妹島和世が設計した〈HANA〉が犬島 くらしの植物園の常設パビリオンとしてオープン、PRADAが福武財団に寄贈 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
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妹島和世が設計した〈HANA〉が犬島 くらしの植物園の常設パビリオンとしてオープン、PRADAが福武財団に寄贈

妹島和世設計の新パビリオン〈HANA〉が犬島 くらしの植物園にオープン

PRADAによる福武財団への寄贈で実現、「犬島プロジェクト」最新作

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瀬戸内海に浮かぶ犬島(いぬじま)に、建築家の妹島和世氏が設計したパビリオン〈HANA〉が6月にオープンしました。

建設された場所は、公益財団法人福武財団が管理する「犬島 くらしの植物園」[*後述] の敷地内。イタリアを代表するファッションブランドの1つPRADAから「瀬戸内国際芸術祭」を牽引する福武財団への寄贈で実現しました。

妹島氏とPRADAはこれまでに築き上げてきた信頼関係のもと、2022年7月より氏が館長を務める東京都庭園美術館の西洋庭園を主な舞台に、ユニークベニュー(Unique Venue)の一環として「Prada Mode Tokyo」が開催されています。

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今年6月にはその第2弾となる「Prada Mode Osaka」がグラングリーン大阪のイベント施設・PLAT UMEKITAにて開催され(会期:6月8日~15日)、この一連のプロジェクトのなかで、福武財団が管理する「犬島 くらしの植物園」にこの新たなパビリオンが寄贈されました。長年にわたり現代文化を支援し、文化的に意義のあるプロジェクトに貢献する、ブランドの姿勢を改めて明確にするものとして、今回の寄贈が実現したとのこと。
「Prada Mode Osaka」詳細
https://www.prada.com/jp/ja/pradasphere/events/2025/prada-mode-osaka.html

妹島和世建築設計事務所〈HANA〉

撮影:川越健太

妹島和世建築設計事務所による新パビリオン〈HANA〉は、植物園のランドスケープと呼応・調和する軽やかな立ち姿が特徴です。開花した花びらのような形状のもと、「みんなで集まれる」場所をつくり出しました。
厚さ3mmのステンレスの板材を曲げ加工し、船で犬島に運び込んだ後、現場で溶接、研磨を施して完成。あえてやや粗さを残した鏡面仕上げが、周囲に広がる木々や花、夕日の光といった植物園の風景を映し出ます。

妹島和世建築設計事務所〈HANA〉

オープニングイベントの際は妹島和世+西沢立衛 / SANAAのデザインで知られる〈Rabbit Chair / FRP〉が彩を添えた(PRADA寄贈) ⓒPrada

妹島和世建築設計事務所〈HANA〉

トークイベント風景  ⓒPrada
「犬島プロジェクト」では、建築家らのトークイベントやミュージックパフォーマンスのほか、妹島氏設計によるピザ窯でのピザづくりワークショップなど、さまざまなプログラムが実施された

妹島和世建築設計事務所〈HANA〉

「犬島 くらしの植物園」 撮影:川越健太

敷地内には、今回のパビリオンの建設過程で掘り出された土を用いて制作された「仮に浮かべる風景」と題された2つのカウンターも設置されています。「循環と再統合」を象徴する存在として、静かに風景に溶け込み、やがて自然へと還ることを意図しているとのこと。

妹島和世建築設計事務所〈HANA〉

完成した〈HANA〉を見上げる妹島和世氏 ⓒPrada

 

