『家というのは、結局のところ1つの窓ではないか』。建築家・隈 研吾氏が2008年に「窓の家」について寄せたこの言葉は、2007年にMUJI HOUSEが発表したこの商品の本質を端的に示しています。「木の家」が仕切りのない大空間による開放的な「器」を提示したのに対し、続く第2の商品として開発された「窓の家」が問いかけたのは、「窓」そのものの役割を見つめ直すことでした。
採光、通風、眺望。これまで1つの窓がすべてを担ってきた発想を外し、それぞれの役割を持つ窓を「スペシャリスト」として配置する。この発想がそのまま、家のかたちになっています。
「窓の家」は、一見すると、シンプルな白い家型の建築に四角い開口が配された簡素な意匠ですが、そこには「窓を主役にする」ための緻密な設計と、徹底的な美意識が隠されています。仕切りのない開放的な一室空間と、自由な開口部の配置をどのように両立させたのでしょうか。『TECTURE MAG』が、建築的側面からMUJI HOUSE「窓の家」について機能と意匠の両面を読み解きます。

「窓の家」の最も特徴的な設計は、「ピクチャーウィンドウ」と呼ばれる大きな一枚ガラスの嵌め殺し窓です。
通常の住宅の窓には、ガラスを支えるサッシや木の窓枠など、壁と窓の境界を納めるための見切り材が何重にも重なり、それが視覚的なノイズとなっています。しかし、「窓の家」では、室内側から見たときに窓枠が見えなくなるよう、窓の上と左右の枠をなくし、壁の仕上げを窓の内側まで綺麗に巻き込んでつなげています。
小窓の下枠にはメンテナンスと耐久性の観点から厚さ3mmのアルミ製の板材が使われていますが、それ以外の窓は、細いフレームとガラス以外には何もなく、あたかも壁に大きな穴が開いたかのように、外の風景をそのまま室内に切り取ります。窓枠という線が消え、壁に直接四角い穴が開いたかのような収まりにすることで、窓の向こうに広がる景色や空の動きが、まさに一枚の絵画のように際立ちます。

このピクチャーウィンドウには通風の機能がありません。開け閉めのためのハンドルは、外の景色を鑑賞するうえで余計な存在になるからです。景色を楽しむ、「眺望」という役割に徹することで、窓からの眺めを絵画のように美しく切り取ることを可能にしています。
では、通風の機能はどうするのか。「窓の家」では、吹き抜けに面した窓、天井に届く高さの窓、床の位置の窓と、高さに変化をつけて開く窓を計画的に配置することで、気流や清々しさを肌で感じられる通風を実現しています。MUJI HOUSEでは、とくに通風計画が必要な場合は、季節ごと・地域ごとにデータ化されている「風向きチャート(風配図)」を参考に、通風窓の配置を決めて通風のシミュレーションも行います。窓の高さを自由に設けても家全体のデザインが破綻しない「窓の家」のかたちは、こうした通風計画にも役立っています。

また、役割を分けた窓の配置は、断熱の観点でも合理的に働きます。冬に陽が当たらない場所や夏の西陽が強い場所には、大きな窓を設けず、逆に冬場に陽が当たる場所には、手の届かない高い位置にも嵌め殺し窓を配置して熱を取り込む。窓は家の中で最も熱が出入りしやすい部位のため、MUJI HOUSEは、この課題に家のかたちと性能で向き合っています。

家の断熱・省エネ性能のものさしには、「UA値(外皮平均熱貫流率)」「BEI値」の2つの指標があります。
UA値は、室内外の温度差が1℃のとき、外皮(床・壁・天井・窓などの開口部)1㎡あたりどのくらいの熱が逃げるのかを示す数値です。この数値が小さいほど、断熱性能が高いことを意味します。一方で、BEI値は、冷暖房・照明・給湯・換気などの設備機器の使用エネルギー削減度合いを数値化したものです。基準となる家と比べて、エネルギー消費をどれだけ削減できているかを算出した数値が、1より小さいほど省エネ性能が高いことを示します。

「窓の家」は、トリプルガラスとアルミ・樹脂の組み合わせで高い断熱性能と耐久性を持つハイブリッドサッシを採用しています。外の景色を邪魔しないようにサッシフレームを極力目立たないようにおさめています。また、壁には充填断熱と外張り断熱を組み合わせたダブル断熱が採用されています。その上で、「窓の家」は、窓の大きさや位置を、敷地の状況や建築プランに合わせて最適化できるため、MUJI HOUSEのシリーズの中でも、ひときわ高い断熱性能(UA値平均0.37)となっています。

「窓の家」高断熱仕様の性能値と基準値
さらに、地球温暖化の危機に直面している現代社会において、家として目指すべきあり方として、「いかに少ないエネルギーで快適な温度環境をつくることができるか」を追求した結果、2024年に「窓の家・高断熱仕様」が登場しました。
「窓の家・高断熱仕様」は、「窓の家」の外観デザインはそのままに、床下の基礎断熱立ち上がりに100mm、天井断熱に180mm、外壁の外張りに60mmの発泡樹脂系断熱材と壁体内の高性能グラスウールのダブル断熱が実現されています。また、窓にはトリプルガラスとアルゴンガス、樹脂サッシという非常に断熱性能の高い仕様を組み合わせることで、断熱性能等級の最高等級7(UA値0.23)を達成。UA値0.6程度の一般住宅と比べて年間冷暖房費を約45%削減できる見込みとのことです。
MUJI HOUSEが目指しているのは、太陽光発電や蓄電池などの設備に頼るのではなく、家そのものの断熱性能を最大限に高めることで、普通の設備でも十分な省エネ性能を発揮できる家。大きな窓と高い断熱性能は、設計の工夫によって矛盾しないものになっています。
「窓の家」の室内には、凛とした空気感があります。白い壁と窓で構成されたシンプルな空間ですが、その清々しさは大まかな構成だけから生まれるものではありません。MUJI HOUSEが「居心地の良さ」のために積み重ねてきた、解説されなければ気づかないほど繊細なディテールが、空間を支えています。

例えば、床と壁の境目に設けられる巾木は、「窓の家」では木製の巾木を壁と全く同じ白色に塗装されています。白い壁と大きな窓で構成された空間に余分な色みが入り込まないようにするため、塗装品番も合わせた「白」が採用されています。また、ドア類は装飾のないソリッドな形状で、レバーハンドルや金物類はアルミのバーを曲げてアルマイト加工が施されたオリジナル品です。

巾木の色、金物のビス、窓枠など、「言われなければ気づかない」ディテールの積み重ね。ディテールの質を上げることで、「窓の家」の簡素で清々しい空気感が生まれています。これは、MUJI HOUSEが「感じ良いくらし」を支えるために、家のひとつひとつの部材の選定やデザインに静かにこだわり続けてきた結果です。「木の家」から「窓の家」へ。MUJI HOUSEの問いは、家のかたちごとに変わりながら、「永く使える、変えられる」という思想に向かって積み上げられています。

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