国内有数の家具メーカーの1つ、天童木工(本社:山形県天童市)から、3つの新作家具が発売、受注が開始されました。
同社の周年企画「TENDO JAPANESE MODERN / 80 PROJECT」から誕生したプロダクトで、デザイナーとして、熊野 亘(デザインオフィス kumano)、二俣公一(ケース・リアル / KOICHI FUTATSU- MATA STUDIO)、中村拓志氏(NAP建築設計事務所)の3氏が参画しています。
「TENDO JAPANESE MODERN / 80 PROJECT」とは、1940年の創立から現在に至るものづくりを改めて振り返り、天童木工とジャパニーズモダンについて再考することを目的としたプロジェクトです。次の時代を見据え、共に未来を見つめるデザイナーとして、上記の3氏を招聘。プロダクト、インテリア、建築のそれぞれの視点から新作家具のデザインを依頼しました。
プロトタイプは2020年に発表され、天童木工東京支店での周年記念展「TENDO JAPA- NESE MODERN / 80 PROJECT EXHIBITION」にて披露されています。今回が3プロダクトがまとまっての待望の発売となります[*1]。
*1.中村拓志氏がデザインした〈Swing lounge chair〉のみ、同シリーズのアームチェアとワーキングチェア〈Swing chair〉が2022年6月に先行して発売されている。
周年記念展と関連トークイベント(2020年)
熊野亘×二俣公一×中村拓志 オンライン鼎談:「2021年 天童木工とジャパニーズモダンを語る」 TENDO JAPANESE MODERN / 80 PROJECT デザイナークロストーク
デザイナー:熊野 亘(kumano)
ラインナップ:チェア、アームチェア
材料:ナラ
木部カラー:生地色、AB(アッシュブラック)
バリエーション:板座タイプ、張座タイプ
発売日:2023年1月
熊野氏がデザインした〈PLYPLY〉は、空間に溶け込むシンプルなデザインの中に、多くの成形合板技術が落とし込まれています。
背と一体となった滑らかな座面は3次元成形による曲面を持ち、快適な座り心地を実現しています。座面を支え、脚部へと繋がるフレームも成形合板によるもの。背裏の笠木は、手掛けの機能を持ち、触れた際の心地よさを考慮して無垢材を採用しています。
デザイナー・熊野 亘氏コメント
「天童木工の成形合板の技術の高さを象徴するような椅子をデザインしよう、という想いから、〈PLYPLY〉のスケッチは始まりました。象徴=斬新ということではなく、生活に自然に溶け込む、削ぎ落としたシンプルなデザインで、成形合板を多用した椅子。逆に言えば、一見シンプルだが、使い込んでいく日々の中で品質やディテールに気付くデザインということになります。
〈PLYPLY〉は、横方向に走る背もたれ上部の枠、座面を支える裏面の2本の桟以外は成形合板でつくられています。背もたれと座面を一体にし たシェル、背もたれから前脚につながるライン、後脚から座面裏側に入り込んでいくライン。一糸乱れぬ成形合板の断面のラインの美しさが、座り心地と技術の高さを裏付けています。」熊野 亘(くまの わたる)プロフィール
プロダクトデザイナー。2001-2008年にフィンランドへ留学、帰国後はジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)氏に師事。2011年にデザインオフィス kumanoを設立。環境、機能性、地域性など、背景のあるデザインをテーマに、天童木工のほか、カリモク家具などの国内外の家具メーカーとのプロジェクトを手掛ける。
2021年にスイスのローザンヌ州立美術学校(ECAL)にて教鞭を執り、同年秋からは武蔵野美術大学准教授に就任。デザインオフィス kumano Webサイト
https://watarukumano.jp/
デザイナー:二俣公一(ケース・リアル / KOICHI FUTATSU- MATA STUDIO)
ラインナップ:バックレスチェア、アームチェア、ベンチ
材料:メープル
木部カラー:ナチュラル(NT)、黒(BX)、ワインレッド(WR)
バリエーション:板座タイプ、張座タイプ
発売日:2023年1月
〈SAND〉という名は、無垢材の脚部を、成形合板による座面、肘掛け、背もたれの各パーツで挟み込むようにしてボルトで組み付けるという手法から名付けられています。これらパーツの組み合せによる構成は〈バタフライスツール〉や〈プライチェア〉がきっかけとなって生まれました。
