COMPETITION & EVENT

真庭市蒜山ミュージアム開館記念

「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」

岡山県北部の蒜山高原に今年7月に開館した〈真庭市蒜山ミュージアム〉にて、「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」が10月12日(火)まで開催されています[*]
*当初の予定では10月10日までのところ、12日まで会期延長

CLT PARK HARUMI「CLT晴海プロジェクト」

2019-2020年 東京・晴海サイト建設当時の〈CLT HARUMI PARK〉/ 真庭市GREENable記者会見資料より

〈真庭市蒜山ミュージアム〉の建物としての前身は、集成木材「CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)の魅力を伝える「CLT 晴海プロジェクト」において、真庭市産のスギ材から加工したCLTを主に用いて、建築家の隈研吾氏がデザイン監修を担当し、2019年12月から約1年間の期間限定で東京・晴海に建設された屋内展示棟です(上の画・左奥の建物)。

展示棟の向かいに建っていた、同じく隈氏が手がけ、ヒノキ材のCLTのファサードをもつパビリオン〈CLT PARK HARUMI〉のほうが、その軽快な外観からよく知られていることでしょう。

GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)

蒜山高原に移築されたCLTパビリオン「風の葉」

この2つの建物は、プロジェクト企画当初から、展示期間終了後は解体・廃棄するのではなく、真庭市の国立公園 蒜山(ひるぜん)に移築、言わば”里帰り”することが決まっていました。
真庭市は、パートナーに迎えた民間企業と協働して、蒜山高原の計画地に観光文化発信拠点「GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)」を整備。今年7月15日に施設のグランドオープンを迎えています。

GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)

画面右:CLTパビリオン「風の葉」/ 画面左:看板の背後にある建物が真庭市蒜山ミュージアム

市民公募で「風の葉」という愛称がついたCLTパビリオンは、サステナブルと自然共生をテーマに掲げる「GREENable HIRUZEN」を象徴する施設となり、L字型の旧屋内展示棟は、ミュージアム、ビジターセンター・ショップが入り、恒久建築物として活用されます。
ミュージアムでは今後、隈氏の建築思想を伝える企画展や、現代アートの展示などを開催する計画とのこと(オープニング式典での太田 昇真庭市長談)。

GREENable HIRUZEN 施設配置図

「GREENable HIRUZEN 」施設配置図
①CLTパビリオン「風の葉」②ミュージアム ③ビジターセンター・ショップ ④サイクリングセンター

以下は、2021年7月15日に開催された〈GREENable HIRUZEN〉グランドオープン記念式典での隈研吾氏コメントより、〈真庭市蒜山ミュージアム〉の設計・デザインのポイントの要約です(編集部作成、参照元:広報資料、GREENable HIRUZEN 公式YouTubeチャンネル7月16日公開「GREENable HIRUZEN 施設リポート」)。

「建物の構造など主要部分では、スギ材のCLTを用いた。日本の伝統建築でいちばんの見せ場となる、外側の軒の部分では、幅120mm、厚み30mmのラミナ(Laminar)をふんだんに使い、断面を並べて見せている。ラミナとは、集成材で挽き板ないし小角材をつくる際の基本となるピースで、ミュージアムの向かいに経っているパビリオン(風の葉)も、突き詰めれば同じ12センチ幅のピースでできている。このピース1つひとつを(編集部註.茅葺屋根の軒先き断面のようにしながら)現代ふうにデザインした。このような使い方はおそらく他に例がなく、新しい造形表現になったと考えている。」

GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)

晴海から移築された展示棟 / 画面向かって左側が真庭市蒜山ミュージアム(ガラスファサードに写り込んでいる建物がCLTパビリオン「風の葉」)

新生〈真庭市蒜山ミュージアム〉のこけら落としとなる企画展「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」は、隈研吾建築都市設計事務所の協力のもと、東京オリンピック・パラリンピック「東京2020」のメイン会場となった〈国立競技場〉をはじめ、隈氏がこれまでに設計やデザイン監修などで携わった、さまざまな建築の模型を中心に構成されます。
関連イベントとして、学芸員によるギャラリートークも会期中に開催されます(第1回:8月21日[終了]、第2回:9月12日[日]11:00-11:30予定)。

真庭市蒜山ミュージアム開館記念展「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」会場風景

「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」会場風景

真庭市蒜山ミュージアム開館記念展「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」会場風景

「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」会場風景

展覧会コンセプト
建築家・隈研吾は「大きなコンクリートのボリュームから小さな建築へ」と提唱し、以前からそのような「分散」と「自然」の新しい時代を予見する建築デザインをしてきました。それは、人々とその活動を集約し囲い込む近代的なビル(大きなハコ)と、その集合からなる都市(もっと大きなハコ)に象徴される20世紀的な建築・都市計画に対して、「ハコからの解放」「ハコを出る行動」を促す活動を行ってきたとも言えます。
コロナ禍により、大都市集約型の社会の限界、危うさが明らかになり、世界が新しい時代に足を踏み入れた今、隈研吾の提唱と活動の意義は、より意識的に捉えられるようになるでしょう。

真庭市蒜山ミュージアム開館記念展「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」会場風景

会場風景〈国立競技場〉の展示

隈研吾設計による〈真庭市蒜山ミュージアム〉のオープニングを飾る本展は、このような「ハコからの解放」のために実際の建築設計で用いられた手法や発想を、難しい数学・幾何学や建築理論ではなく、隈氏も実際の設計活動で使っているという「たし算・ひき算・かけ算・わり算」になぞらえて分類し、建築模型を中心に紹介するものです。

従前の建築に、要素を少し(たし算で)加えることで人々の交流が活発化したり、建物の一部を軽量化(引き算)することで、物理的にも心理的にも風通しがよくなるといった実例を、模型や写真などを使ってわかりやすく展示。建築家・隈研吾の創作や社会に対する思想に迫ります。(展覧会フライヤーより / カッコ内の補足は編集部にて)

真庭市蒜山ミュージアム開館記念展「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」

*会期延長前のフライヤー(真庭市ウェブサイトにて、10月12日まで延長が発表されている)

「隈研吾展 ハコからの解放 -たし算,ひき算,かけ算,わり算-」

会期:2021年7月15日(木)〜10月12日(火)[*]
*開始当初の予定では10月10日までのところ、12日まで会期延長(真庭市ウェブサイトにて告知)
開館時間:9:00-17:00(入館は16:45まで)
休館日:毎週水曜
会場:真庭市蒜山ミュージアム
所在地:真庭市蒜山上福田1205-220 GREENable HIRUZEN内(Google Map
入館料:一般(高校生以上)300円、中学生以下無料
※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大防止対策を実施

主催:真庭市
協賛:真庭市教育委員会、山陽新聞社、読売新聞岡山支局、朝日新聞岡山総局、毎日新聞岡山支局、産経新聞社、RSK山陽放送、OHK岡山放送、TSCテレビせとうち、RNC西日本放送、KSB瀬戸内海放送、真庭いきいきテレビ、FM岡山
展覧会詳細
https://greenable-hiruzen.co.jp/data/57/museum_detail/

GREENable HIRUZEN 公式ウェブサイト
https://greenable-hiruzen.co.jp/

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