CULTURE

野老朝雄デザイン+田中浩也サポートによる、再生プラスチックを原料に3Dプリンタで出力した立体で構成される「組市松紋」の表彰台

CULTURE2021.06.05

東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)において使用される表彰台が、2021年6月3日に開催された表彰式アイテム発表会にて発表されましたプレスリリース

この表彰台は、消費者から回収された使用済みプラスチック容器などを原料とする、再生プラスチックからつくられているのが特筆点です。
「使い捨てプラスチックを再生利用した表彰台プロジェクト~みんなの表彰台プロジェクト~」(主催:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 / 以下、東京2020組織委員会)から生まれたもので、事業協力者として、国際オリンピック委員会(IOC)のワールドワイドオリンピックパートナーおよび東京2020パラリンピックのゴールドパートナーである、P&GグループのP&Gジャパン合同会社(兵庫県神戸市 / 以下:P&G社)が参画しています。日本国内における3R=リデュース、リユース、リサイクルの意識を促進し、「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」に貢献することを目指した取り組みです。

野老朝雄デザイン「みんなの表彰台」

使用済みプラスチック回収の様子(画像提供:P&G社)

使用済みプラスチックの回収は、2019年6月から2020年3月にかけて行われ、全国のイオングループ約2000店舗と、応募があった全国各地の小学校(113校)に回収箱を設置。P&G社以外の他社製品も含む、使用済みのヘアケア製品や各種洗剤などのプラスチックボトル・詰め替え用製品を回収し(但し、ペットボトルは対象外)、約9カ月間の総量は24.5トン。これに、海洋プラスチック0.5トンと合わせてプラスチック原料を製造し、大会運営に必要な98台の表彰台へと生まれ変わりました。

野老朝雄デザイン「みんなの表彰台」©︎Tokyo2020

©︎Tokyo2020

表彰台の素材として、本体にリサイクルプラスチックを使用しているほか、五輪マークなどのシンボルを象る金属素材には、東日本大震災の被災地に建てられた仮設住宅のアルミ廃材を再利用しています。

デザインを担当したのは、東京2020大会のエンブレムに採用された「組市松紋」をデザインしたことでも知られる、美術家の野老朝雄(ところ あさお)氏。
3Dプリンタで出力した「組市松紋」のパーツを組み合わせた立方体(キューブブロック)を連結して構成されており、台の側面にも立体化した「組市松紋」が見られます。

野老朝雄デザイン「みんなの表彰台」©︎Tokyo2020

©︎Tokyo2020

「組市松紋」の立体造形化にあたり、慶応義塾大学(SFC)環境情報学部教授の田中浩也氏がサポート。田中氏がYouTubeで昨日、公開したコンセプトムービー「HARMONISED CHEQUERED PODIUM」に、幾何学の線から「組市松紋」が生み出され、それが立体となるさま、3Dプリンタによるパーツ造形の様子、さらには、「組市松紋」のキューブをつなぎ合わせることで、複数人が表彰される競技にも対応した秀逸なデザインであることが、わかりやすく表現されています。


#Hiroya Tanaka YouTube「HARMONISED CHEQUERED PODIUM」(2021/06/04)

表彰式アイテム発表会に出席した野老氏は、表彰台を構成する「組市松紋」のキューブブロックを手に、今回のデザインについて次のように語りました(以下にシェアする発表会のライブ動画 再生時間36分過ぎに登壇)


# Tokyo 2020「表彰式アイテム(表彰台、楽曲、衣装・メダルトレイ)発表会」(2021/06/03ライブ配信)」

「表彰台をデザインするにあたり、1つには、エンブレムもそうですが、『つながる』という最も大きなワードが根底にあります。この立体のピースがつながりあって、アスリートのみなさんのための表彰台になるのですが、アスリートの方がこの上に立って初めて完成するものだと思っています。

この表彰台は、現代の技術である3Dプリンタでつくられています。慶応義塾大学の田中先生を中心としたチームによる造形技術は、次の世代につながっていくものでもあります。素材は、我々の生活から出たプラスチックであり、ともすればゴミになってしまうものが、素材の研究や技術によって、人が上に乗っても大丈夫なものになった。いろいろなテック(Tech)や科学の塊であり、これまでの表彰台と比べて、そこが最も異なる点だと思っています。

表彰式を見た子どもたちが、僕もアスリートになりたいと思ってくれたら嬉しいし、子どもたちや孫の世代、次の世代へとつながる、1つのバトンのようなかたちになってくれればと思います。」(表彰式アイテム発表会での野老朝雄氏への壇上インタビューを編集部にて書き起こし、要約)


# P&G Japan YouTube公式チャンネル「東京2020オリンピック・パラリンピック表彰台完成までの全貌を公開!使い捨てプラスチックを再生利用した表彰台プロジェクト~みんなの表彰台プロジェクト~(東京2020組織委員会主催)」(2021/06/03)

なお、P&G社がYouTubeにて公開しているプロジェクト関連動画によれば、大会で使用する表彰台を3Dプリンタで製作するのは世界初、市民参加型のプロジェクトによる表彰台製作は大会史上初とのことです。(en)

「みんなの表彰台プロジェクト」概要
https://olympics.com/tokyo-2020/ja/games/sustainability/podium-project

東京2020表彰式 表彰台をデザインした野老朝雄さんインタビュー
「表彰台もレガシー。選手が立つ姿を見たいです」

https://olympics.com/tokyo-2020/ja/news/news-20210603-01-ja

野老朝雄 公式Webサイト
http://tokolo.com/

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