ワイ・エス・エムがこれまでにコラボレーションしてきたデザイナーら7組との特注照明を展示。照明としての機能とプロダクトとのしての美しさを提示するため、平日は16時から開場する(土日曜・祝日は12時から開場)。
板⾦加⼯の技術を⽣かした、特注照明の⼀貫⽣産を得意としている、ワイ・エス・エム(埼玉県八潮市)による企画展「BEHIND THE LIGHT(ビハインドザライト)」が、東京・表参道のギャラリースペース・TIERS GALLERY by arakawagrip(ティアーズギャラリーバイアラカワグリップ)にて、9⽉23⽇から10日間にわたり開催されます。ワイ・エス・エムの創業30周年を記念した展覧会です。
本展では、展覧会ディレクターに、SALTCO(ソルトコ)の福嶋賢⼆、akii(アキ)の岩松直明と前⽥崇彰の3氏を迎え、3氏を含めた気鋭のデザイナーら7組が出展。今春の「ミラノデザインウィーク」で発表された作品を含め、14の照明が展示されます。
参加デザイナー:AATISMO(アアティズモ)、akii(岩松直明、前田崇彰)、吉添裕人、JUNICHIRO YOKOTA STUDIO、福嶋賢二(SALTCO)、LIGHT&DISHES(谷田宏江)、大口進也
作品〈Aether〉
Photography: Shinya Sato
Aether (エーテル)とは、近代科学以前に光を伝達する媒質としてくまなく空間を満たしていると考えられていた物質である。その媒質が放つかのような、全てを柔らかく包み込む様な光をつくり出すために、吹きガラスでできたシェードの中に半透明の膜を浮かべた。上にある光源から降り注ぐ光を受け、拡散させることで、空間を光で満たす。この照明作品自体がエーテルという1つの元素を体現している。
作品〈Air〉
風すなわち空気の動きは、人が最も身近に感じられる自然エネルギーの1つ。地球上にはさまざまな物質や現象からエネルギーを得て活動する生命が存在するが、〈Air〉はその中の1つとして、風からエネルギーを得る新しい発光生物となるようにつくられたた。
折り紙構造による、薄い金属製の羽が風を受けて揺れることにより、内蔵された圧電素子が発電し、LEDがゆっくりと光り出す。その光は、周囲の風が持つエネルギーの移ろいを反映し、蛍のように繊細に明滅して、見る者に生命の存在を感じさせる。
作品〈Water〉
満月の晩、月の発する光は海や湖の水面、または器に入った水に映って煌々と輝き、まるで水自体がその内側から光を放つかのよう。 蛍光灯に使われていた廃ガラスのかけらを器に入れて炉で溶かすと、ガラスは器に入れられた水のようにその形を変える。生まれ変わったガラスは、中に小さな気泡を閉じ込め、表面には破片の形の名残を残し、月明かりに照らされた水のような静かな光を放つ。
AATISMO プロフィール
中森⼤樹(⼯業デザイナー)、海⽼塚啓太(建築家・コンセプトデザイナー)、桝永絵理⼦(建築家)の3⼈によるデザインチーム。東京を拠点に活動する。アートとテクノロジー、原初と未来、野⽣の思考と科学的思考の融合をテーマとし、プロダクトや建築、アートなど分野を横断した活動を⾏う。
主な受賞に、LEXUS DESIGN AWARD 2015 Prototype Winner, KOKUYO DESIGN AWARD 2016 グランプリ, iF Design Award 2018 などがある。
https://aatismo.com/
作品〈NIGHT BOOK〉
本のように引き出すだけで本の隙間からやさしい光が広がるLED照明。
ワイ・エス・エムが作り出す上質な明かりを「一冊の照明」というコンセプトに込め、まるで物語の始まりを予感させる詩的な体験をデザインした。本棚や積み重ねた本の間に置くことで、空間を詩的に演出する。
作品〈Lillar〉
私たちの手元に届く夜の自然光は、太陽という一つの光源が月に反射し、地球上のオブジェクトにぶつかり、透過、反射、回折し、さまざまな経路を経て、複雑かつシンプルな光として立ち上がる。〈Lillar〉は、自然の中で発生するシンプルかつ複雑な光を立ち上がらせる照明。1灯の光源が3枚の金属板の内側と外側にも反射、回折するシンプルな構成で、複雑な光をつくり出す。
作品〈LIGHT SHELF〉
1枚の金属の板を曲げただけで作られた照明。板が重なり合う8mmの隙間に仕込まれたLEDが発する光は、筐体に反射し、空間を美しく照らす。極限まで無駄を削ぎ落としたプロダクトは、製品というより素材に近い存在に。DIYのための木材のように、素材としての光の箱は、インテリアのテイストやスタイル、時代をも超えて調和し、暮らしの中に光を届ける。
