東京・虎ノ門2丁目に10月に開業した虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの情報発信拠点「TOKYO NODE」にて、開館記念企画の第2弾「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」が12月5日より開催されています。
開催前から注目度は高く、またほかの会場への巡回予定もないため、11月に前売りチケットを発売したところ、1日で予定枚数を売り切った(主催者発表)という話題の展覧会です。
『TECTURE MAG』では、蜷川氏ら本展の関係者が出席し、12月4日に会場にて開催されたメディア内覧会を取材。本展の会場の美しさを伝えるため、会場写真は公式画像を用いて本展をレポートします(特記あるものを除き、画像は「TOKYO NODE」提供)。
EiM メンバー
アーティスト:蜷川実花
エグゼクティブ・ディレクター:宮田裕章
クリエイティブ・ディレクター:桑名 功
セットデザイナー:ENZO
照明監督:上野甲子朗
音楽監督:剣持学人
映像ディレクター:名児耶 洋、ZUMI
テクニカルアートディレクター:上田晋也
ディレクター:深田雅之、打越 誠
プロジェクトマネージャー:金谷英剛
プロフィール
蜷川実花
写真家、映画監督
写真を中心として、映画、映像、空間インスタレーションも多く手掛ける。クリエイティブチーム「EiM : Eternity in a Moment」の一員としても活動中。
主な作品に、『ヘルタースケルター』(2012)、『Diner ダイナー』(2019)などの劇場公開映画5作のほか、2020年にはNetflixオリジナルドラマ『FOLLOWERS』を監督した。最新写真集『花、瞬く光』(2022年 河出書房新社)。木村伊兵衛写真賞ほか受賞多数。宮田裕章
データサイエンティスト・慶應義塾大学教授
データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う。2022年より蜷川実花、ENZOらとともに結成したクリエイティブチームEiMのリーダーとしても活動中。本展ではコンセプトメイクなどを担当。Enzo
1972年生まれ。R.mond inc.主宰
PVやCMなどのムービー撮影、雑誌や広告などのスチール撮影、店舗デザイン、展覧会などのオブジェ製作など、あらゆるメディアにおける美術製作を手がける。
「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」は、写真家で映画監督の蜷川実花氏の過去最大規模の展覧会であるとともに、これまでのような個人の展覧会ではなく、クリエイティブチーム・EiM(本展タイトルの”Eternity in a Moment”の略)という1つのチームでつくりあげた初の展覧会となっています。
蜷川氏が「バンドを組んでいるようなもの」と表現したEiMは、データサイエンティストで慶應義塾大学教授の宮田裕章氏と、セットデザイナーのEnzo氏ら複数のクリエイターで構成されています。
さらに本展のゲストクリエイターとして、建築家の藤本壮介氏、フラワークリエイターの篠崎恵美氏(edenworks)、音楽家の久保 暖、小田朋美、内澤崇仁(androp)らも参画しています(藤本壮介氏は、本展の最後の作品・映像インスタレーション〈Flashing before our eyes〉の展示空間のデザイン監修を担当)。
蜷川氏にとって初となる取り組みがもう1つ、本展では紙焼きの写真作品がありません。写真はデジタルデータとなり、全て映像作品やインスタレーションに昇華しています。地上から200m以上の高さに位置する「TOKYO NODE」ならではの大空間を活かした映像インスタレーションが本展の核となります。
本展で多用されているモチーフは「花」。日常の延長線上にある何気ない場所で、蜷川氏がスマートフォンなども用いて撮影した写真データをもとに、さまざまな映像インスタレーションが制作されました。撮影のきっかけとなったのが、2020年に世界規模で起こったパンデミック。コロナ禍の間、作家のカメラは国内の各地の草花に向けられ、作家はそこで世界の美しさを改めて感じたといいます。特徴としては、ありのままの自然ではなく、公園の庭木といった人の生活の先にある自然を対象としており、“人が誰かを想って手を加えた自然”の美しさを表現した作品群です。
蜷川氏の代表的な写真や映像作品の特徴として、極めてコントラストの強い「極彩色」が挙げられますが、本展で見られるのは、光に包まれた「光彩色」と称される作品群です。
2022年に富山県美術館の開館5周年を記念して開催された「蜷川実花展」で披露された新作であり、同年に東京都庭園美術館で開催された展覧会「瞬く光の庭」でも披露された映像インスタレーションなどにもその手法は現れていましたが、蜷川実花独自の世界観を強く保ちつつも、日常の中にある普遍的な心象風景を切り取り、鑑賞者の誰もが自分の体験や感情と結びつくような「光彩色」の作品群が、本展でも展開されます。
