2025年11月26日初掲、12月19日会場レポート追補
東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3にて、サンゲツの企画・主催による展覧会「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」が11月29日から12月5日まで開催されました。
江戸時代・嘉永年間の1849年に、表具師の日比弥助が山月堂を創業してより、人々の暮らしを彩るインテリア商品を開発・提供してきたサンゲツでは、コンテンポラリーデザインスタジオのwe+(ウィープラス)をコラボレーターに迎えて、「壁装材」をデザインと文化の視点から再解釈するリサーチプロジェクトに取り組んでおり、本展はその披露となるものです。
メッセージ
日本の壁紙は、自然環境や住宅様式の変遷、海外文化との交流を背景に、素材や技術の進化を積み重ねながら、世界の壁紙とは異なる独自の発展を遂げてきました。現在では住まいに欠かせない「壁装材」として、暮らしの中で多様な役割を果たしています。
サンゲツでは、これまでに数万点におよぶ壁紙を手がけ、その豊富なアーカイブには、時代とともに培われた高度な技術や美意識、多様な空間表現の可能性が息づいています。
本展では、これらのアーカイブを起点に、「壁を装う」という文化の本質に迫り、素材と技術の進化、そこに宿る美意識の多様性をたどりながら、日本の壁装材文化の奥深い魅力を再発見し、これからの壁装材のあり方を提示します。

we+の4氏(左上から時計回り。敬称略):林 登志也、安藤北斗、猪上気広、関口愛理
『TECTURE MAG』では、本展を取材。会場にて、we+の安藤氏にインタビューを行い、本展開催の経緯など話を聞きました(一部、敬称略)。
※特記なき会場写真はすべて主催者提供(Photo:Masaaki Inoue / BOUILLON)

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景
——本展を主催・企画したサンゲツは、国内の壁紙市場では圧倒的なシェア1位を誇るブランドメーカーです。実績・知名度ともにある企業が、21_21 DESIGN SIGHTのギャラリーで展覧会を開催するという、その意図や背景を教えてください。
安藤北斗氏(we+共同代表、以下:安藤氏)
企画展そのものがサンゲツとして初開催となります。ご覧のとおり、サンゲツの壁紙をずらり並べて展示しているわけではなく、それではショールームになってしまいますので、われわれwe+とサンゲツが昨年から一緒に取り組んでいるリサーチプロジェクトの成果を、展覧会というかたちで披露しています。プロジェクトは進行中で、経過発表になります。
きっかけは、僕がサンゲツ主催の「サンゲツデザインアワード」の審査員を2024年から務めているのですが、その際に受けた事業説明のなかで見せてもらったのが、1960年代の壁紙見本帳でした(下の写真)。本展でも展示して閲覧できるようにしていますが、ものすごいボリュームなんです。今ではつくれないデコラティブなマテリアルもたくさんあって、今から60年以上前にこんなユニークな販促物をつくっていたのかと、びっくりしました。

1960年代にサンゲツが発行した壁紙見本帳 Photo: TEAM TECTURE MAG
——これを営業マンが持ち歩いていたのでしょうか。とてもぶ厚く、そして重い(笑)。しかしやはりデジタルカタログにはない実物の迫力があります。
安藤氏
そうですよね。でも、サンゲツにとって壁紙見本帳は販促ツールなので、これまでアーカイブ化してこなかったそうです。ならば、この見本帳を切り口に、壁紙のデザインの流れを体系化していったらおもしろいのでは? と提案して、リサーチプロジェクトをともに立ち上げることになりました。それが去年の春頃です。

1963-64年にサンゲツが発行していた壁紙見本帳 中面の一部 Photo: TEAM TECTURE MAG
——本展では膨大な資料群を紐解いて、見事にビジュアル化されています。会場で配布されている「見本帳の系譜」は巨大なツリー構造で、数の多さもさることながら、派生の過程がわかりやすい。
安藤氏
リサーチに着手してから「はたしてまとめられるのだろうか」と不安になる物量でした。1960年頃から今日まで160冊以上あります。モノが残っていた見本帳はすべて書影を撮り下ろしました。展示パネルでは、日本の壁紙のルーツを「土、木、石、紙、織」に分類して体系化しています。
調べていくと、壁紙を通して、世相などいろいろなことが見えてきます。日本の壁紙は海外のそれとは異なり、障子や屏風などの建具にルーツを辿れること。そして先ほど触れた1960年代の見本帳がボリューミーなのは、国内の住宅需要の急激な高まりと結びついていることなど。安価で施工も容易で大量生産でき、印刷やエンボス加工にも適した塩化ビニル製の壁紙が一気に普及した時期は高度経済成長期と重なります。そして日本の住宅は内装材の防火基準が厳しく、やや複雑で、海外メーカーにとっては防火認定というハードルはとても高い。日本のメーカー各社より長い歴史と伝統がありながら、日本市場への大規模参入ができていない要因の1つでしょう。日本の壁紙市場はガラパゴス的な発展を遂げてきたと言えます。

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景
——1年以上にわたるリサーチはまだ途上とのこと。やってみて、どのような気づきがありましたか。
安藤氏
考えてみると、僕らは幼い頃からずっと壁紙に囲まれて生活してきました。けれどもそれを意識することはまずない。ある意味、見落とされてきた素材だと言えます。そのような素材にどのように光をあてていくかを考えていったとき、なにか新しい価値のようなものが見えてくるように感じています。デザイナーと企業・ブランドがタッグを組んだエキシビジョンも、昨今では珍しくありませんが、協働してつくったモノを発表するというやり方が多いなかで、本展のように、デザイナー目線で対象となる素材を再編集し、その成果を内外で広く共有する、そこにも新たな可能性があるのではないかと考えています。
[了]
Texed by Naoko Endo / TEAM TECTURE MAG

「壁を装う展 – Wall Covering and Beyond」展示風景
会期:2025年11月29日(土)〜12月5日(金) ※すでに終了
休場日:なし・会期中無休
開場時間:10:00-19:00
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
所在地:東京都港区赤坂9丁目7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン(Google Map)
入場料:無料
主催・企画:サンゲツ
ディレクション・プランニング・リサーチ:サンゲツ、we+ / 安藤北斗、林 登志也、関口愛理、猪上気広
空間デザイン:we+ / 同上
グラフィックデザイン:STUDIO TATSURO SHOJI / 庄司竜郎
撮影:digni photography / 平松岳大、BOUILLON INC./ 井上昌明
施工:椿や
本展詳細
https://www.2121designsight.jp/gallery3/wall_covering_beyond/
https://www.sangetsu.co.jp/information/detail/20251027134832.html