akii(岩松直明、前田崇彰)プロフィール
岩松直明と前⽥崇彰によるデザインユニット。印象的なコンセプトメイキングから量産製品のプロダクトデザインまで、akii らしい視点とアイデアで、今までにない価値を⽣み出す。iF Design Award、JIDA Museum Selectionなど受賞歴多数。
https://www.instagram.com/akii_design/
作品〈Orbit〉
「太陽」の光をインスピレーションに制作されたユニットシステム照明。廃ブラウン管と廃蛍光灯100%リサイクルガラスで作られたガラスシェードの特殊な形状により、外見はシンプルな円柱型ながら、特徴的な光の変化をもたらす。内部の構造は、凸レンズ、凹レンズにヒントを得た断面形状を有し、拡大・縮小された像により、内部の光がシームレスに変化していく。シェードを中心に周回しながら刻々と変化する様(さま)は、太陽を中心として周回する地球と私たちの視点を体現している。
吉添裕人(よしぞえ ひろと)プロフィール
空間ディレクター/デザイナー。
武蔵野美術⼤学卒業。空間デザイン会社勤務を経て、独⽴後は都市開発や商業環境に特化した空間デザイン業務に従事。自然風景や現象などのプリミティブな要素からインスピレーションを受け制作を行う。「LEXUS DESIGN AWARD 2017」でグランプリを獲得した作品〈PIXEL〉、Ambientec(アンビエンテック)のコードレスLEDランプ〈hymn(ヒム)〉(2021年)などので数多くの賞を受賞。これまでに、⽇本、イタリア、アメリカ、ブラジル、中国など各国で作品を発表。東京を拠点に、空間領域から拡がる幅広い分野で活動している。
京都芸術⼤学⾮常勤講師。
作品〈Spectrum〉
Spectrum(スペクトラム)=分光をテーマにした照明。利便性や実用性だけではなく、純粋におもしろいと感じられることを目指してデザインされた照明。
作品〈Light of Distance〉
Distance(ディスタンス)=距離をテーマにした照明。灯り(あかり)本来の繊細さや美しさを新たなかたちで表現した。対象が上下することで、“灯り”の強弱や位置が変化する。照射物であるパネルは、透明素材でつくられており、透明な部分はそのまま“灯り”が通り抜ける。表面処理により、半透明になった部分のみが“灯り”を拾い、光を拡散する。
JUNICHIRO YOKOTA STUDIO プロフィール
オランダのDesign Academy Eindhovenに留学後、デザインオフィス、⼤⼿電機メーカー勤務を経て、JUNICHIRO YOKOTA STUDIOを設⽴。⽇⽤品から電化製品までのプロダクトを中⼼に戦略開発からアウトプットまで⼀貫したデザイン活動を⾏っている。クライアントが抱えている課題を解決するだけでなく、固定概念にとらわれない視点や⼿法を積極的に取り⼊れる事で新たな発⾒や価値の創出を⽇々探求しながら活動している。
https://junichiroyokota.com/
作品〈and-on〉
埼玉県の伝統工芸「小川和紙」を使った伝統的な行灯の雰囲気を備えたモダンな照明。通常竹や木材で制作されている枠に、真鍮を使うことでより現代のライフスタイルにあったデザインに落としこんだ。丸でも四角でもなく、厚みもなく、スタンド照明なのに脚もない。表も裏もなく、縦や横もない。捉えどころのないフォルムが特徴で、両面ともに発光する。
作品〈HOOP〉
シェードからスタンドの脚に流れる有機的なラインが特徴的な照明。LED照明でしかできない薄さと繊細さを追求した。
リビングやベッドサイドの間接照明として、上質なホテル空間のような、柔らかで心地よい空間を生み出す。
作品〈HORIZON〉
地平線に沈む太陽からインスピレーションを受けてデザインした照明。導光板というアクリルに特殊な加工を施すことで、内部で光が拡散され。柔らかで印象的な光の世界を演出する。
福嶋賢二(SALTCO)
⼤阪芸術⼤学デザイン学科卒業後スウェーデンHDK⼤学にてデザインを学ぶ。IDKデザイン研究所に勤務を経て、2018年にソルトコを設⽴。「企業の強みを引き出す」というコンセプトのもと、さまざまなライフスタイルにあわせたブランドづくりから、商品開発、グラフィックデザイン、ウェブディレクションのほか、展⽰会の会場構成から空間、施設、ショップのディレクションまで、総合的なアプローチのデザインを国内外で⾏っている。バイヤーやスウェーデン在住の海外コミュニケーターなど多彩なパートナーと共に、流通を⾒据えた商品開発や海外展開を数多く⼿がけ、プロジェクトに応じたフレキシブルなディレクションを得意とする。
