FEATURE

Study Series : Tsuyoshi Shindo(4/5)

進藤 強「建築家だからこそ、自ら仕掛ける。不動産事業のススメ」(4/5)

FEATURE2021.03.03

Interview with Tsuyoshi Shindo 進藤 強「建築家だからこそ、自ら仕掛ける。不動産事業のススメ」

#04 事業は住みながらでも興せる!

■「好きなことを仕事に」の建築的な提案

── 不動産事業で、最近の事例や取り組みについて教えてください。

進藤:3年ほど前からやっているのが〈つながるテラス-MADO TERRACE DOMA TERRACE-〉という共同住宅です。
これは、あるオーナーさんから共同住宅の依頼を受けたとき、住宅街にある敷地で飲食店が成り立つかどうかという立地だったのですが、僕は「1階には店舗を入れましょう」と提案しました。共同住宅の中に、店舗の区画を最初からつくったのですね。

共同住宅の1階にある1室には、お店ができるスペースを設けました。2階には、ベッド1つを置けるくらいのスペースとシャワーしかない。1階はリビングのようなスペースなのですが、あえてそこで店をやるということです。
どうしてこのようなプランにしたかというと、経営が危なくなったら家だと思えばいいし、うまくいったら店だと思えばいいんです。もっとうまくいったら、家を別に借りればいい。スタートアップとして、サラリーマンをやりながら土日に家のリビングでお店をやる、みたいな感覚です。ワークとホビーを両立させる、好きなことを仕事にしながら暮らす。そんな暮らしもあるんじゃないかって思います。

〈つながるテラス〉では、住みながら事業が起こせるんです。まずは僕たち管理会社が入居者パーティーをしたり、いろんな企画を仕掛けていったりしました。すると次第に入居者から、「こういうイベントがしたい」「クリスマスマーケットをやりたいんですけどいいですか」というように自走し始めています。きちんと成功体験をしたら、自分たちで動かすようになるんです。

僕らは年間に何棟、何十棟とつくっているので、すべての物件に付き合っていくことはできません。でも、〈つながるテラス〉は持続していく仕組みづくりがあるので、成功しています。

ここは避難通路と避難通路を合わせて広くしてできた生活道路を大きな道路とつないで、その周りに建物を点在させるような設計をしたので、近所のおばちゃんも敷地内を通っています。
その部分には部屋をもっと取れたのですが、その道は生活道路になり、地域の道になります。道を民間がつくるという意味でも、とても面白い取り組みになりました。

〈つながるテラス〉が軌道に乗っているのは、入居者さんが素敵だったからだと思います。そしてオーナーさんが「この子たちに任せよう」と決めてくれたことも大きいですね。
入居に審査があって、収入や勤務先を見て入居者を選ぶようなオーナーだったら、こんなことは絶対に起きなかったと思います。僕らの提案もありえないことだったのですが、理念を掲げたからそれが実現したという1つのモデルです。

これは、どこでも成功するわけではありません。オーナーに愛情がなく、金儲けだけでこれをやろうといってもできません。入居者とのふれあいが面白いということで、僕たちも楽しいし、オーナーさんも楽しい。楽しいことをやっていたら、楽しい人が集まると僕は思っています。

▲〈つながるテラス-MADO TERRACE DOMA TERRACE-〉配置平面図 Provided by BE-FUN DESIGN

■若手建築家支援プロジェクト「ニコイチ荘」

進藤:もう1つ、新しい事業に取り組んでいます。今の事務所は僕らが3年前に買ったもので、いろいろ改造しながら宿泊業と飲食業などをやっているんですけど、今、隣接する再建築不可の土地を買って新築を進めています。
そこでは、「こんな社会が来るんじゃないか」「こんな社会が来たらみんな楽しいよね」みたいなことをやろうと思い、「ニコイチ荘」というプロジェクトタイトルを付けました。「建築界隈のトキワ荘」をイメージしたシェアハウス、シェアオフィスです。

建築業界の若手たちと一緒に起業する、ということをやろうとしています。ストレートにお金儲けをするのであれば、宿泊施設にすればある程度儲かるでしょう。でもそれだと「僕らが建築家として生きていく意味がないよな」と思ったのです。

