三井不動産を代表企業とする8社(鹿島建設、京浜急行電鉄、第一生命保険、竹中工務店、ディー・エヌ・エー、東急、星野リゾート)が推進中の「横浜市旧市庁舎街区活用事業」が、神奈川県横浜市にて着工。建設される新街区における主要施設の概要が改めて発表されました。
本プロジェクトは、横浜市の開港100周年記念事業の一環として、大規模なミクスドユース(mixed-use)として計画されています。
新街区の計画地は、JR根岸線関内駅と横浜市営地下鉄ブルーライン関内駅の南東側の駅前で、横浜高速鉄道みなとみらい線・日本大通り駅からもアクセスできる立地です。さらに計画地の隣には横浜スタジアムがあります。
同スタジアムと横浜公園方面とはデッキ(横浜市による整備事業、施設の供用開始に合わせて開通予定)でつながり、各駅との回遊性を高める計画も盛り込まれています。
「横浜市旧市庁舎街区活用事業」計画概要 ※2022年7月13日発表時点
計画地:神奈川県横浜市中区港町1丁目1番1ほか
敷地面積:約16,500m²
総延床面積:約128,500m²各棟主用途:
・タワー棟:オフィス・大学、新産業創造拠点、エデュテインメント施設、商業
・旧市庁舎行政棟:ホテル、商業
・ライブビューイングアリーナ:ライブビューイング施設、商業
・くすのきテラス :商業
・みなとテラス:商業
・ビジターフロント:観光案内所
設計・施工・デザイン
・設計・施工:鹿島建設
・設計・施工(予定者):竹中工務店
・ランドスケープデザイン:ランドスケープ・プラス
・商環境デザイン:窪田建築都市研究所スケジュール
・2022年7月:新築工事着工
・2025年12月 :竣工・供用開始(予定)
・2026年春:グランドオープン(予定)
開発テーマは「新旧融合」。なかでも注目は、建築家の村野藤吾(1891-1984)が設計した、8階建ての旧市庁舎行政棟(1959年竣工)の一部を残し、星野リゾートグループが運営するホテルと、商業施設が内包される大規模改修です。
計画では、格子状フレームとランダムに配された暗褐色タイルとバルコニーといった、村野建築らしい外観の意匠を引き継いで建物を再生し、景観ともに未来へと継承することを目指しています。
再生される旧市庁舎には、〈OMO7(おもせぶん)横浜 by 星野リゾート〉がテナントとして入ります。
「OMO(おも)by 星野リゾート」は、星野リゾートの都市ホテルブランドで、コンセプトは「寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市ホテル」。これまで、旭川、小樽、札幌、東京、金沢、京都、大阪、那覇の8都市にOMO3・OMO5・OMO7を出店しており、横浜にはこれが初進出となります。
客室数は約280室。カフェ・レストランのほか、横浜観光のためのパブリックスペース「OMOベース」なども備えたフルサービスホテルとして、2026年春のグランドオープンにあわせて開業する予定です。
〈OMO7横浜 by 星野リゾート〉開業に関するプレスリリース(2022年07月12日星野リゾート)
https://www.hoshinoresorts.com/information/release/2022/07/208405.html
開発エリアの中心には、約3,000m²を誇るアリーナが建設されます。
大迫力のスクリーンと高性能の音響設備を擁し、スポーツ・飲食・大型スクリーンによるライブ配信を組み合わせた常設型ライブビューイングアリーナとしては、日本初とのこと(2022年6月時点、丹青社調べ)。
さまざまなスポーツのライブビューイングはもちろんのこと、音楽や食事も一緒に楽しめる、新たなエンターテインメント空間となります。
また、新街区には、横浜市最大級のビジネスイノベーションの場も開設されます。
企業が注目するアイデアをさらに具体化するためのコワーキングルーム、イベントスペース、ミーティングルーム、小規模オフィスなど、エデュテインメント施設を整備し、横浜における新産業の創造を支援します。
施設の開設にあたり、三井不動産と一般社団法人Stellar Science Foundation(ステラ・サイエンス・ファウンデーション / 代表理事:武部貴則)が連携。国際的な活躍が見込まれる次世代の研究者の発掘・支援活動を行い、新産業創造のエコシステム構築を目指すとのこと。
有望な研究者に対する論文・ビジネス支援プログラムの実施や、異分野の研究者同士の交流イベント、投資家・産業界とのネットワークづくりの機会提供を行い、超早期ステージからの研究支援体制を整え、研究者のインベンション活性化を図ります。
タワー棟の11階から最上階の33階のフロアには、大学とオフィスが入ります。
オフィス基準階は、1フロア2,000m²超、天井高2,800mm、奥行き最大約18mの整形無柱空間を実現。また、日射を考慮した外装の開口設定、Low-E複層ガラスの全面的採用、熱回収システムの導入などによる熱負荷の軽減に加え、個別空冷ヒートポンプなどの高効率設備の導入により、ビル全体で省エネルギーを実現させます。
街区全体としては「CASBEE横浜Aランク」、タワー棟では「DBJ Green Building認証」、オフィス部分については「ZEB Oriented」の取得を予定。また、オフィスワーカーのウェルビーイングを実現する施設計画をふまえ「CASBEE ウェルネスオフィス」についても取得予定とのこと。
旧市庁舎行政棟の既存躯体を保存・活用することで、建て替えと比較した場合に、CO2の排出量を約54%削減できる見込みです(三井不動産と竹中工務店による試算。既存躯体を再利用する場合と、躯体・仕上げとも解体・新築の場合との比較)。
プロジェクトと連動して、関内エリアを起点とした街歩きや観光を楽しめる、地域内交通の導入が検討されています。
2020年以降、計画地の周辺エリアでは、グリーンスローモビリティ[*]で周遊する走行実証実験を実施。交通量の多い大通りでの低速走行や、狭い道路での走行で安全性を確認し、乗客の乗降による交通負荷を検証しており、今後はルートなどが検討される予定です。
*.グリーンスローモビリティ:国土交通省が推進する、時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス(車両も含めた総称)。導入により、地域が抱えるさまざまな交通の課題の解決や、低炭素型交通の確立が期待されている
三井不動産プレスリリース(2022年7月12日)
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2022/0712/
※本稿は、2022年7月12日に発表された関係各社のプレスリリースをもとに作成。今後、計画内容が変更される場合あり