建築家の黒川紀章(1934-2007)が設計した代表作の1つで、2022年4月12日より解体工事が始まった〈中銀カプセルタワービル〉。このメタボリズム建築の傑作を、3次元スキャンで記録に残す、3Dデジタルアーカイブプロジェクトが本格始動。
NFTなどをリターンとするクラウドファンディングが、解体着工と同日の4月12日よりスタートしています。
プロジェクトの中心は、建築・都市を軸に新たな価値を創出するためのプラットフォームとして設立され、建築や都市のデジタル化を推進してきたgluon(グルーオン)。メンバーには、noizの豊田啓介氏、構造家の金田充弘氏らが名を連ねています。
同社はこれまでにも、建築の3Dデジタルアーカイブや、3Dデータを活用した施策づくりを行ってきました。
2020年には、菊竹清訓設計の〈旧都城市民会館〉解体に伴う3次元での記録を、市の協力のもとで実施。今回と同様にクラウドファンディングを実施し、3次元スキャンのための資金調達に成功したうえで、データを制作。gluonのYouTube チャンネルにて各種動画を公開しています。
実空間の情報をまるごと3次元データ化するためには、ミリ単位で正確な距離を計測できるレーザースキャンのデータと、一眼レフカメラやドローンによって撮影した2万枚以上の写真データを組み合わせ、建物全体をスキャンする必要があります。平面的な写真や図面だけでは記録しきれない複雑な形状や、立体的な構造を記録することで、建築形状を正確に把握し、デジタルアーカイブとして後世へ残していくことが可能となります。
#gluon YouTubeチャンネル「3D Digital Archive Project – Nakagin Capsule Tower」(2022/04/12)
今回の〈中銀カプセルタワービル〉におけるプロジェクトでは、gluonがこれまで空間のデジタル記述で培ってきた 3次元計測技術を活用。デジタルアーカイブとして、新たな保存手法の構築と、名建築の価値を継承していくための制作費用の支援を求め、8月9日23:59までクラウドファンディングが実施されます。
〈中銀カプセルタワービル〉3D Digital Archive プロジェクトメンバー
主宰:gluon
企画・監修:
豊田啓介(東京大学生産技術研究所特任教授 / gluon / noiz)
金田充弘(東京藝術大学美術学部建築科教授 / gluon / Arup)企画・ディレクション:瀬賀未久(gluon)
3次元レーザースキャン:
船越 亮(クモノスコーポレーション)
西鼻恵之(クモノスコーポレーション)
中井麻友(クモノスコーポレーション)
堀越脩仁(クモノスコーポレーション)フォトグラメトリー:
藤原 龍(ホロラボ)
長坂匡幸(ホロラボ / フリーランス)
松川元希(ホロラボ)ドローン測量:大隣昭作(福岡大学工学部社会デザイン工学科)
3次元計測:秋田亮平(gluon / 東京藝術大学美術学部建築科非常勤講師)
機材協力:構造計画研究所3Dスキャンデータ 一部提供:
中銀カプセルタワービルA606プロジェクト(藤田康仁[東京工業大学環境・社会理工学院、日本建築学会関東支部建築歴史・意匠専門研究委員会有志])
協力:中銀カプセルタワービルA606プロジェクトスケジュール:
2022年4月 3Dデータの解析・モデル制作開始
2022年11月 3次元点群データの公開(予定)
目標金額は650万円、掲載時時点で359,880円が寄せられています。
なお、このプロジェクトでは、目標達成に関わらず、期日までに集まった金額がファンディングされます。
支援者へのリターンとして、活動内容を紹介するオンライントークセッションへの参加券、中銀カプセルのNFT、高密度・超解像度の3次元点群データの提供(二次使用厳禁)などが用意されています。
クラウドファンディングが成立した際には、3次元点群データをオープンソースとして、ウェブサイト上で無償で公開し、学術研究や新たな創作活動へとつながる機会も創出される見込みです。
プロジェクトの詳細は、クラウドファンディングの実施ページを参照してください。
「3D Digital Archive Project / 建築『中銀カプセルタワービル』を3次元スキャンで記録に残したい。」
https://motion-gallery.net/projects/3dda-nakagin
※本稿画像・資料提供:gluon