国宝・犬山城と木曽川を望む〈ホテルインディゴ犬山有楽苑〉が、2022年3月にオープンしました。IHGグループ(インターコンチネンタルホテルズグループ)であるホテルインディゴブランドのホテルの開業は、〈ホテルインディゴ箱根強羅〉〈ホテルインディゴ 軽井沢〉に続き、国内で3棟目になります。
今回の〈ホテルインディゴ犬山有楽苑〉では、アイカ工業の塗り壁材「クライマテリア イタリアート」、塩ビフィルム「オルティノ」、メラミン化粧板が採用されました。
どのような経緯で採用に至ったのか、インテリア設計を担当したハーシュ・べドナー・アソシエイツ / HBA 太田 登氏にプロジェクトのコンセプトや背景について、インタビューしました。
「ホテルインディゴブランドは、立地するローカルの特色や歴史的背景をデザインで表現し、ゲストの体験にどう繋げていくかということをコンセプトとしているブランドです。今回は、国宝 犬山城・犬山祭り・鵜飼・有楽苑の国宝茶室〈如庵〉を大きなテーマとしてストーリーをつくり、デザインに落とし込みました」
ゲストがホテルを訪れ、入り口を抜けるとまず犬山城が見えます。
入り口を進むとレセプションがあり、鵜飼を連想させるアートを置いています。鵜飼に使用するかがり火と船をイメージし、鵜匠の半被(はっぴ)や犬山祭りの金襦袢(じゅばん)からインスピレーションを得た帯などの生地がそのまま使用されています。
「メインのラウンジは、女性の着物や浴衣の生地を散りばめて、犬山祭りの賑やかさを連想させるようにしました。カーペットは水面模様のものを選定し、祭りで疲れたときに川に足を入れて休憩するというストーリーをつけて、デザインにふくらみを持たせるよう検討しました。ゲストが入り口から入ったとき、ほかの人の存在を感じさせないように座る位置を下げ、細かい部分にも配慮しながら設計しました」(太田氏談)
「バーは犬山祭りで使用されるランタンの矢倉をつくり、その中にバーカウンターを設置しました。直接的ではなく、間接的に感じられるものをデザインの中に入れ、地元の特色を連想させるようにしています」(太田氏談)
バーの奥にはダイニングがあり、オープンキッチンが隠れています。朝食はオープンキッチンが開き、ビュッフェスタイルになります。扉が閉まっているときは、ホテルオリジナルの家紋、犬山ゆかりの小竹・成田家の家紋が現れます。ホテルの家紋は有楽苑の国宝茶室〈如庵〉の有楽窓、有楽椿、竹をモチーフにデザインされています。
レストランは目の前が水盤に面しており、水面には本物のかがり火が焚かれ、鵜飼の情景を彷彿とさせています。
そのかがり火をイメージして設計された照明器具を設置し、レストランは川茂や木曽川を連想させるようなコンセプトでデザインされています。
壁面にはアイカ工業の塗り壁材「クライマテリア イタリアート」、塩ビフィルム「オルティノ」、腰壁にはメラミン化粧板が使用されました。
「和のイメージを感じさせるようなテイストの色にインディゴブランドを表現するアクセントの差し色を入れていくことを手法にし、色味を決めました。犬山の土地をどうインディゴブランドに合致させ表現するかということがデザイナーの役割であると考えます。壁は不燃が必要なため『オルティノ』を使い、腰壁は傷に強いメラミン化粧板を使い、同柄で合わせています」(太田氏談)
通路には、アイカ工業の塗り壁材「クライマテリア イタリアート」が全面に使用されています。
「当初、パブリックスペースの壁面には漆喰を使おうと考えていましたが、コスト・施工面のメリットから、漆喰の代わりに『クライマテリア イタリアート』を使いました。コテの痕跡が残りすぎるとうるさくなってしまうので、微妙なバランスを現場と調整しました。対照的にレストランの壁面は、アクセントであえてコテのムラを出すようにしています。塗装では表現できないテクスチャーを『クライマテリア イタリアート』で表現できました」(太田氏談)
通路に設えられているアートは、〈ホテルインディゴ犬山有楽苑〉が建つ前のホテルで使用されていた陶板の壁画を保存・再生するかたちで、分解してパーツを組み替えてデザインした新たなアートワークです。
「ジョリパット 校倉特殊仕上げ」を使用して川の流れをイメージし、鵜飼が表現されています。
通路を過ぎると温泉があり、暖簾は温泉マークと犬山市の紋章を組み合わせたデザインになっています。
下足入れには男女別のアクセントカラーが入っていて、メラミン化粧板「京かたがみ 変わり矢絣柄」が使用されました。
「グラフィックのようなパターンのあるデザインを検討していたので、この柄を選びました。塗装だと機能性が劣り、シートだとここまでの装飾性の高いデザインができるものはなかなかありません。デザイン性・機能性の両方が優れているので、メラミン化粧板を使用しました」と太田氏は語ります。
太田氏に今回のプロジェクトに限らず、ホテルをデザインするうえで、どのようなことを意識されているかを聞きました。
「ホテルのデザインは、その立地の特色・ローカル色を出すことが基本だと思っています。どこのホテルでもその土地に合ったものをつくることに気を付けています。そのとき装飾的になってしまいがちですが、ストーリーで裏打ちされていることが前提にあれば、スタイル的な装飾にはなりません。全部をデコラティブにするのではなく、構成はシンプルにまとめて、生地やカーペット、照明器具やアートなどでニュアンス・アクセントを出そうとしています」
地域の伝統を空間デザインで表現するために、ストーリーを掘り下げることが欠かせないという太田氏。
意匠性と機能性を両立したアイカ工業の製品が、適材適所で使われていることも見逃せません。
〈ホテルインディゴ犬山有楽苑〉
設計:株式会社観光企画設計社
1階共用部 デザイン監修:ハーシュ べドナー アソシエイツ / HBA
施工:ホテルインディゴ犬山有楽苑新築工事共同企業体(大成建設・矢作建設工業共同企業体)
今回使用されたアイカ工業のプロダクト詳細はこちら
TECTURE「ホテルインディゴ犬山有楽苑」
https://www.tecture.jp/projects/2503/posts
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