COMPETITION & EVENT

「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」

建築家、冒険家、アルピニストの活動の軌跡を辿る大規模個展、東京都現代美術館にて開催

東京都現代美術館にて、建築家の吉阪隆正(1917-1980)の大規模個展が3月19日より開催されています。
ル・コルビュジエにも師事した建築家であるとともに、冒険家、アルピニストとしての顔ももっていた吉阪。その多彩で多岐にわたる活動の全体像にふれる展覧会が公立の美術館で開催されるのは、今回が初となります。

吉阪隆正(よしざか たかまさ)

吉阪隆正(1917-1980)近影(提供:アルキテクト)

1917年(大正6)生まれの吉阪隆正は東京の生まれ。父親の赴任先であるスイス・ジュネーブの学校に通い、帰国して進学した早稲田大学にて、考現学の創始者として知られる今 和次郎(1888-1973)に師事した経歴の持ち主です。
さらに、卒業後に渡仏し、近代建築の巨匠、ル・コルビュジエ(1887-1965)のアトリエに勤務。戦後は、人工土地[*]の上に建てた〈吉阪自邸〉のほか、文部大臣芸術選奨(美術)を受賞した〈ヴェネチア・ビエンナーレ日本館〉、日本建築学会賞を受賞した〈アテネ・フランセ〉、東京都選定歴史的建造物に指定された〈大学セミナー・ハウス 本館〉などの設計を手掛け、コンクリートによる彫塑的な造形を有する独特の建築で知られています。
*.戦後の住宅難解消のため、吉阪は「住むためにすべてが準備されている大地を人工の力でつくる」ことを提唱し、それを「人工土地」と呼称した

「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」

〈吉阪自邸〉1955年(撮影:北田英治、1982年)

“建築というものは、世界で相互理解するための一つの手がかりではないだろうか”―吉阪隆正の講演より

一方で、吉阪は建築だけにはおさまらない領域横断的な活動にも取り組みました。
地球を駆け巡ったその行動力から、建築界随一のコスモポリタンと評された吉阪。本展のサブタイトル「ひげから地球へ、パノラみる」とは、吉阪による造語を組み合わせたものです。地域や時代を超えて見渡すことなどを意味する“パノラみる”と、自身の表象であり等身大のスケールとしての“ひげ”、そして個から地球規模への活動の広がり、という意味が込められています。

「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」

〈サイコロ世界地図〉1942年 ©︎吉阪隆正

「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」

〈ヴェネチア・ビエンナーレ日本館〉1956年(場影:北田英治、1997年)

「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」

〈江津市庁舎〉1962年(撮影:北田英治、1994年)

本展の見どころ

1.多彩な顔を持つ吉阪隆正の人物像に迫る
建築家であり、早稲田大学で長年教鞭を執った教育者であり、さらには、登山家、冒険家、文明批評家でもあった吉阪。没後40年以上が経過し、知られざる吉阪隆正の生涯を総覧します。
建築を中心とした領域横断的な活動を「生活論(人間と住居)」「造形論(環境と造形)」「集住論(集住とすがた)」「游行論(行動と思索)」の4群による連環として捉え、時代やテーマにより、7つの章で構成し、つぶさに紹介します。

2.「吉阪隆正+U研究室」による住宅建築、公共建築、山岳建築、「早稲田大学吉阪研究室」による地域計画のプロジェクトを紹介
吉阪の建築は、戦後の焼け跡に自らの住まいとして建てたバラック住宅から始まりました。以降、個人住宅や学校・市役所といった公共建築、極地での生活を考えた山岳建築、地域計画にまで発展。そのスケールを等身大から地球規模へ拡大していきます。
これらの建築の仕事は、吉阪が1人で行っていたわけではありません。設計アトリエであるU研究室(1963年に吉阪研究室から改称)を創設し、「不連続統一体(DISCONTINUOUS UNITY)」という吉阪の考え方に賛同して集まった所員や、教鞭を執っていた大学院の学生らともディスカッションをしながら、集団で建築をつくり上げていきました。
本展では、約30の建築とプロジェクトを紹介。建築によって吉阪が目指したものとは何か? 社会へ向けた彼のメッセージを紐解きます。なお、地域計画のプロジェクトの展示は本展が初となります。

“発見のための視点と視野 実現のための手段と工夫 どれがいいのか それをみんなでみつけよう” ― 吉阪隆正の言葉より

3.スケッチ、原稿、ノート、書類、写真…吉阪の創造の源泉となる資料を多数展示
2015年に文化庁国立近現代建築資料館に「吉阪隆正+U研究室建築設計資料」が、2017年には早稲田大学に吉阪の日記や原稿、ノート、書類、写真といった個人資料が収蔵されたことにより、アーカイブ化や修復作業が進められています。
吉阪隆正の仕事を現代において再評価することを目的とする本展では、彼の思想や思考、創造の秘密を解読するさまざまな形態の資料を、まとまったかたちで展示します。

