FEATURE2023.05.27

第18回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展 開幕

大西麻貴、百田有希、原田祐⾺、多田智美のキュレーションチームによる「愛される建築を目指して –建築を生き物として捉える」を掲げた日本館展示

ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展が開幕!

イタリア・ヴェネツィアにて「第18回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展」が5月20日に開幕しました。会期は11月26日まで。コロナ禍以降、通常会期に戻っての開催です。

同展における日本館の展示概要については、国際交流基金が2022年7月5日に発表、『TECTURE MAG』のニュースでも速報したとおりです。

大西麻貴氏が2023年の「ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展」日本館のキュレーターに就任、展示テーマほか発表! “現代の建築は愛されているか?”を問う

建築家の大西麻貴がキュレーター、大西氏とともに建築設計事務所・o+h(オープラスエイチ)を率いる百田有希が副キュレーターを務め、またそこにデザイナーの原田祐馬氏と編集者の多田智美氏がキュレーションチームとして加わった今回の日本館展示では、”現代において果たして建築は愛されているか”という問いかけのもと、「愛される建築を目指して ー建築を生き物として捉える」をテーマに掲げています。

建築家ユニットのドットアーキテクツのほか、テキスタイルデザイナー、窯業家、デザイナー、編集者、金工、アニメーターといった専門性の異なるメンバーで展示チームが構成されます。

日本館展示キュレーションチーム(左から):多田智美、大西麻貴、百田有希、原田祐⾺の4氏
吉阪隆正が設計した⽇本館 © 写真:原⽥祐⾺

テーマは「愛される建築を目指して ー建築を生き物として捉える」

会場となる日本館は、建築家の吉阪隆正(1917-1980)が設計した、彼の代表作の1つとして知られています。本展では、1956年に竣工した建物そのものを展示物と捉え、パビリオン自体が「愛される建築」となることを目指します。

第18回ヴェネチア・ビエンナーレ 国際建築展 日本館 展示模型 撮影:原田祐馬 提供:国際交流基金
撮影:原田祐馬 提供:国際交流基金

昭和31年竣工の吉阪隆正建築と向き合う展示

本展では、ファサードにテントの屋根がかけられ、開口部にはモビールが吊るされ、人々が交差するピロティはバーのような憩いの場として機能します。そして、日本館の特徴を語るうえで欠かせない構造壁には、アニメーションが投影されます。さらに、吉阪による日本館の設計コンセプトや造形への回答として、室内空間には、模型、什器、再編集した書籍などが制作され、展示されます。
さまざまなつくり手たちが日本館と向き合い、構想した展示物を通して、来場者が「愛される建築」について考える場を創出するのが今回の日本館の展示です。

会期中は、関係者によるトークイベントやワークショップなどを通じて、「生きた場」として日本館を育て続けることを目指すとのこと(国際交流基金 2023年4月27日プレスリリースより)。

日本館キュレーター・ステートメント

「愛される建築を目指して –建築を生き物として捉える」

2023年初夏、日本館の竣工から67年が経ちました。日本館は、たくさんの人を受け入れながら、今もこの場所に立っています。今回、私たちは「愛される建築」をテーマに、吉阪隆正さんにより設計された日本館そのものと向き合うことから展覧会を育ててきました。

「愛される建築」を目指す私たちの活動は、その場所を取り巻く風景や営み、刻まれた記憶や物語も含めて「建築」と捉えることで、「建築」がもつ意味や可能性を広げていく試みです。そのために私たちは、建築を“生き物”と捉えることからはじめたいと思います。

「ものをつくるとは、そのものに生命を移すことだ」。これは吉阪隆正さんが残した言葉です。命を宿す自立した存在として建築と向き合うと、その価値を機能や性能で測るのではなく、欠点や未完成な部分も含めて愛しみ、育んでいくことができます。そのように建築の個性をおおらかに受け止める姿勢は、人間や動植物を含めた私たちそれぞれが、互いの違いを認め、尊ぶことのできる寛容な世界へとつながっていくのではないでしょうか。