「スマホやSNSの台頭により、視覚において情報過多な現代。視認性を高め埋没しないために、 企業ロゴやさまざまなデザインから華やかさが失われ、ありとあらゆる場面でモノトーンが増え、世界から色が消えていると言われています。また、パンデミックをきっかけに、人々の視覚がデジタル領域に消費されることがさらに増加したといえます。しかし、目を凝らせば、世界のあらゆるところに色はあふれており、美しさを感じる ことができる。そんな日常にある多様な色を感じてもらうために、リアルの中にある色を最大限引き出 し、人が識別できる最大数と言われている100万色もの色を表現した作品を、本展では展示しています。」(本展プレスリリースより抜粋)
片岡真実氏コメント(本展アドバイザー、森美術館館長)
蜷川実花の花々はいつも強くて眩しすぎる。彼女をそれほどまでに突き動かすものは何なのか。その眩しすぎる艶やかな世界に至るまでに、どんな暗闇を通ってきたのか。彼女の作品が輝きを放つのは、誰もが直面する日々の葛藤もパンデミックも戦争も、すべて一旦受容して、それでもなお、「いま、ここ」を生きようとしているからなのか。激しく揺れ動くその感情の根底を、本展では見られるだろう。
本展で展開される作品は、映像表現だけでなく、すべての作品に音楽がセットされており、14ある作品群を最初から最後まで体験すると、蜷川氏いわく「1つの映画を見たようなストーリーに」なっています。
作品単体だけでなく、外部の光や夜景も取り入れた空間全体の展示によって本展がイメージする「桃源郷」をつくり上げ、鑑賞者が作品の一部となるような没入感ある体験型の展覧会となっています。
藤本壮介氏コメント(本展ゲストクリエイター)
「今回、蜷川さんと宮田さんたちがつくった展示の最終章の空間を監修しました。光の作品に最終章としてのストーリーが紡がれるように、命を吹き込むような空間をつくりました。アートと融合した新しい体験を感じていただけると嬉しいです。」
本展の狙いについて、クリエイティブチーム・EiM(エイム)に名を連ねる宮田裕章氏は次のように説明しています(プレス説明会での発言より)。
「人間が認識できる色は最大で100万色と言われています。これに対し、この10年ほどのあいだの社会の動きはどうかというと、例えば企業やブランドでは、ロゴの配色をモノトーンにするところがとても増えています。そのほうがカドが立たず、万民に受け入れられる。多様性の時代と言われる一方で、世界がグローバルにつながりすぎた故に、個性を強く打ち出して表現することを躊躇するといった状況にあります。色は1つの可能性を示すものです。本展では、蜷川氏が撮影した写真をもとに「桃源郷」をイメージして五感で感じられる展示空間を展開しています。本展を通じて、人々が多様性というものに改めて目を向けるきっかけになればと願っています。」(宮田裕章氏談)
本展は、会場の外にあるPOP-UPストアで販売している関連グッズ・コラボレーショングッズも充実しています。
さらに「TOKYO NODE」のエントランスに位置する8Fのカフェ「TOKYO NODE CAFE」では、本展にあわせたコラボメニューを展開。こちらのカフェと会場で、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感で、蜷川実花の世界観を味わうコンテンツ構成となっています。
会期:2023年12月5日(火)〜2024年2月25日(日)
休館日:2024年1月1日(月・祝)〜1月2日(火)
開館時間:月・水・木・日曜:10:00-20:00 / 火曜:10:00-17:00 / 金・土曜・祝前日:10:00-21:00 / 祝日10:00-20:00(元旦は休業)
※2023年12月31日(日)のみ短縮営業(10:00-20:00)
※最終入場は閉館30分前まで
会場:「TOKYO NODE」GALLERY A/B/C
所在地:東京都港区虎ノ門2丁目6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45F(Google Map)
観覧料:平日 一般 2,500円、大学生・高校生 2,000円、中学生・小学生 800円 / 土・日曜・祝日 一般 2,800円、大学生・高校生 2,200円、中学生・小学生 1,000円
※入場は日時指定が必要
※本展オリジナルステッカー付き
主催:TOKYO NODE
協賛:ポーラ、TOKIO INKARAMI、Roadstead、ガトーフェスタ ハラダ、Audi Japan、nido、ソニー、ソニーマーケティング、ソニーPCL
協力:小山登美夫ギャラリー、ヴーヴ・クリコ、黒澤フィルムスタジオ、東京リスマチック、パナソニック コネクト
展覧会公式ページ
https://www.tokyonode.jp/sp/eim/