1953年(昭和28)に福岡で創業し、主に業務用家具メーカーとして、飲食・ホテル・オフィスなどにプロダクトを納入しているアダルが、福岡本社と東京支店をリニューアル。自社製品で構成されたワークプレイスで社員が働く様子を見学することができる「ADAL CREATIVE PLACE(アダル クリエイティブスペース)」として、5月16日にオープンしました。
「ADAL CREATIVE PLACE」としてのリニューアルに際し、人々が最適な場所で働くことで生産性を高められる「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW:Activity Based Working)」の考え方が軸に据えられています。展示構成は、アダルが2022年1月にリリースしたワークプレイス向けの家具ブランド「A.T.I.C(アティック)」の新作家具が中心です。
どちらも見学はBtoB関係者に限り、予約制のところ、先ごろ報道陣に公開され、見学ツアーが行われました。
『TECTURE MAG』編集部では、東京支店の見学会を取材しました(本稿の内観写真はアダル提供)。
「ADAL CREATIVE PLACE」は、同社の社名「ADAL」の由来にもなっている、”Adviser for Amenity Life”=快適空間のアドバイザー”として、つくりあげたい”快適空間”を自社製品で具現化したものです。
東京支店の「ADAL CREATIVE PLACE TOKYO」のデザインを手掛けたのは、インテリアデザイナーの木下陽介氏(CANUCH Inc. CEO)。事務所のパートナーである野口優輔氏とともに、これまでに、博報堂の〈TBWA\HAKUHODOオフィス〉、ルミネのオフィス(LUMINE OFFICE)といったオフィス空間を多数手掛けているほか、熊本産の木材・小国杉を用いた家具シリーズのデザインなども手掛けています。
木下陽介氏(CANUCH Inc. CEO)コメント:
「アダルの強みは、置き物家具から造作家具まで、一貫した素材で空間提案が可能なこと。加えて、あらゆる課題を解決していく技術力と経験値です。今回のリニューアルでは「製品を通じてどのような関係を築きたいのか」をクライアントであるアダルに問いかけ、社名となっている、”人の営みのそばにある”という原点に立ち返ることを確認し、その強みを生かすことが、今回の空間設計の大きな軸となりました。
新たに設定した「ADAL BASIC」というカラーコーディネートから、置き物家具の提案のみならず、空間全体からトータルな提案ができる力があるということを、改めて提示することができたと思います。」
アダルの東京支店は、1階と2階の2フロア構成。今回のリニューアルで木下氏が心掛けたのは、多様なライフスタイルに応える空間提案の場の創出と、提案を行うためのクリエイティビティを創出する場づくりです。
アダルの張り地の家具やベンチで展開している多彩なカラーバリエーションをここでは”封印”し、あらゆる空間提案・コーディネートの素地となる、ベーシックトーンを中心としたカラーコーディネート「ADAL BASIC」を設定。グレーやベージュ色を基調とした落ち着いた色合いで空間をまとめています。
明治通りに面し、往来からも内部の様子が見える1階のエントランスエリアは、人気の高い家具シリーズを中心に配置。下の写真からもわかるように、カラーコーディネートは、彩度をおさえた「ADAL BASIC」に基づいています。
路面の1階には、セミナーなどの集客イベントも可能なスペースと、オンライン会議に対応したミーティングルームも設置。白色系から暖色系まで色温度の設定を変えらえる天井照明も備え、光の演色性を確認しながら家具を選定することが可能となっています。
来館者の視点では、家具の色・かたち・質を比較・体験しやすいように。オフィスとしてこの空間で働く社員にとっては、居住空間に近い環境に。落ちつきある配色で、回帰したくなるような居心地の良い空間として設計されています。
社員が働くオフィスは2階にあります。
東京支店のスタッフの人数は、内外勤務者をあわせて役50名。改装前の2階オフィスは、いわゆる一般的な「島型」のデスク配置だったとのこと。
オフィスフロアのリニューアルにあたり、アダルでは約3カ月をかけて、紙書類の電子化を敢行。クリエイティブな活動を生み出すためのスペースの確保。また、個人の固定席を設けない、フリーアドレスを採用するにあたり、PHONE APPLI社のサービス「PHONE APPLI PLACE」を導入しています。
これにより、2階のオフィスからは、紙書類のファイルを収めたトールキャビネットや、デスク下のキャスター付きキャビネットなどが廃され、木下氏の意図する新たなオフィス空間が誕生しました。
2階オフィスは、エレベーターホールに接したオフィスの入り口(エントランスエリア)が「PUBLIC(パブリック)」、春には隣接する十二社熊野神社の桜が眺められるという窓側は「SEMIPUBLIC(セミパブリック)」、左手とその奥は「PRIVATE(プライベート)」と、大きく3つゾーニングされています。
できるだけ壁を立てず、エントランスエリアから奥までの見通しのきいた開放的なゾーニングながら、木下氏はワーカーが耳にする「音」を重視。フロアの奥にいくほど集中しやすく、1人用のブースを開口部のない壁に沿って1列に配置しています。
フロアの最奥には内勤者のデスクを配置。奥へいくほどチームワークが生まれるように意図したとのこと。
フロア中央にはライブラリースペースを設け、顧客との商談時に使用する自社のカタログなどのほか、張地見本、木材の塗装見本といった1000点以上の素材見本を備えています。
周囲に目を向ければ、実際にアダルの家具が使われており、顧客が実現したい空間を提案するための素材から実際のプロダクトまで、イメージの共有とその後の形成がしやすくなっています。
「ADAL CREATIVE PLACE」のショールームおよびライブオフィスの見学は、予約が必要です。
所在地:東京都新宿区新宿5-17-5 ラウンドクロス新宿5丁⽬ビル 1・2階
予約・問合せ先:03-5155-5005(アダル東京支店)
予約専用フォーム(一般の予約は不可)
https://www.adal.co.jp/contact/
アダル 公式ウェブサイト
https://www.adal.co.jp/