2023年6月25日初掲、6月30日 会場写真といわき市四倉海岸で実施された白天花火〈満天の桜が咲く日〉の作品画像を追加、8月13日 白天花火〈満天の桜が咲く日〉作品動画とオープニングトーク公開動画をシェア
東京・六本木の国立新美術館にて、同館とサンローランの共催により、国際的に活躍する中国の現代美術家、蔡國強(ツァイ・グオチャン / さい・こっきょう / 1957年〜)の大規模個展「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」が6月29日より開催されます(企画:逢坂恵理子 / 国立新美術館長)。
蔡國強は中国・福建省泉州市の出身で1957年生まれ。上海戯劇学院で舞台芸術を学んだ後、1986年12月から1995年9月まで日本で活動していました。筑波大学に在籍した後、東京、取手、いわきなどで生活、作品を制作するなかで、火薬の爆発による独自の絵画を開拓し、一躍注目されます。
中国で活動していた頃より、人間と宇宙、そして地球の危機を主題にした表現を探求していたという蔡國強。来日後も、風水や気功、老荘思想、『易経』といった中国古来の宇宙観をベースにしつつ、伝統と文化が息づくと同時に高度なテクノロジーに満ちた日本の現代社会や、そこで知った国内外の現代美術、宇宙物理学の最新の成果などにも大いに魅了されたといいます。幼少期から続く、宇宙そして見えない世界への憧憬に、日本での経験が加わり、やがて、〈外星人のためのプロジェクト〉と名付けられた一連のシリーズが誕生しました。1989年に多摩川での最初の屋外爆発プロジェクト〈人類の家: 外星人のためのプロジェクトNo.1〉を実現させ、以降も数十年にわたり、世界各地で一連の爆発プロジェクトを展開してきました。
1995年にニューヨークに拠点を移して以降、蔡國強は創作活動の幅を広げ、2006年のメトロポリタン美術館や2008年のグッゲンハイム美術館での回顧展など、さまざまな国と地域で重要な展覧会を開催。今日では、国際的に最も影響力の大きい芸術家の1人として知られています。
主な受賞に、第48回ヴェネチア・ビエンナーレ「国際金獅子賞(1999)、第7回「ヒロシマ賞」(2007)、第20回「福岡アジア文化賞受賞」(2009)、第24回「高松宮殿下記念世界文化賞」(絵画部門、2012)、「米国国務院芸術勲章」(2012)などがあります。
Cai Guo-Qiang Website
https://caiguoqiang.com/
2005年にはヴェネチア・ビエンナーレ初の中国パヴィリオンのキュレーターを務め、展覧会の企画にも才能を発揮した。2008年の北京オリンピックでは、開閉会式で世界にも発信された視覚特効芸術と花火監督を務めました。
近年は白天花火の新たな可能性を探求。その1つ、爆発プロジェクト〈スカイラダー〉は、2015年に作家の故郷である泉州で実現し、同名のドキュメンタリー映画がNetflixで全世界に配信中です。
蔡國強作品の大きな特徴は、火薬を創造的に用いて生み出されること。神話的で人類学的な壮大な世界観を表明した火薬ドローイングやインスタレーション、屋外爆発プロジェクトなどは、国際的にも高く評価されてきました[*1]。
1991年に東京・四谷で開催された「P3 art and environment[*2]」における蔡國強の個展「原初火球 The Project for Projects」は、作家が日本で活動した時代の最初の、さらにはアーティストとしての生涯のマイルストーンとなる重要な展覧会です。
展示の中心となった同名のインスタレーョンでは、爆破プロジェクトの設計図ともいえる、7隻の屏風仕立ての火薬ドローイングを放射状に配置。作品名に冠した「原初火球」とは、古代中国の思想家・老子が説いた「物ありて混成し、天地に先んじて生ず」に基くもので、世界の起源、宇宙の始まりを意味しています。
*1.火薬を使った作品が大型化する背景には、日本で知り合った花火師や友人たちの協力がある
*2.P3 art and environment 詳細:https://p3.org/about/
本展「宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」は、蔡國強が30年前に発表した展覧会「原初火球」を、彼の芸術における「ビッグバン」の原点と捉え、この爆発を引き起こしたものは何か、その後の今日に至るまでに何が起こったかを探求するものです。
アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)がリードする、サンローランが主催者として名を連ね、同ブランドが使命とする、ビジュアルアートや映画、音楽など、さまざまなクリエイティビティへのサポートを示す最新の機会となります。
なお、本展に先立ち、蔡国強は、30年前に福島県いわき市で地元の友人たちと協働して実現させた爆発プロジェクト〈地平線: 外星人のためのプロジェクト No.14〉と同じ海岸で、サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロからのコミッションワークとして、白天花火〈満天の桜が咲く日〉を実施しています(上の画像3点 / プロジェクト実行委員会主催)。
:Saint Laurent YouTube: WHEN THE SKY BLOOMS WITH SAKURA BY CAI GUO-QIANG(2023/06/29)
本展では、宇宙と見えない世界との対話を主軸に、作家として歩み始めた中国での時代、芸術家としての重要な形成期である日本滞在の時代、そしてアメリカや世界を舞台に活躍する現在までの創作活動と思考を、展示を通して遡(さかのぼ)ります。
日本国内の国公立美術館の所蔵作品と、日本初公開となるガラスや鏡に焼き付けた新作を含む作家所有の約50件の作品が展示されるほか、多数の知られざる貴重なアーカイブ資料や記録映像、アーティスト自身による一人称の説明もこれらの作品とあわせて掲示されます。
柱も壁もない、2,000m²を有する国立新美術館の会場(企画展示室1E)の広場のような空間にて、全体がひとつのインスタレーションのように展開。現在も膨張を続けている宇宙のように拡大してきた、蔡國強のこれまでの活動と実践、彼の深遠かつ軽やかな思考の旅路を、展示とともに来場者が追体験していくという会場構成です。
作家の歴史的なインスタレーション〈原初火球〉が再現され、かつ、ガラスと鏡を使った新作の火薬絵画3作品が披露されるほか、本展のもうひとつの核とも言える作品、LEDを使った大規模なキネティック・ライト・インスタレーション〈未知との遭遇〉も登場。本展ではこの作品の内部を自由に歩くこともできます。
会期初日の6月29日には、作家のほか、四谷での個展「原初火球:The Project for Projects」の関係者らが登壇するトークイベントも開催されます(終了しています)。
会期:2023年6月29日(木)~8月21日(月)
休館日:火曜
開館時間:10:00-18:00(※毎週金・土曜は20:00まで。入場は各日とも閉館30分前まで)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
所在地:東京都港区六本木7-22-2(Google Map)
観覧料:一般 1,500円、大学生 1,000円
※高校生と18歳未満は無料(学生証または年齢のわかるものの提示要)
※障害者手帳の提示で入場無料(付添1名を含む)
問合せTEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
主催:国立新美術館、サンローラン
「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」開幕記念トークセッション『〈原初火球〉再考』
蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる
登壇者:蔡國強、レイチェル・リヴェンク(Rachel Rivenc / ゲッティ学術研究所[GRI]保存修復室長)、芹沢高志(P3 art and environment統括ディレクター)、神谷幸江(美術評論家、インデペンデント・キュレーター)、逢坂恵理子(国立新美術館長)
※言語:日本語のみ(英語から日本語への逐次通訳あり)
開催日時:2023年6月29日(木)13:30-15:30(13:00開場)※終了
会場:国立新美術館 3階 講堂
参加方法:会場にて先着順に受付(予約不要)
定員:240名
料金:無料
主催:国立新美術館
協力:国立アートリサーチセンター
※後日にアーカイブ映像を公開予定
:国立新美術館 NACT YouTube:トークセッション『〈原初火球〉再考』|「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」開幕記念(2023/07/04)
国立新美術館ウェブサイト
https://www.nact.jp