1950年代から60年代にかけて日本を含めた世界的に巻き起こった建築ムーブメント「ブルータリズム建築」。イタリアにおける事例を広く集めた書籍がグラフィック社から刊行されています。
個人邸宅から教会、そして墓地まで、シチリア島やサルディーニャ島を含めたイタリア全土から、140点以上のコンクリート建造物をピックアップしているのが特徴です。
註.以下に掲載する中面・建築物の呼称は、本書原文ママとする
素材感や構造要素を優先するミニマリズムの美学を有するブルータリズムは、イタリアにおいて独自の進化を遂げたといえます。よく知られたイタリアの風景として、北部のアルプスや豊かな農産物を育む美しい自然があり、そこに絵画のような街並みが形成されている一方で、イタリアの主に都市部では、後背地(ヒンターランド)と呼ばれる、20世紀に集中的に整備され工場が点在していたエリアが存在しています。本書の著者2氏は、その近隣で生まれ育ち、経年とともに荒れ果て、廃墟と化していく工業用地の巨大建造物の姿に魅了され、その姿を写真に収めてきました。
“美しい”あるいは“醜い”といった二値分類にあてはまらない建造物であるブルータリズム建築(※本書では広義にコンクリート打ち放しの建造物を含む)。「それぞれが、ポストカードなどに印刷されているものとは異なる、イタリアの姿を表現している。鉄筋コンクリートによって具現化されたこれらの建造物は、勇気と、ちょっとした狂気と、ユートピアを追い求める気持ちの産物なのだ。」と彼らは語っています。
本書では、構造はまったく異なるものの、視覚的特徴(時には触覚的要素)が関連しているものもあったため、イタリア全土に点在するブルータリズム建築物を探索。その歴史、手がけた建築家や施工時期についての情報をできる限り調査し、まとめています。
著者プロフィール
ロベルト・コンテ
本書 / 編集・写真
1980年生まれ。2006年より写真を撮り始める。現在、建築設計事務所、アーティスト、デザイナーと連携し、アバンギャルド様式、戦後のモダニズム、ブルータリズム、現代建築と、20世紀の建築物の記録に取り組んでいる
2019年に『ソビエトアジアの建築物』を共同出版(グラフィック社からは和訳本が2022年4月刊)ステファノ・ペレゴ
本書 / 編集・写真
1984年生まれ。2006年より廃墟となったミラノの産業用地の写真を撮り始め、以後も継続してヨーロッパ中の廃墟を何百カ所と記録している。旧ユーゴスラビアを訪れたことをきっかけに、近年は旧社会主義圏のモダニズムおよびブルータリズム建築の撮影に専念している2019年に『ソビエトアジアの建築物』を共同出版(同上)
編集・写真:ロベルト・コンテ、ステファノ・ペレゴ
翻訳:石田亜矢子
判型:A5変形
仕様:並製
総頁数:200ページ
ISBN:978-4-7661-3895-5
定価:2,750円(税込)
発売日:2024年7月
版元:グラフィック社