解体された東急百貨店東横店のコンクリートからプロダクトをつくり、渋谷の「建築土産」[*1]として再生するプロジェクトのクラウドファンディングが、2024年5月23日まで行われています。
募集期間中に集まった支援金の金額にかかわらず、プロジェクトが実行されるオールイン方式です。
東急百貨店東横店の歴史は古く、1934年11月に建築家の渡辺 仁(1887-1973)の設計で東急百貨店東横店東館が開業。戦後になり、建築家の坂倉準三(1901-1969)が起案した「渋谷総合計画」に基づいて増改築が何度か行われ、東館のほか、西館(旧東急会館)・南館(旧国鉄渋谷駅西口ビル)の3館が1970年までに整備され、渋谷のランドマークとして、巨大ターミナル駅を利用する人々、沿線住民に長年にわたって愛されてきました。
建物の老朽化と渋谷駅を中心とした再開発のため、東横店は惜しまれつつ2020年1月31日をもって閉館。跡地では現在、渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)建設工事が進行中です。
今回のクラウドファンディング(クラファン)を実施しているのは、渋谷スクランブルスクエアにある共創施設・SHIBUYA QWS(渋⾕キューズ)の活動から立ち上げられ、同所に拠点を構える渋谷土産プロジェクト(代表:坪沼敬広)[*1]。
病のために1969年に急逝した坂倉が晩年に手がけ、旧国鉄渋谷駅西口ビルとして1970年に竣工したのちに東急百貨店東横店南館となった建物を解体した際に出たコンクリートを素材とし、渋谷の「建築土産」としてのプロダクト(デスクオーガナイザー)にアップサイクル、東横店の記憶を受け継ぐことを試みます。
今回のアップサイクルプロジェクトに際し、渋谷土産プロジェクトでは、2021年に東急建設に対して「東横店のコンクリートを使った建築土産」の企画を提案。2022年には南館の解体コンクリートを用いた実証実験も行い、テストを重ねた末に、今回製作するプロダクトのベースとなるテクスチャに辿り着いたとのこと(開発の経緯はクラファンページを参照)。
クラファン終了後に製作されるのは、7種類の小物ケースのセット(デスクオーガナイザー)。ひとつひとつのケースは、南館の7つのパターンのファサードの縮尺が反映されており、全種類をセットで並べると、在りし日の渋谷の景色が浮かび上がるというコンセプトになっています。
支援に対するリターンには、〈ma_desk organizer〉を手づくりするワークショップの参加券(2024年12月実施予定)などが各種用意されています。詳細はクラファン実施ページを参照してください。問い合わせは渋谷土産プロジェクトまで。
方式:オールイン / All-in
目標金額:1,000,000円
終了日時:2024年5月23日(木)23:59:59
企画立案・開発:渋谷土産プロジェクト[*2]
・クリエイティブディレクション:坪沼敬広(コンセプトデザイナー、渋谷土産プロジェクト代表)
・プロダクトデザイン:中村彩乃(建築家、茶人)
・フォト:西 優紀美(写真家)
・ロゴデザイン:相原 匠(SOW DESIGN & PHOTOGRAPHY)
・パッケージデザイン:遠藤貴絵(design-farm)
材料提供・開発支援:東急建設
プロジェクト支援:渋谷キューズ
クラファン詳細・支援募集ページ
https://camp-fire.jp/projects/view/747132
*1.「渋谷土産」および「建築土産」
「渋谷土産」とは、これまで見落とされてきた渋谷の魅力をお土産としてデザインすることで、新しい地域ブランディングを実現するプロジェクト。「建築土産」はそのラインナップのひとつで、渋谷のまちづくりの原点を次の世代に伝えるプロダクトブランド。再開発の際に生じる廃材を活用して、建築時の社会背景や当時の工法、建築家の思いを取り入れた製品を通じて、”建築が循環する街”という渋谷の新しい”顔”を生み出している。
詳細は渋谷QWSウェブサイトを参照。
https://shibuya-qws.com/project/shibuya-miyage
*2. 渋谷土産プロジェクト メンバー:坪沼敬広(コンセプトデザイナー)、中村彩乃(建築家、茶人)
※本稿の画像提供(東急百貨店東横店外観写真を除く):渋谷土産プロジェクト
※参照元:東急「渋谷文化プロジェクト」ウェブサイト>東横デパートとまちの歴史(1885-1964)ページ
https://www.shibuyabunka.com/noend/past.html