横浜・関内の駅前再開発「横浜市旧市庁舎街活用事業」による大規模複合街区「BASEGATE(ベースゲート)横浜関内」が3月19日にオープンしました。
同街区は、2020年6月に桜木町に庁舎を全面移転した横浜市の旧市庁舎の跡地に建設されたもので、ゆるやかにつながる複数棟からなり、ホテル・ライブビューイングアリーナ・商業・オフィスが一体となったミクストユース型再開発によって誕生しました。

左:JR関内駅南口からの「BASEGATE横浜関内」タワー見上げ
右:ハマスタ入口交差点付近からの〈OMO7横浜 by 星野リゾート〉とタワーの眺め 2点ともPhoto: TEAM TECTURE MAG
旧横浜市庁舎は、建築家の村野藤吾(1891-1984)が手がけたことで知られ、建物の一部をホテルとして再生するプロジェクトが話題となっていました。 改修基本設計・実施設計は事業者として名を連ねている⽵中⼯務店、ホテルのインテリアデザインを、建築家の成瀬友梨氏と猪熊 純氏が率いる成瀬・猪熊建築設計事務所が担当しています。
『TECTURE MAG』では、街区のオープンに先駆けて行われたプレス内覧会を取材。4月21日に開業するホテル〈OMO7横浜 by 星野リゾート〉(以下、一部で〈OMO7横浜〉と略)を中心に、デザインの見どころをレポートします(本稿1枚目などOMO7横浜または事業者提供の画像を含む)。

タワー(左)と旧横浜市庁舎行政棟を利活用した「ザ レガシー」 Photo: TEAM TECTURE MAG

BASEGATE横浜関内 各棟およびフロア構成(画像提供:事業者)

新街区 地上マップ(画像提供:事業者)

「ザ ライブ」3階ルーフガーデンからの「ザ レガシー」南端部(北東面)見上げ Photo: TEAM TECTURE MAG
横浜市庁舎の歴史 ▶︎▶︎読む
ホテル概要 ▶︎▶︎読む
ホテル〈OMO7横浜〉フロア構成
インテリアのデザインコンセプトは「接木(つぎき)としての改修デザイン」 ▶︎▶︎読む
レガシーを継承する新旧融合のデザイン ▶︎▶︎読む
大階段 / 照明 / 旧本会議場の椅子 / Z字の金物把手 / 安東陽子氏デザインのカーテン / OMOダイニング / エレベータまわりのデザイン / 泰山タイル作品を再構築した壁画〈このさきゆくさき〉
〈OMO7横浜〉付帯設備 ▶︎▶︎読む
OMOドッグガーデン / 客室 / HAMAKAZEテラス
村野らしさを纏った数字のデザイン ▶︎▶︎読む
横浜の街の記憶と風景を継承 ▶︎▶︎読む
「BASEGATE横浜関内」事業概要 ▶︎▶︎読む
横浜市の庁舎の歴史は古く、初代は1889年(明治22年)まで遡ります。2代目以降の庁舎は本プロジェクトの敷地である港町魚市場跡地に建設されました。横浜開港100年記念事業の一環として市庁舎の設計者を決めるプロポーザルで村野、森建築事務所が勝利。SRC造、地上8階・地下1階の行政棟と、地上4階・地下1階の市会棟、それをつなぐ地上2階・地下1階の市民広間からなる構成で、1959年(昭和34年)に7代目となる市庁舎がオープン、約6年前まで使用されました。

7代目 旧横浜市庁舎 1959年竣工当時外観(撮影:岡本三郎氏撮影 寄贈:岡本 茂 所蔵:横浜開港資料館 画像:OMO7横浜 2026年3月12日プレスリリースより)
村野藤吾の旧市庁舎は、コンクリートの柱と梁のあいだに凹凸をつけるようにして暗褐色のタイルが貼られた外観、行政棟と市会棟のあいだに設けられた2層吹き抜けの大空間「市民広間」などが、長らく市民に愛されてきましたが、建物の老朽化に加えて、分散していた行政機能を集約するため、2020年5月に閉館。このうち、保存された旧行政棟の一部が星野リゾートが運営するホテルとして再生されました。

ハマスタ入口交差点付近からの眺め Photo: TEAM TECTURE MAG

〈OMO7横浜 by 星野リゾート〉北東側側面。ホテルのメインエントランスは、新街区に3つ設けられた広場の1つ「スタジアムサイドスクエア」に面している
施設名称:OMO7横浜 by 星野リゾート
読み:オモセブンヨコハマ バイ ホシノリゾート
所在地:神奈川県横浜市中区港町1丁⽬1番1(Google Map)
客室数:276室(全9タイプ)
ホテル事業者:⽵中⼯務店、東急、京急電鉄
ホテル運営者:星野リゾート
設計:
当初設計:村野、森建築事務所
改修基本設計・実施設計:⽵中⼯務店
ホテルFOH部 [*1] インテリア基本設計・インテリアデザイン監修:成瀬・猪熊建築設計事務所
ホテルFOH部造作家具実施設計:アイリスオーヤマ、I.P.Mプロジェクトマネジメント
FFE [*2] 設計・監理:成瀬・猪熊建築設計事務所
ホテルサインデザイン:UMA/design farm
数字フォントデザイン:村野、森建築事務所・MURANO design
テキスタイルデザイン:安東陽⼦デザイン
タイルアート デザイン・制作・施⼯:Euclid
展⽰デザイン:乃村⼯藝社
施⼯:
改修施⼯:⽵中⼯務店
免震改修⼯事(2009年):⼾⽥・⾺淵・住友電設・ダイダン異業種JV
当初施⼯(1959年)⼾⽥組(現・⼾⽥建設)
開業日:2026年4月21日
*1.FOH(Front of House):ホテルの延床⾯積のなかで利⽤客に使⽤される⾯積部分。客室、パブリックスペースなどを指す
*2.FFE(Furniture Fixture & Equipment):家具や備え付け設備、什器などを指す
ホテル フロア構成:1F-2F:OMOベース(レセプション、ショップ、ベーカリー、展示など)/ 2F:OMOダイニング / 3F:OMOドックガーデン、ペット同伴宿泊専用客室 / 4-8F:客室 / RF:HAMAKAZEテラス