前後どちらからでも座ることができる背もたれの無い“バックレスチェア”をベースとして、パーツの組み合わせ方法によって、背もたれのある“アームチェア”、あるいは複数の脚を連続させた“ベンチ”への展開も可能です。
二俣公一氏コメント
「天童木工との仕事を考えた際、すぐに成形合板のパーツ同士を組み合わせて 完結する椅子にトライしたいという考えに至りました。今回のテーマである『ジャパニーズモダン』を象徴する優れた同社の製品にも、過去にそういった手法が多く取り入れられていたことにも着目しました。
また、今回のような成形合板に限らず、特徴的なパーツをシンプルに組み合わせることによって新たな造形や機能美を生むという試みは、私がこれまで実践してきた家具やオブジェクトのデザインでも取り組んでいる手法です。今回は、座面・肘掛け・背もたれの主に3つの成形合板パーツを、共通の木フレームを挟み込むようにしてボルトで組み付ける(これがサンドの由来となっている)ことで生まれる、成形合板の生産性を活かした、効率的で多様なシリーズを提案しています。」二俣公一プロフィール
空間デザイナー・プロダクトデザイナー。
大学で建築を学び、卒業後すぐに自身の活動を開始。現在、空間設計を軸とする事務所・ケース・リアルと、プロダクトデザインに特化した事務所・KOICHI FUTATSUMATA STUDIOの主宰を共に務める。福岡と東京に拠点を構え、インテリア・建築・家具・プロダクトなど多岐におよぶデザインを国内外で手がける。
2021年より神戸芸術工科大学の客員教授に就任。CASE-REAL(ケース・リアル)Webサイト
http://www.casereal.com/KOICHI FUTATSUMATA STUDIO Webサイト
https://www.futatsumata.com/
デザイナー:中村拓志氏(NAP建築設計事務所)
ラインナップ:ラウンジチェア ※テーブル付きあり
材料:ナラ
バリエーション:NT(ナチュラル)、CH(チェリー)、BW(ブラウンウォールナット)
発売日:2023年1月
〈Swing lounge chair〉を特徴づけるヘッドレストの形状は、2022年6月より先行して販売中のチェア〈Swing chair〉(下の画)にもみられるデザインです。
〈Swing lounge chair〉の背もたれには大型の成形合板を用いて、曲面を描いた形状や背面に入れたスリットにより、座り心地を向上させるとともに、座って背を預けた際の”しなり”も感じられるチェアとなっています。
ヘッドレストは目隠しとしても機能し、パーソナルな空間を演出します。
豊かな厚みに適度な硬さを持たせたクッションは、身体のあたりも良く仕上げられ、広さも確保しているため、座ったときの自由度が高くなっています。
フレームには、中村氏の建築作品や家具デザインなどにもみられる、無垢材の丸棒を採用しています。
加えて、〈Swing lounge chair〉では取り外し可能な「テーブル」が付属するモデルもラインナップ。タブレットやノートPCを使用する昨今のワーキングスタイルに対応するとともに、仕事合間の休息時間も考慮してデザインされています。
昨年に先行発売された〈Swing chair〉とともに、数多くのワークスペースと向き合ってきた中村氏ならではの発想から誕生したシリーズと言えます。
デザイナー:中村拓志氏(NAP建築設計事務所)
ラインナップ:アームチェア(ソリ脚、ムク脚)、ワーキングチェア(キャスター脚)
材料:ナラ(アームチェアの脚部がホワイトビーチの仕様あり / ワーキングチェアの脚部:アルミ鋳物)
バリエーション:ST(スタンダード)、CH(チェリー)、BW(ブラウンウォールナット)
発売日:2022年6月
中村拓志プロフィール
1999年明治大学大学院理工学研究科建築学専攻博士前期課程修了。同年に隈研吾建築都市設計事務所に入所。2002年にNAP建築設計事務所を設立、現在に至る。まちづくりから家具まで、扱う領域は広い。自然現象や人々のふるまい、心の動きに寄りそう「微視的設計」による、「建築・自然・身体」の有機的関係の構築を信条とし、それらが地域の歴史や文化、産業、素材などに基づいた「そこにしかない建築」と協奏することを目指している。
NAP建築設計事務所 Webサイト
www.nakam.info/jp
天童木工 Webサイト
https://www.tendo-mokko.co.jp/