活躍するインテリアデザイナーの系譜をつくってみた
2023年10月19日初掲、20日更新
商業施設や住宅などの室内空間のデザインを仕事にし、高いクオリティのデザインで活躍し国内外から注目される、日本のインテリアデザイナー。
日本ではインテリアデザイナーは建築家に比べると新しい概念の職業で、これまで人の系譜を概観できるものは特にありませんでした。
そこで、TECTURE MAGでは日本のインテリアデザイナーの系譜をたどり、まとめてみました。
とはいえ、そもそもインテリアデザイナーは系譜を追いづらい傾向があります。
その理由として、次のようなことが挙げられます。
- 大学など教育・研究機関での系統立った流れがあまりなく、仕事をするのに資格は必須ではない
- 特に商業施設のインテリアデザインは社会の情勢や流行と切り離せず、更新が早い
- 2000年代に入ると建築家がインテリアデザインを手掛けるケースが急増し、建築とインテリアの境が曖昧になった
多少強引なことは承知のうえ、系譜図としてまとめたのが以下のものです。
読み解くためのガイドライン
今回の系譜図を読み解くためのガイドラインまた補助線として、時系列を基本として下記のような傾向を挙げてみます。(人名の敬称は省略)
■1960年代まで:インテリアデザイナー黎明期
「インテリアデザイン」という言葉がまだ浸透していない時代。
戦前に都市文化が花開き、百貨店の装飾部や家具部が室内装飾の分野をけん引。
行政によるデザイン教育機関が整えられ、シャルロット・ペリアンやブルーノ・タウトが来日。タウトに師事した剣持勇が家具デザイン・室内設計で活躍し、晩年はホテルを手掛けた。
■1960-70年代:インテリアデザイナーの確立
桑沢デザイン研究所で学び、三愛と百貨店のインハウスを経て、倉俣史朗が独立。
そのデザインは世界的に評価され、クラマタデザイン事務所出身者のみならず、同時代に多大な影響を与えている。
ジオポンティに師事した岩淵活輝、アメリカ式のオフィスやホテルを手がけたパシフィックハウス出身の北原 進など、多様な経歴のデザイナーが活躍し、インテリアデザイナーの立場が確立された。
■1970-80年代:インテリアデザイナーの飛翔
キャラクターの異なるデザイナーが、それぞれ活躍した時代。
なかでも内田 繁と三橋いく代によるスタジオ80.、杉本貴志と高取邦和によるスーパーポテト(高取は後に独立)は、アトリエ事務所としてインテリアデザイナーを多く輩出。
コムデギャルソンの空間デザインを担当した河崎隆雄など、ファッションデザイナーとインテリアデザイナーがタッグを組むケースも。
■1990年代:インテリアデザイナー百花繚乱
好景気に支えられて、さらに多彩なインテリアデザイナーが活躍していく。
黒川 勉と片山正通による H.Design Associates(後に解散)、清水 薫を中心に5人のメンバーで立ち上げた EXIT METAL WORK SUPPLY など、カルチャーと結びつき、独自の活動を展開する若手デザイナーチームも時代をけん引していった。
■2000年代:海外発デザイナー、建築家のインテリア
世界中の情報がすぐに手に入るようになってきた時代。
吉岡徳仁、佐藤オオキなど、ミラノサローネ・サテリテなど、海外デザインアワードの受賞で注目されたことをきっかけに、国際的に活躍する日本人デザイナーが現れる。
また、若手建築家が建築設計のアプローチでインテリアデザインを手掛けるケースも増えた。その源泉となる姿は、かつてインテリアに影響を及ぼしたレジェンド建築家たちの活動かもしれない。
■2010年代:グローカルな活動、組織発デザイナーの台頭
情報と交通網の発展で、日本と海外、都市と地方など多拠点で活躍するインテリアデザイナーが増えていく。
また、組織設計事務所出身のデザイナーや、乃村工藝社A.N.D.の小坂 竜を先駆けに、企業に属しながら個人名を表に出して活動するデザイナーも目立つように。
細分化するニーズに合わせて、事業性や地域性といった強みや個性を持ったさまざまなデザイン主体が活躍している。
インテリアデザイナー系譜図へのご意見を募集!
いかがでしょうか。
時系列 / 個人別(師弟関係)/ 地域別 / 設計思想別などの視点を通すと、さらに見えてくることがあるかもしれません。
なお、系譜として前後のつながりが不明瞭な場合、現状では掲載していない方々も多くいます。TECTURE MAG では今後も、インテリアデザイナーの系譜をアップデートしていきたいと考えています。
今回の系譜図に対してのご意見をお待ちしています!
magazine@tecture.jp
※ 主な参考書籍・WEB
・『日本インテリアデザイン史』(オーム社刊、著:鈴木紀慶、今村創平、監修:内田 繁 )
・デザイナー・設計者のホームページ
・BAMBOO MEDIA
Text & research: Yuki Tamaki
Edit: Jun Kato
本記事の修正について
2023.10.19 初出
2023.10.20 系譜図を一部(事務所名の誤記など)修正