ニコイチは20㎡の部屋が2つあって、玄関を入ったら分かれます。セパレートにしないで40㎡で使うことも可能なプランとしました。友達と分けてもいいし、単身赴任のお父さんが東京の大学に受かった息子と分けてもいいし、事務所と住まいとしてもいい。
シェアハウスとなにが違うかというと、それぞれのユニットに風呂とキッチンと洗面所があることで、すべて準備されている1つの部屋でもあり、2つの部屋でもあるのです。
1階は僕たちの設計事務所を含めたコミュニティスペースにしながら、上を借りてくれた人は、1階のスペースも使える仕組みにしたいと思っています。

コロナの関係で不動産投資に対して融資がすごく難しいなかで、「不動産投資を始めたいが、どうやって始めていいか分からない」とか、「起業したいけど資金がない」という若い人たちがいると思うんです。いきなり不動産を買うのは無理ですよね。

今のところアイデアとしてあるのが、僕がやっている旅館業もしくは民泊ということでニコイチを使い、その収入で自分の家賃をまかなう方法で、5人くらい募集しようと思っています。
5人がニコイチの部屋を2つずつ借りていくから10部屋。それを借りた若い設計者たちが「こんなことやったらけっこう客が来ました」とか、「僕はこんなことをして、今いくらで貸しています」みたいなアイデアや意見が、どんどん飛び交うようになったらいいなと。そうしたことを1階のシェアオフィスで共有しながら、5人の事業を一緒になって盛り上げたいと考えています。

そこでちゃんと収入が得られるようになったら、もう不動産投資家ということ。自分の家賃分が稼げるようになってくると、設計の仕事もしやすくなります。設計やデザインで独立する人も、先ほど(#03)お話しした「財布をもう1つもつ」という話になりますが、だいぶ気持ちがラクになりながら設計できるし、好きなことを仕事にできる。
だから2つの財布をもつための手段として、こういう起業家を集めたシェアオフィス兼ニコイチハウスを考えています。

〈Nicoichi:起業2世帯住宅〉Image provided by BE-FUN DESIGN

■起業を共有して一緒に考える

進藤:自分で事業をやりながら「建築家です」といえば、たぶん仕事は今以上に増えると思うのです。リアルにそんなことをやれる人はなかなかいないので、20代の段階からやれたら大きな力になりますよね。
アトリエ事務所に行っている人が独立するときも、上手にボスとも付き合いながら、仕事があれば手伝う、スーパーフリーランス集団のような仕組みのプラットフォームをつくれたらと思っています。

みんなが楽しく生きていけるような仕組みのプラットフォームをつくりながら、ここで起業する若者たちを応援する。というより、一緒になって面白がろう、みたいなことをやりたいな、と。
10年くらい経って「賃貸借りたの? ニコイチ?」という会話ができたら面白いし、それが広がりになっていったら、ちょっとだけ社会が良くなりそう、という感じで投資をとらえてやっています。

── 実践しながら若手を育てることまで考えているのですね。

進藤:お金儲けだけというより、今までなかったことをやることで、普通の賃貸ではない醍醐味とかネットワークが得られますよね。若い世代とは、普通に考えたらリクルートで来る人としか会えないのですが、「起業したい」と考えている若い人たちと会えることが、僕にとって財産なんです。

その人たちから、いろんなアイデアや話を聞きながら、自分も新しい事業を考えられます。単純なお金というよりは、結果的に倍々になる仕組みみたいなことを、20代、30代の独立したい若者たちと考えていきたい。
僕が若いときだったら、そんなことがあったらよかったなぁと思うことしか考えていないんです。それが結果的に収入につながったら嬉しいですが、当面は収入にもならないし、エラーもたくさん起きるかもしれない。でも、エラーが起きたらそのエラーをどうやって解決するかを考えていきながら進化し続けたいと考えています。

#05 設計者の強みを活かして楽しくサバイブ に続く)

Study Series
Interview with Tsuyoshi Shindo
進藤 強「建築家だからこそ、自ら仕掛ける。不動産事業のススメ」
#01 Netflixと映画界から建築界が学ぶこと
#02 何本も腕を出しながら“田植え”を続ける
#03 設計事務所もサブスクで稼げる時代!?
#04 事業は住みながらでも興せる!
#05 設計者の強みを活かして楽しくサバイブ