PRODUCT

「モノタロウ」がアブラヤシ廃材を活用した中密度繊維板を発売

パナソニックの技術 PALM LOOP ®️による環境配慮型商品を自社ブランドで展開

PRODUCT2023.07.21

製造・工事・整備の現場で必要な工具、部品などを幅広く取り扱うネットストア「モノタロウ」から、パーム油の原木であるアブラヤシの廃材を活用した中密度繊維板が発売されました(MonotaRO 2023年7月19日プレスリリース)。

開発の背景にあるアブラヤシを取り巻く現状

〈アブラヤシ廃材を利用した中密度繊維板〉の原料となるアブラヤシは、その果実からさまざまな用途に展開される植物性油脂・パーム油が精製されるため、熱帯地方のプランテーション(農園)での大規模栽培が行われています[*1]

アブラヤシ パーム油問題

伐採された後のアブラヤシ農園の光景(国立研究開発法人国際農林水産業研究センター提供)

アブラヤシは、25〜30年ほどの収穫期間を終えると伐採され、その多くは農園に放置されているとのこと。その後、幹の腐敗と分解が進むと、CO₂の約25倍の温室効果があるメタンガスを含む温室効果ガスを大気中に排出し、地球温暖化に影響を与えると分析されています。また、新たなアブラヤシを植林する際に焼畑(やきはた)が行われることもあり、アブラヤシを取り巻く現状は、地球規模での「パーム油問題」として共有されています[*2]

これらの諸問題を背景に、アブラヤシ廃材を活用することは、深刻な環境負荷の発生を抑制し、さらには現地での新たな雇用にもつながるため[*3]、サーキュラーエコノミーの形成が大きく期待される環境プロジェクトとなっています。

アブラヤシ廃材からつくられた中間材(チップ)

アブラヤシ廃材から作られた中間材(チップ)

パナソニックの再生木質ボード化技術を活用

モノタロウブランドから発売された〈アブラヤシ廃材を利用した中密度繊維板〉は、パナソニック ハウジングソリューションズ(以下、パナソニックと略)が有する再生木質ボード化技術「PALM LOOP®️(パームループ)」[*4]を用いて製造されています(同社では2022年4月より、大塚家具および東京インテリア家具と共同で事業検証を開始[*5])。
「モノタロウ」を運営するMonotaROでは近年、環境配慮型商品の取り扱いを強化しており、同社におけるサステナビリティへの取り組みの一環として、「PALM LOOP®️」の事業検証となる〈アブラヤシ廃材を利用した中密度繊維板〉の発売を決定。自社プライベートブランド(モノタロウブランド)として展開します。

モノタロウブランド〈アブラヤシ廃材を利用した中密度繊維板〉

温室効果ガス削減効果量(パナソニック試算値)

今後の展開

〈アブラヤシ廃材を利用した中密度繊維板〉は上記プロジェクトの第一弾。一般的な中密度繊維板・MDFに代わるボードとして、販売を推進します。
まずは、1セット5枚と1セット350枚で出荷される2品番を発売。今後も、パナソニックの「PALM LOOP®️」でつくられた製品を原材料としたモノタロウブランド商品を開発していく計画です。

〈アブラヤシ廃材を利用した中密度繊維板〉製品概要

商品名:アブラヤシ廃材を利用した中密度繊維板
サイズ(厚み×幅×長さ):2.5mm×920mm×1830mm
グレード:RS 30 REG(U) (JISA5905:繊維板)相当
ホルムアルデヒド等級:F☆☆☆☆
※屋内用
納期:15時までの注文で当日出荷

「モノタロウ」サイト 販売ページ
https://www.monotaro.com/g/06113432/

MonotaRO(モノタロウ)会社概要
住友商事と米国グレンジャー社の出資により2000年に設立、事業主向けサイト「MonotaRO.com」を開設。2004年に第1のプライベートブランドとなる「モノタロウ」の発売を開始。2006年に2月に住商グレンジャーからMonotaROに社名変更、同年6月に消費者向けサイト「IHCオープン」(2020年9月に「モノタロウ」にサイト統合)。
「資材調達ネットワークを変革する」を掲げ、”現場を支えるネットストア”「モノタロウ」では、切削工具や研磨材などの工業用資材から自動車関連商品や工事用品、事務用品など、現場・工場で必要とされるアイテム約2,000万を取り扱う。

ネットストア「モノタロウ」
https://www.monotaro.com/


*1.パーム油の生産国1位はインドネシアで、第2位のマレーシアとあわせて世界全体の約85%を占める(参照元:環境省「平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書「グリーン経済を支える自然資本」より / 詳細

*2.パーム油問題については、環境省、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)など各種組織・団体が、ウェブサイト上で情報を公開している

*3.今回の〈アブラヤシ廃材を利用した中密度繊維板〉では、パナソニックがアブラヤシ廃材の調達から圧縮成形した中間材の製造までをマレーシアで行い、中間材からボードへの最終工程は現状、日本国内で行っている

*4.パナソニックの再生木質ボード化技術:業界初となる、アブラヤシの廃材から中間材を介して再生ボードをつくり、家具や建材へと活用する技術。SATREPS(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development:サトレップス / 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)とパナソニックとの連携による

*5.パナソニック各種発表
「アブラヤシ廃材を活用した再生木質ボード化技術を開発」(2021年11月15日)
https://news.panasonic.com/jp/press/jn211115-1
「アブラヤシ廃材を活用した再生ボード化技術を「PALM LOOP パームループ™」として市場展開」(2022年3月17日)
https://news.panasonic.com/jp/press/jn220317-1
パナソニック「PALM LOOP®️」特設ページ
https://panasonic.co.jp/phs/technology/palmloop/

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