ホオノキ材を伝統的技法で緊結した世界初の木造人工衛星がNASA / JAXAの安全審査に合格、住友林業×京都大学による「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」で誕生 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
ホオノキ材を伝統的技法で緊結した世界初の木造人工衛星がNASA / JAXAの安全審査に合格、住友林業×京都大学による「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」で誕生

世界初の木造人工衛星がNASA / JAXAの安全審査に合格

ホオノキ材を伝統技法で緊結、住友林業×京都大学による「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」で誕生

BUSINESS

京都大学と住友林業が共同で開発した木造人工衛星(LignoSat)[*1]がこのほど完成。今年9月に米国フロリダ州のケネディ宇宙センター(Kennedy Space Center)から打ち上げ予定のスペースX社(Space Exploration Technologies Corp.)のロケットに搭載され、国際宇宙ステーション(ISS)に移送後に運用を開始します(本稿1枚目の画像:フライトモデル/ 打ち上げ実機)。木造の人工衛星が宇宙空間で運用されるのは世界でも初とのこと。

最終目標は”月面に木の家を建てる”「宇宙木材プロジェクト」から誕生

この木造人工衛星〈LignoSat〉は、京都大学と住友林業が2020年4月にスタートした「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」[*2]から誕生したもので、遡ると、2016年に京都大学宇宙総合学研究ユニットに特定教授として赴任した、元宇宙飛行士の土井隆雄氏(現・京都大学大学院総合生存学館特定教授)が、同学大学院の村田功二教授(農学研究科森林科学専攻)に送った1通のメールが端緒となっています。そこには「月面で木の家を建てたい」と記されていたとのこと(JAXA[宇宙航空研究開発機構/Japan Aerospace Exploration Agency]ウェブサイトに2023年9月21日掲載インタビューより)。

JAXAウェブサイトインタビュー記事(2023年9月21日)
「きぼう」の活用で見えてきた、木造人工衛星の実現と宇宙での木材利用の可能性(京都大学大学院 農学研究科 森林科学専攻 教授 村田功二)
https://humans-in-space.jaxa.jp/biz-lab/case/detail/003385.html

構体の構造は伝統技法「留形隠し蟻組接ぎ」を採用

この木造の人工衛星〈LignoSat〉は、1辺の長さが100mm角、「キューブサット」と呼ばれる超小型の衛星です。構体には、住友林業の紋別社有林で伐採されたホオノキ材を使用。ネジや接着剤を一切使わずに構体の構造を精緻かつ強固に組み上げることができる、日本古来の伝統的技法「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」が採用されています。

安全・機能面では、木材試験体による宇宙曝露実験(下の画)を含め、NASA(アメリカ航空宇宙局/National Aeronautics and Space Administration)/ JAXAによる数々の厳しい安全審査をすべて通過しており、宇宙での運用へ向け、世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められたことになります。

宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)

ISS船外曝露プラットフォーム ©︎ JAXA/NASA(京都大学 2023年5月16日発表資料より)/ 左上の拡大図:中央の直方体上部が曝露試験中の木材)

人工衛星を木造とする意義

世界共通の宇宙開発における問題として、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の発生があります。年々増加の一途をたどっており、将来的には 人類の宇宙活動の妨げになると予想されています(詳細はJAXAウェブサイト「地球と宇宙の安心安全な環境を目指して」を参照)。
小型の人工衛星は、その役目を終えたあと、地球の衛星軌道を逸れて大気圏に再突入させ、燃焼させることが国際ルールとなっています。従来の金属製の人工衛星では、燃焼の際に「アルミナ粒子」と呼ばれる微粒子を発生し、地球の気候や通信に悪影響を及ぼす可能性があるとのこと。これに対し、木材は大気圏再突入で燃え尽きるため、将来的に木造の人工衛星が増えることで、この「アルミナ粒子」の発生および影響の低減が期待できます。

宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)

294日間の宇宙曝露実験を終え、ISSより回収された試験体を受理する関係者(京都大学 2023年5月16日発表資料より)

プロジェクトの経緯

2020年4月 京都大学と住友林業は2020年4月「宇宙における樹木育成・木材利用に関する基礎的研究」に共同であたる研究契約を締結、「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」をスタート
2020年11月 住友林業紋別社有林で木造構体用ホオノキ材を伐採
2022年3月 国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の船外曝露プラットフォームで宇宙曝露試験を開始
2022年10月 文科省「令和4年度宇宙航空科学技術推進委託費」に採択
2022年12月 294日間の宇宙曝露実験を完了
2024年3月 木造人工衛星〈LignoSat〉フライトモデル完成
2024年4月 内閣総理大臣より人工衛星管理許可証交付
2024年5月 NASA / JAXAの安全審査合格
2024年6月 JAXAへLingnoSat引き渡し
2024年9月 〈LignoSat〉をスペースX社製ロケットに搭載、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターより打ち上げ(予定)
2024年11月 〈LignoSat〉宇宙空間で運用開始(予定)

〈LignoSat〉は、ISSに到着してから約1か月後に、日本実験棟〈きぼう〉より、宇宙空間に放出される予定です。衛星から送信されるデータ解析を通じ、今後も木の可能性を追求し、木材利用の拡大を目指す計画です。

住友林業・京都大学連名プレスリリース(2024年5月28日)
「世界初の木造人工衛星(LignoSat)完成、JAXAへ引き渡し宇宙での運用へ 木の可能性を追及し木材利用の拡大を目指す」
https://sfc.jp/information/news/2024/2024-05-28.html

京都大学 研究者向け発表資料(2023年5月16日)
「世界初、10か月間の木材宇宙曝露実験を完了」
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-05-16-1

住友林業・京都大学連名プレスリリース(2020年12月23日)
「住友林業、京都大学と宇宙木材プロジェクトをスタート 2023年に世界初の木造人工衛星打ち上げへ」
https://sfc.jp/information/news/2020/2020-12-23.html

京大宇宙木材プロジェクト 公式X(旧Twitter)



*1.LignoSat(リグノサット)とは、Ligno(木)とSatellite(人工衛星)からなる造語、本プロジェクトにて命名された

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