もし日本館が“生き物”だとしたら、私たちはこの場所をどのようなまなざしで見つめ直すことができるでしょう。会場内に点在する日本館へのさまざまな応答を手がかりに、ここを訪れた人々とともに「愛される建築とはなにか」を考え、私たちと建築との関係を問い直してみたいと思います。

キュレーター 大西麻貴

撮影:原田祐馬 提供:国際交流基金

第18回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展 日本館 概要

タイトル:愛される建築を目指して –建築を生き物として捉える
英題:Architecture, a place to be loved ―when architecture is seen as a living creature
主催・コミッショナー:国際交流基金
キュレーションチーム:大西麻貴(建築家、o+h共同代表)、百田有希(建築家、o+h共同代表)、原田祐⾺(デザイナー、UMA/design farm代表)、多田智美(編集者、MUESUM代表)
出展者:dot architects(建築家|家成俊勝、土井 亘、池田 藍、宮地敬子)、森山 茜(テキスタイルデザイナー・アーティスト)、水野太史(建築家、窯業家、水野製陶園ラボ代表)
展示デザイン:o+h(榮家志保、古澤 周、伊郷光太郎、前本哲志)
編集:MUESUM(永江 大、羽生千晶)
デザイン:UMA/design farm(高橋めぐみ、津田祐果)
制作協力:André Raimundo、橋本亜沙美、Atelier Tuareg(岡崎裕司)、Dept.(中村 誠)、Good Job!センター香芝、Julia Li、笠原細巾織物(笠原直樹、伊代田秀樹)、Lighter but Heavier (片山 浩)、水野製陶園(水野吉興)、水野製陶園ラボ(今井一貴)、moogabooga (高野 真、小田文子)、大鷲テープ工場 (大鷲義育)、吉行良平と仕事(吉行良平)、柴垣志保、進弘産業(伊藤誠宣、横山 厚、松田康宏、加藤貴志、Nguyen Thi Kim Tu、Nguyen Thi Yen Nhi)、SUPER-FACTORY + HIGURE 17-15 cas (佐野 誠、有元利彦、田中信至、木村泰平)、太陽工業(池田憲彦、平郡竜志)、たんぽぽの家、桂 瑛、横浜国立大学大学院/建築都市スクール”Y-GSA”(長柄芳紀、武部大夢、 照井甲人、 上田望海、 松原 周、 遠藤颯大、 神田柚花)、井波吉太郎、平岩良之、多木陽介、高野ユリカ
コーディネーター:嶋根智章、鈴木達也、神津有希、赤木佑衣、鶴井百合奈、マリア・クリスティーナ・ガスペリーニ
現地コーディネーター:武藤春美
特別協力:吉阪正邦、齊藤祐子
資料提供:吉阪隆正+U研究室、アルキテクト、文化庁国立近現代建築資料館、彰国社、勁草書房、建築資料研究社、早稲田大学建築学教室本庄アーカイブス

特別助成:公益財団法人石橋財団
協賛:マザーハウス、三協立山、伊東豊雄建築設計事務所、カリモク家具、名古屋モザイク工業、S&R Evermay / Sachiko Kuno Philanthropic Endowment、シェルター、鹿島建設、大西熱学、田島ルーフィング、竹中工務店、Amame Associate Japan、大光電機、フェニクシー、太平ビルサービス、石川建設産業、ヴォーチェ、横浜国立大学、横浜国立大学大学院/建築都市スクール”Y-GSA”
協力:太陽工業

ヴェネチア・ビエンナーレ 日本館公式ウェブサイト
https://venezia-biennale-japan.jpf.go.jp/j/

キュレータープロフィール

大西麻貴(おおにし まき)
1983年愛知県生まれ。
2006年京都大学工学部建築学科卒業。2008年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。
2008年より、大西麻貴+百田有希 / o+hを百田有希と共同主宰。
2016年より、京都大学非常勤講師。2017年より、横浜国立大学大学院YGSA客員准教授、2022年より同YGSA教授。