http://www.saltco.jp/
作品〈MOON DROP〉
雲の切れ間から差し込む月明かりのようなやわらかい光を放つペンダントライト。
シェード部分は、富山のガラス作家による吹きガラス。膠を塗布して出来上がるガラスの個性あるテクスチャと、温かみがあり、鮮やかさを引き立たせるLEDの光源が、食空間や住空間を美しく豊かな時間へ導く。
LIGHT&DISHES(谷田宏江)プロフィール
照明メーカー勤務後、2014年独⽴。LEDの光質向上を⽬指しながら、オリジナル製作照明の企画開発、セレクト照明の販売をしている。そのほかにも、照明開発のコンサルティング、飲⾷店の照明リノベーションなどを⼿がける。『商店建築』、『AXIS Web』、『モダンリビング Web』、『カーサブルータス Web』などのデザイン媒体で照明に関する記事を執筆中。2022年4⽉に⾷と照明を体感できる〈LIGHT & DISHES Lab.〉を江東区福住にオープンしている。
https://lightanddishes.com/
作品〈Dish〉
光をお皿でやわらかく反射させてあたりを照らす照明。LEDは直線光で直接見るとまぶしい。そこでお皿に向けて光を放ち、反射させることで光を柔らかくすることにした。全体の形状は円錐形にして、光源の広がりを外観で可視化しイメージを想起させることを意図した。円錐形から中央部をくり抜き、まとまり感のある形状でまとめた。光源部分は細い柄で上部まで持ち上げられ、お皿に向けて光を放つ。お皿に当たった光は柔らかく辺りを照らす。想定外ではあったが、お皿から漏れた光がおもしろい陰影を平面に描き出した。
大口進也(おおぐち しんや)プロフィール
2007年⼤阪芸術⼤学プロダクトデザインコース卒業。⽇本デジタル研究所⼊社後、レノボジャパンを経て、David Lewis Designers(デンマーク、コペンハーゲン)に勤務、インダストリアルデザイナーとして、Bang & OlufsenやLG電⼦のデザインを⾏う。帰国後、2016年9⽉に⾃⾝のデザインオフィスを東京に開設。
主な受賞に、Red Dot Design Award Best of the BestやiF Design Awardなど多数。HUBLOT DESIGN PRIZE 2019ノミネート。
https://www.shinyaoguchi.com/
今回展示されるプロダクトは、ワイ・エス・エムが製作に関わっています。同社の技術がどのように活⽤されているか、職⼈による解説も作品に添えられています。
24日の夜に開催されるオープニングレセプションでは、参加デザイナーが在廊。19時よりトークイベントも開催される予定です(予約不要)。
ワイ・エス・エム 会社概要
1992年7⽉設立。板⾦の技術を活かし、まだ図⾯にもなっていない、イメージなどから設計・製造・アッセンブリ・完成品までの⼀貫製作を強みとし、照明を製作している町⼯場。これまで多くのデザイナーとのモノづくりを通じ、エンドユーザーを喜ばせる照明をつくりたいとの思いから、2017年にY.S.M PRODUCTSを⽴ち上げる。「ひとときをつくる」をコンセプトに掲げ、⽇常のライフスタイルがより良くなるような光を届けたいと願いモノづくりをしている。
Y.S.M PRODUCTS 公式ウェブサイト
https://ysmproduct.official.ec/
Y.S.M PRODUCTS 公式インスタグラム @ysm_products
https://www.instagram.com/ysm_products/ワイ・エス・エム 公式ウェブサイト
https://k-ysm.co.jp/
Y.S.M 公式インスタグラム @ysm_co
https://www.instagram.com/ysm_co/
会期:2022年9⽉23⽇(⾦・祝) 〜10⽉2⽇(日)
開場時間:平⽇16:00-20:00、⼟⽇曜・祝⽇12:00-19:00
会場:TIERS GALLERY by arakawagrip
所在地:東京都渋谷区神宮前5丁目7-12 TIERS 3F(Google Map)
入場料:無料
主催:ワイ・エス・エム
協⼒:荒川技研⼯業
ディレクション:福嶋賢⼆(SALTCO)、akii(岩松直明、前⽥崇彰)
展覧会詳細 / TIERS GALLERY by arakawagrip ウェブサイト
https://www.arakawagrip.co.jp/tiersgallery/archive/behind-the-light/