デジタルテクノロジーによる建築産業の変革を目指す設計集団「VUILD」。彼らが手掛けたクリエイティビティあふれるパブリック空間「Picnic Lab(ピクニックラボ)」が、東京ミッドタウン(東京都港区)に期間限定でオープンしました。
さまざまなプロジェクトやプロダクトを手掛けているVUILDが目指す、年齢を問わず誰もが手軽にピクニックやDIYワークショップを楽しめる空間とは、一体どのようなものなのでしょうか? 現地で詳しく解説してもらいました。
DIYやワークショップを通してピクニックを楽しむ!
VUILDは、デジタルデータをもとにものづくりを行う「デジタルファブリケーション」の技術と建築分野を掛け合わせて建築産業の変革を目指す設計集団。代表の秋吉浩気(あきよし・こうき)氏を中心に、誰でも簡単にものづくりに取り組める環境を提案しています。
特に、全国154拠点で166台が展開している(2023年4月現在)3Dデジタル木材加工機「ShopBot」と、それを活用してオンラインでオーダーメイド家具を自由に設計して出力できるサービス「EMARF(エマーフ)」は、ものづくりに関わったことがない人でも「家具の地産地消」ができるプラットフォームとして、注目を浴びています。
今回彼らが東京ミッドタウンとともに手掛けたのは、広々とした芝生広場で手ぶらピクニックやDIYワークショップが楽しめる「Picnic Lab(ピクニックラボ)」。現在東京ミッドタウンで行われている「MIDTOWN OPEN THE PARK 2023」の一環として、自由に使えるピクニックツールや遊具がパブリック空間に展示されており、木材を使ったDIYワークショップとあわせ、大人から子供まで楽しめる空間となっています。
「生きる」と「つくる」をつなげる“ものづくり”
VUILDがビジョンとして掲げるのは、「『生きる』と『つくる』がつながる社会へ」というもの。そのために「すべての人を『設計者』にする」をミッションとして、さまざまなプロジェクトやプロダクトを手掛けています。
今回のPicnic Labでは、来場した人が用意されたチェアやスツール、ピクニックトレイなどを自由に使用してピクニックを楽しめ、さらにものづくりに参加・体験できることがコンセプト。スツールやトレイなどは、いずれも3Dデジタル木材加工機「ShopBot」で出力されたもので、シンプルな構造で誰もが使いやすく、組み立ても簡単なのが特徴です。
例えば、「オカモチスツール」(上の写真の中央)はオカモチ(岡持ち)としてもスツールとしても使えるアイテム。ピクニックセットを運んだ後は、ひっくり返してスツールやちょっとしたテーブルとして使うことができます。
会場となる芝生広場は「GALLERY(見る)」「PLAY(あそぶ)」「LOUNGE(くつろぐ)」「FAB(つくる)」などのエリアに分けられており、FABエリアには子供たちが木片のオーナメントを思い思いに彩って飾り付けていくことのできる「ガーランドツリー」を設置。
またPLAYエリアでは卓球台や大きなチェスの駒も用意されており、これらもスツールなどと同じく「ShopBot」によって削り出したパーツから構成されています。
Picnic Labのデザインを手掛けたVUILDの長岡 勉さんは、「シンプルにピクニックを楽しんでもらってももちろんいいけれども、自分たちでピクニックを楽しむためのアイディアを考えたり、つくるということに関われる屋外空間を目指しました」と話します。
Picnic Labでしか味わえない体験
会場で最も目を引くのは、まるでプラモデルのランナー(パーツの周りを囲む枠)のようなかたちをした大判の木材によるインスタレーション。さまざまなかたちに切り抜かれた木材は、すべて会場内のスツールやチェア、ピクニックトレイなどを「ShopBot」によって切り抜いた後の端材です。
また、GALLERYエリアには、EMARFユーザーのコミュニティーである「EMARF CONNECT」のメンバーらの手による作品も展示されています。
「杉のオカモチ」を展示したのは、無印良品を経てデザイン事務所・torinokoに所属するデザイナー・小山裕介氏。杉の合板を使ってつくる収納箱は、子供でも組み立てができるように設計されているといいます。
加えて、会場には「ShopBot」の実物も設置されており、土日祝日に開催されるDIYワークショップでは、実際に子供たちが木材からパーツを切り出して、ピクニックトレイなどをつくってみるというイベントも開催されています(事前予約を推奨)。
「部品の一部を切ったり、磨いたり、つくるというプロセスのほんの一部でもコミットすると、モノに対する愛着が湧くと思う。『つくる』ことによって場所や使うものに想いを持てたり、単にものを購入するのとは異なる満足度や体験価値が生まれることと、その楽しさを多くの人に感じてもらえれば」(長岡氏)
社会が価値を「提供する側」と「提供される側」に切り分けられてしまうことで、「つくる」ことの魅力が失われてしまったと長岡さんは語ります。「つくる」という行為を通して、単なるモノが唯一無二の存在へと変わる。野菜が苦手だった子供が、家庭菜園で自ら野菜を育てることによってその美味しさに気づくように、ものづくりの楽しさを感じるとともに、そこから人生を豊かに生きるためのさまざまな気づきを得る——。「つくる」と「生きる」がつながった、そんな空間であり体験を、Picnic Labは提供しています。
Interview & text by Tomoro Ando
Photographs by Jun Kato
MIDTOWN OPEN THE PARK 2023「Picnic Lab」開催概要
会場:東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン 芝生広場
※ 雨天、荒天の場合は中止
会期:2023年4月21日(金)〜5月28日(日)
開場時間:11:00-18:00
入場料:無料
主催:東京ミッドタウン
協力:VUILD概要:建築系スタートアップ・VUILDと東京ミッドタウンがコラボレーション。クリエイティビティあふれるユニークな公園が芝生広場に期間限定でオープンする。木材を使ったDIYワークショップ(予約制、有料)も併催。
DIYワークショップ概要
開催日:「MIDTOWN OPEN THE PARK 2023」会期中の土・日曜、祝日(計15日)
※ 雨天、荒天の場合は中止
予定内容:ピクニックトレイ、カッティングボードの作成 / スツール制作
所要時間(目安):30〜60分 / 60~90分
参加方法:要予約(空きがあれば当日参加可)
※ Peatixサイトにて事前予約受付
https://tokyomidtown.peatix.com/