o+h(オープラスエイチ)近影

左から、キュレーターの⼤⻄⿇貴氏、副キュレーターの百⽥有希氏

副キュレータープロフィール

1982年兵庫県生まれ。
2001年兵庫県立長田高等学校卒業。2006年京都大学工学部建築学科卒業、2008年同大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。
2008年より、大西麻貴+百田有希 / o+h を大西麻貴と共同主宰。
2009-14年伊東豊雄建築設計事務所勤務、2017年より横浜国立大学非常勤講師

o+h(オープラスエイチ)としての主な作品に、〈二重螺旋の家〉(2011年)、〈Good Job! Center KASHIBA〉(2016年)、〈多賀町中央公民館 多賀結いの森〉(2019年)、〈シェルターインクルーシブプレイス コパル(山形市南部児童遊戯施設)〉(2022年)などがある。
主な受賞に、第2回日本建築設計学会賞大賞(2018年)、JIA新人賞 (2018年)、日本建築学会作品選奨・新人賞(2019年)など。

o+h Web Site
http://www.onishihyakuda.com/


ヴェネツィア・ビエンナーレ(Biennale di Venezia)概要
イタリア・ヴェネツィア市の市内各所を会場とする国際的なフェスティバル。1895年に最初の国際美術展が開催されて以来、120年以上の歴史を有する。「ビエンナーレ」とは「2年に1度」を意味するイタリア語。1930年代に音楽、映画、演劇の各部門が加わり、総合芸術祭へと発展。1980年に新設された建築展は、現代の建築の動向を俯瞰できる場として毎回注目される。美術展と同じく、建築展も参加各国によるパヴィリオン展示と、総合キュレーターによる企画展によって全体が構成される。
日本は1991年の第5回展から公式に参加(美術展と同様、国際交流基金が日本館での展示を主催)。磯崎 新氏が日本館のコミッショナーを務めた1996年と、伊東豊雄氏が同コミッショナーを務めた2012年に、パヴィリオン賞(金獅子賞)を受賞している。ビエンナーレ財団が主催する企画展に招聘される日本人建築家も数多く、2010年の第12回展は、妹島和世が女性初の総合キュレーターとして建築展全体を統括した。

同建築展 日本館展示における近年の主な受賞者(名称・所属などは当時のもの)
第13回(2012年)ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展賞:金獅子賞・最優秀パヴィリオン賞 受賞者:日本館(コミッショナー:伊東豊雄|参加作家:乾 久美子、藤本壮介、平田晃久、畠山直哉)
第15回(2016年)ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展賞:特別表彰 受賞者:日本館(キュレーター:山名善之|参加作家:菱川勢一/mnm[常山未央]、西田 司+中川エリカ、
成瀬・猪熊建築設計事務所[猪熊 純、成瀬友梨]、仲建築設計スタジオ[仲 俊治、宇野 悠里]、能作アーキテクツ[能作文徳、能作淳平]、miCo.[今村水紀、篠原 勲]、レビ設計室[中川 純]、増田信吾+大坪克亘、青木弘司建築設計事務所[青木弘司]、403architecture [dajiba][彌田 徹、辻 琢磨、橋本健史]、BUS[伊藤 暁、坂東幸輔、須磨一清]、ドットアーキテクツ[家成俊勝、赤代武志、土井 亘])

「第18回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展」全体概要
会期:2023年5月20日(土)〜11月26日(日)
開場時間:10:00-18:00
休場日:月曜
会場:ジャルディーニ地区(Giardini di Castello)、アルセナーレ地区(Arsenale)など
総合ディレクター:レスリー・ロッコ(Lesley Lokko、建築家)
総合テーマ:The laboratory of the Future
入場料:25ユーロ

Biennale di Venezia Web Site
http://www.labiennale.org


国際交流基金 開催告知ページ
https://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/international/venezia-biennale/arc/18/

プレスリリース
2022年7月5日 キュレーター発表
https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2022/010.html
2022年5月2日 開催告知
https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2023/003.html

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第18回ヴェネチア・ビエンナー レ 国際建築展 日本館展示概要(2022年7月発表)

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"現代の建築は愛されているか?"を問う

大西麻貴氏が2023年の「ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展」日本館のキュレーターに就任、展示テーマほか発表

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