〈アントルポ・マクドナルド(Entrepot Macdonald)〉は、フランス・パリに建つ全長616mの大型物流拠点を地域のための教育、交流拠点としてコンバージョンした複合施設であり、OMAがマスタープランを担当し、分割された倉庫をそれぞれ5人の建築家が共働して設計したプロジェクトです。
建築家の隈 研吾氏が率いる隈研吾建築都市設計事務所はその中で中学校、高等学校、地域スポーツ施設の入る西端部分を担当しました。OMAが提示したソリッドでハードなボリュームを前提としていたデザインベースに対し、折り紙のような木質屋根というソフトな表面で答えた建築です。
(以下、隈研吾建築都市設計事務所から提供されたプレスキットのテキストの抄訳)
〈アントルポ・マクドナルド〉は、パリの北部に1970年代に竣工した、マクドナルド通りに面した全長616mの大型物流拠点を、地域のための教育、交流拠点としてコンバージョンする複合施設である。
このプロジェクトでは、2007年にマスタープランナーに選ばれたOMAと、分割されたそれぞれの倉庫を対象に行われたコンペティションに選ばれた建築家たちによるコラボレーションが行われた。
OMAのマスタープランは2階建ての既存建築を残しながら、5人の建築家が共働して、そこに新しいプログラムを付け加えるというユニークなものであり、私たちは中学校、高等学校、地域スポーツ施設の入る西端部分を担当した。
このプロジェクトはその仕組み自体が画期的なものとなっており、歴史との対話、隣接棟を担当する建築家 オディール・デック(Odile Decq)との調整など、非常に刺激的なプロセスが組み込まれていた。
OMAから指定されたルールは、1階と3階はクリスタル(透明)、2階は既存の素材、4階はミネラル(鉱物質)をデザイン要素として使うという、一見錬金術的ともとれる不思議なものであり、従来のアーバンデザインの形態規制と比較して抽象度が高かった。
私たちはこの「謎かけ」に対し、ルール違反ともいえる木質の屋根で答えた。ソリッドでハードなボリュームを前提としていたOMAに対し、折り紙のようにソフトな表面で対応し、構造用合板を下部に露出させることで、他の部分とは異なる質感を生み出している。
このやわらかな屋根半外部空間をおおらかに包み込み、都市に対しても「箱的」ではない関係性を築いている。また、OMA的(西洋的)なスタイルである、ソリッドと透明といった2つの要素が対立するデザインに対する批評を込めて、屋根を折りたたむ(FOLD)というアクションを用いた。
「アントルポ・マクドナルド」隈研吾建築都市設計事務所 公式サイト
https://kkaa.co.jp/project/entrepot-macdonald-education-and-sports-complex/