妹島和世氏プロフィール
1956年茨城県生まれ。建築家。1981年日本女子大学卒業。伊東豊雄建築設計事務所を経て、1987年妹島和世建築設計事務所設立。1995年に西沢立衛と共同でSANAA(サナア)を設立。2010年プリツカー賞受賞*。主な作品に、金沢21世紀美術館 *(2004)、梅林の家(2003)、ROLEX ラーニング センター *(2009)、犬島「家プロジェクト」(2010)、ルーヴル・ランス *(2012)、グレイスファームズ *(2015)、ボッコーニ大学 新キャンパス *(2019)、ラ・サマリテーヌ *(2021)、日本女子大学目白キャンパスグランドデザイン(2021)、シドニー・モダン・プロジェクト *(2022)などがある。2010年には第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展のアーティスティックディレクターを務める。
主な受賞に、日本建築学会賞 *(1998年、2006年)、ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞 *(2004)、プリツカー賞 *(2010)、フランス芸術文化勲章(2010)、紫綬褒章(2016)、高松宮殿下記念世界文化賞 *(建築部門、2022)などがある。(*印はSANAAとして)
2022年7月より東京都庭園美術館館長。ミラノ工科大学教授、横浜国立大学名誉教授、日本女子大学客員教授、大阪芸術大学客員教授。
プラダの2019年春夏コレクションの「Prada Invites」プロジェクトではPRADAのバッグデザイナーを務め、2023年にPRADA財団で開催された展示会「Paraventi:17世紀から21世紀の屏風」でもデザイナーを務める。2023年に東京で開催された「Prada Mode」を監修。


妹島和世氏コメント:「犬島 くらしの植物園」プロジェクトは、島の方々や来訪者の方々と共に土地を開墾しながら、この場所が自然と共にくらす歓びを体験できる場となることを目指して2016年から始まりました。はじめてから9年の間に、ワークショップやイベント、庭の手入れなどを通じ、いろいろな人々がこのプロジェクトに関わってくださるようになり、みんなでこの場所をつくりあげてきました。
このたび、そんな場所に、みんなが集まる場所の象徴として、パビリオン「HANA」が完成したことを、大変嬉しく思います

本活動に共感しご支援くださったPRADAの皆様、これまでともに犬島で多様な取り組みを進めてきて下さった福武財団の皆様、私たちの活動を温かく受け入れ、支えてくださっている犬島の島民の皆様、そして犬島のプロジェクトに関わってくださっているすべての皆様に、心より御礼申し上げます。

 


*.犬島 くらしの植物園
長く使われていなかったガラスハウスを中心とした 約4,500m²の土地を再生し、犬島の風土や文化に根ざした植物園として展開中。妹島氏と、2016年に犬島に移住したガーデンデザインユニット「明るい部屋」との協働で企画・制作・運営され、オープンは「瀬戸内国際芸術祭2016」秋季会期中の2016年10月22日。完成された場としての見学型の植物園ではなく、ワークショップなどを開催し、島の人々や来訪者とともに土地を開墾していきながら、自然のサイクルに身を置き、食べ物からエネルギーに至るまで、自給自足しながら自然とともにくらす歓びを体験できる場づくりを行なっている(企画:妹島和世+明るい部屋 / 建築:妹島和世建築設計事務所 / 植栽:明るい部屋 / 主催人・運営:公益財団法人 福武財団)

*編集部註.本プロジェクトは、同島および周辺エリアの文化的な再生を目指す福武財団が、2008年に妹島氏を招き、アーティスティックディレクターの長谷川祐子氏との協働で犬島集落にて取り組んでいるプロジェクトとは別の、Pradaとしての「犬島プロジェクト」として開催された

妹島和世建築設計事務所〈HANA〉

「犬島 くらしの植物園」 撮影:川越健太

妹島和世建築設計事務所〈HANA〉

「犬島 くらしの植物園」 撮影:川越健太

妹島和世建築設計事務所〈HANA〉

撮影:川越健太

新パビリオン〈HANA〉

所在地:岡山県岡山市東区犬島50 犬島 くらしの植物園内(Google Map
規模:投影面積20.36m²
高さ:2965.37mm
設計:妹島和世建築設計事務所
構造:Arup
施工:ARTISAN
管理:公益財団法人福武財団

ベネッセアートサイト直島 ウェブサイト「犬島 くらしの植物園」案内ページ
https://benesse-artsite.jp/art/lifegarden.html

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