「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」

〈乾燥なめくじ〉1966年 ©︎吉阪隆正

展覧会構成

第1章:出発点
吉阪の生い立ちや原体験、今和次郎やル・コルビュジエとの師弟関係を紹介し、地球を巡る活動の軌跡を辿る

第2章:ある住居
“大地は万人のものだ” 設計活動の拠点でもある人工土地の《吉阪自邸》を紹介し、建築の思想に迫る

第3章:建築の発想
吉阪隆正とU研究室による建築作品の構造模型、現場写真、図面などから形を発見する

第4章:山岳・雪氷・建築
積雪環境や雪氷に関する研究、山小屋やホテルなどの山岳建築の作品を展示する

第5章:原始境から文明境へ
アラスカ・アフリカへの探検・紀行と世界の住居、世界中を旅した記録などを紹介する

第6章:あそびのすすめ
吉阪によるダイアグラムとスケッチによって、作画による表現と記号的アイデアの源泉を探る

第7章:有形学へ
提唱した『発見的方法』『有形学』を解説、吉阪研究室による都市計画および地域計画を総覧する

吉阪隆正(よしざか たかまさ)経歴

1917年東京生まれ。内務官僚だった父の赴任先・スイスのジュネーヴ・エコール・アンテルナショナルを1933年に卒業。
帰国後、1941年早稲田大学建築学科卒業。同大学にて教鞭を執っていた建築学者で民俗学研究者の今 和次郎に師事。農村や民家の調査に参加、「生活学」や「住居学」の研究を行う。
1950年に戦後第1回フランス政府給付留学生として渡仏。ル・コルビュジエのアトリエに2年間勤務し、設計実務に携わる。ドミノシステムの実践やモデュロールの理論など、モダニズム建築の流儀を現場で学ぶ。帰国後、1954年早稲田大学助教授、1959年に教授に就任。1954年に設計アトリエである吉阪研究室(後にU研究室に改称)を設立し、本格的な建築設計を開始する。
代表的な建築作品に、〈吉阪自邸〉(1955)、〈浦邸〉(1956)、〈ヴェネチア・ビエンナーレ日本館〉(1956)、〈江津市庁舎〉(1962)、〈アテネ・フランセ〉(1962)、〈大学セミナー・ハウス〉(1965-)などがある。

吉阪隆正 自画像

自画像〈一筆描きのタカ〉1979年 ©︎吉阪隆正

世界各国の大学や会議に招聘されるなど国際的に活躍する一方、1970年には『21世紀の日本列島像』で内閣府総合賞を受賞するなど、新しい社会や環境、未来へ向けた集住とすがたを提言した。
そのほかの著作に『住居学汎論』『ある住居』『生活とかたち―有形学』など多数。師であるコルビュジエの著作も数多く翻訳し、日本での普及に努めた。
また、山岳建築や地域計画も手がけ、「人間」と「環境」の往還を強く意識し、環境や地形、気候に抗わない設計を行なうなど、ポストモダニズムを超越した建築思想に帰着した。
1960年フランス学術文化勲章受章。日本建築学会会長、日本生活学会会長、日本山岳会理事、日本雪氷学会理事などを歴任。
冒険家・アルピニストとしては、1957年早稲田大学赤道アフリカ横断遠征隊を指揮し、キリマンジャロ登頂では女性隊員の登坂の歴史を開く。1960年早大アラスカ・マッキンレー遠征隊では隊長を務め、ヒマラヤK2遠征隊も組織している。1980年没。

「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」開催概要

会期:2022年3月19日(土)〜6月19日(日)
休館日:月曜(3月21日は開館)、3月22日(火)
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料:一般 1,400円、大学生・専門学校生・65歳以上 1,000円、中高生500円、小学生以下無料
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1階
所在地:東京都江東区三好4丁目1-1(Google Map

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
企画協力:アルキテクト、北田写真事務所
特別協力:文化庁 国立近現代建築資料館
協力:公益財団法人大学セミナーハウス、公益社団法人日本雪氷学会、ル・コルビュジエ財団、早稲田大学建築学教室本庄アーカイブズ
後援:稲門建築会、一般社団法人DOCOMOMO Japan、一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会


関連イベント

関連トーク、ギャラリーツアーを開催予定。詳細が決まり次第、は東京都現代美術館公式ウェブサイト・SNSで発表されます。

同時開催
「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」(企画展)
「MOTコレクション 光みつる庭/途切れないささやき」
「Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022 受賞記念展」

東京都現代美術館公式ウェブサイト
https://www.mot-art-museum.jp/

※スケジュールは諸事情により変更となる場合あり


【読者プレゼント】

『TECTURE MAG』への感想など、アンケートにお答えいただいた方の中から、本展のペアチケットを5組10名さまにプレゼントします。
※受付は終了しています。抽選後に発送予定です。ご応募ありがとうございました!

読者プレゼント バナー

受付期間:2022年3月23日(水)〜31日(木)
※応募者多数の場合は抽選
※結果発表:チケットの発送をもって了
※発送に関する個々の問合せには対応しませんのでご了承ください
※発送完了後、都道府県を除く住所情報は削除し、データとして保有しません

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン TECTURE NEWS LETTER

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン

東京都現代美術館 レポート記事

FEATURE2020.07.31

Exhibition: Cherish, your imagination | Interview with AR 3 Brothers

AR三兄弟を独占取材! 未来を拓くメディアテクノロジー
FEATURE2021.02.18
【展覧会レポート】「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」

ヴェネチア・ビエンナーレ トピックス

COMPETITION & EVENT2020.08.17
ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示チームがクラウドファンディングを開始
FEATURE2021.05.13
ヴェネチアと高田馬場をリアルタイムでつなぎ、展覧会の新たな可能性を示す「Dear Takamizawa House」@ケーススタディスタジオ〈BaBaBa〉にて開催【内覧会Report】
  • TOP
  • COMPETITION & EVENT
  • EXHIBITION
  • 建築家、冒険家、アルピニストの活動の軌跡を辿る「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」東京都現代美術館にて開催
【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン
お問い合わせ