装工事が進行中。
重松氏は、デザインコンセプトとして「デュアリティ(二面性)」を掲げ、表参道側は垂直性と透明性を意識したアイコニックな外観とし、パサージュを抜けた先には、”奥原宿”のスケール感にあわせた小さな店舗や広場、アートスケープを配置する計画となっています。
新生「原宿クエスト」の建物規模は、地上6階・地下1階。低層棟と高層棟の2つからなり、前述のとおり、2棟の間には表参道と”奥原宿”を結ぶパサージュ(敷地内通路)が通されます。
高層棟の上層には、路面の表参道に対して最大限で開放されるテラスとルーフトップを用意。明治神宮、代々木公園、表参道のケヤキ並木を望める、唯一無二の空間としてデザインされています。
重松象平氏による設計コンセプト
「新生・原宿クエストは、表参道と奧原宿をつなげ、一体化する初めての建築となリます。表参道は、東京には珍しい軸線であり、けやき並木や歩道の広さなどによって都市的アイデンティティが確立された通りです。その大通りに面する建築は、ブランドの旗艦店が多いということもあって自(おの)ずと大きくなり、個々のアイデンティティが強調されるようになりました。
その一方で、参道の周辺には、軸線とは対照的な有機的でヒューマンスケールの街並みをもった「ヴィレッジ」が存在し、1970年代以降、そういった小さなストリートで日本の新しいファッションや自由な若者文化が生まれ、培われてきました。
つまりは、大通りとその周辺のヴィレッジ、そのデュアリティ(二面性)を等価と捉えて、一体的に、かつ面的に考えていくことがこのエリアの発展には欠かせないのです。本計画地は、明治神宮、代々木体育館、代々木公園、原宿駅に近く、表参道の中でも公共性の高いエリアにあります。同時に、敷地の北側は、竹下通りなどがある”奧原宿”にも面しています。まさに二面性のストーリーを持った建築を計画するには最適な場所です。
表参道にしっかりとした商業的な顔を持ち、同時に奧原宿側へと人々を導き、そこで新たなアクティビティを誘発する。まさに表と奥を繋げて、デュアリティを体現する建築をめざしました。」
新生・原宿クエストのランドスケープデザインは、ランドスケープ・プラスの平賀達也氏が担当。同事務所はこれまでに、豊島区庁舎が入っている〈としまエコミューぜタウン〉や立川の〈グリーンスプリングス〉などを手がけています。
今回の計画では、表参道と”奥原宿”をつなぐエントランスからパサージュにかけて、明治神宮から連続した地層を彷彿させるような”壁面”が設えられます。さらに、施設の随所に明治神宮の杜やケヤキ並木と呼応するよう緑豊かな植栽を計画し、明治神宮の植生を反映することで、原宿の地に馴染み、親しまれる、サステナブルな施設となることを目指すとのこと。
新生「原宿クエスト」では、原宿独特のカルチャーやライフスタイルを体現する、多様な次世代アーティストたちと共にさまざまな取り組みも展開する予定です。
その一環として、反復された文字によって画面全体を埋め尽くす独自のスタイルで創作活動を続けている、アーティストのbaanai氏に制作を依頼し、原宿を象徴するようなアート作品が描きおろされました。
この作品は今後、施設のプロモーションとしても展開されます。
baanai氏 プロフィール
1977年神奈川県藤沢市鵠沼生まれ。2015年にCOMME des GARÇONSの川久保玲氏にポートフォリオを送り、初めて作品が採用されたところからアーティストとしてのキャリアをスタート。その後も多くのブランドに作品が採用され、次々と個展を成功させる。
主な個展に「DOUBLE BED GALLERY」六本木蔦屋書店2F BOOK GALLERY(2020)、「Capillaries」伊勢丹新宿店メンズ館2階メンズクリエーターズ内 ART UP(2020)などがある。近年は、代表作である「ARIGATOGOZAIMASU」を中心に作品制作を行っている。baanai 公式Instagram @baanai_art
https://www.instagram.com/baanai_art/baanai氏コメント:
2017年から毎日休まず、キャンバスに“ARIGATOUGOZAIMASU(ありがとうございます)”という言葉を繰り返し描く芸術実験を行っています。
今回の作品は、最初に“ARIGATOUGOZAIMASU HARAJUKU QUEST”という文字でスペースを埋め尽くし、その後、多様性の象徴であるレインボーカラーで塗り重ねたところに、“QUEST”の鏡文字を描きました。こうした重層的な表現は、近年取り組んでいる手法のひとつで、目には見えない波動や想いこそが大事なのではないかという着想から。あえて見えなくすることで、“文字(言葉)”を“想い”に変換することに挑戦しています。
最後は、その上に黒を塗って背景をつくり、未来への希望をのせて原宿にふさわしい15の言葉を選びました。歴史と想いを塗り重ねて次世代へつなぐ––––原宿クエストには、これからもそんな本質的な価値を伝える存在であり続けてほしいと思います。
所在地:東京都渋谷区神宮前1-13-14,13-21
用途:物販店舗、飲食店舗、サービス店舗、事務所、自動車車庫
構造:鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造
規模:地上6階、地下2階、塔屋1階
敷地面積:約1,960m²
延床面積:約7,800m²
建築主:NTT都市開発
設計:NTTファシリティーズ一級建築士事務所
デザインアーキテクト:OMA / Shohei Shigematsu(重松象平)
ランドスケープアーキテクト:ランドスケープ・プラス / 平賀達也
施工:熊谷組
着工:2022年10月
竣工予定:2025年春
NTT都市開発プレスリリース(2022年10月26日)
https://www.nttud.co.jp/news/detail/id/n26475.html