〈OMO7横浜 by 星野リゾート〉内覧会の様子
左から、猪熊 純氏、成瀬友梨氏、前田祐哉氏(竹中工務店東京本店設計部)、山形陽平氏(成瀬・猪熊建築設計事務所)、越中玲衣氏(同事務所)
本事業の開発テーマは「新旧融合」。なかでも村野藤吾設計の旧横浜市庁舎行政棟のコンバージョン(用途変更)は、プロジェクトを象徴するものでした。
特徴的な外装タイルは打診調査が行われ、往年の姿を留めることに。内部では、村野がデザインした建築金物や照明、作家によるタイル壁画やアートワークの一部が残され、新たな空間にあわせて再登場しています。

〈OMO7横浜 by 星野リゾート〉北西側側面 Photo: TEAM TECTURE MAG
⽵中⼯務店と成瀬・猪熊建築設計事務所が設定したインテリアデザインのコンセプトは、「接木(つぎき)としての改修デザイン」。「接木」とは、農業・園芸領域で見られる、2種の植物の茎や枝を切り、つなぎ合わせて1つの個体として育てていく手法です。これを取り入れた考え方について、成瀬友梨と猪熊 純の両氏は次のように説明しています。
「接木は、近縁種同士でないとうまくいかずに枯れてしまいます。今回のコンバージョンにあたり、私たちは、村野藤吾のものなら無条件で残すのではなく、取捨の判断をしています。新規のデザインでは、村野のデザインを私たちなりに解釈し、既存のものとの親和性が感じられるよう心がけました」(成瀬+猪熊談話を要約)
本稿では、新旧融合のデザインとその見どころを辿っていきます。
旧市庁舎には、プロポーザルの時から高く評価されていた「市民広間」がありました。市民相談の場であり、定期的に演奏会も行われていたとのこと。ここには”階段の名手”である村野がデザインした大階段があり、途中の踊り場に立てば、2層吹き抜けのダイナミックな空間が視界に広がったといいます。
旧庁舎のレガシーを継承するものとして、この「大階段」を1階のレセプションフロアに再構築。直上の床スラブを抜いた吹き抜けの下、8段目の段部までは当時の大階段そのものを移設。8段目以降の踊り場や階段および構造体は復元的再制作を行い、村野ならではのゆるやかな傾斜角度を厳密に踏襲。使い込まれ飴色を帯びていた木製の手すりもこちらに移設されています。

Photo: TEAM TECTURE MAG

Photo: TEAM TECTURE MAG

大階段 手すり(画像提供:OMO7横浜)

大階段の復元では、オリジナルの部材も使いながら、構造とバリアフリーに配慮し、「市民広間」がもっていた、ひらけた方向に向かって昇っていく空間構成の踏襲を目指した Photo: TEAM TECTURE MAG

吹抜け空間の梁まわりはホテルのレセプション空間にふさわしく、表面をモルタルで仕上げて表情を和らげている Photo: TEAM TECTURE MAG
1階の天井照明は、旧本会議場にみられた円形照明を元に、成瀬・猪熊建築展事務所が新たにデザインしたものです。旧庁舎になかったスプリンクラーの新設が必要であったため、既存の杉板型枠コンクリート下をスプリンクラーの配管などがくぐる設備ルートも兼ねた設置になっているとのこと。

Photo: TEAM TECTURE MAG
1-2階の吹き抜けに吊られた大きなペンダント照明も、成瀬・猪熊建築設計事務所によるデザインです。小さな六角形を単位に編まれたシェードは、伸びや歪みが生じない、特殊な織物によってつくられています(伊東豊雄氏の設計で知られる〈ぎふメディアコスモス〉の巨大ランプシェードでも用いられた素材)。折り紙のように折ることで、フレームなしで剛性を高めており、形状を解いて広げると大きな1枚に戻るとのこと。

Photo: TEAM TECTURE MAG

Photo: TEAM TECTURE MAG

Photo: TEAM TECTURE MAG
成瀬・猪熊の両氏が館内各所で新たにデザインした照明器具は(光が直接、目に入ってこない)グレアレスなデザインであることが共通しています。後述するダイニング空間を含め、照明計画は成瀬・猪熊建築設計事務所、竹中工務店設計部、アイリスオーヤマより独立したI.P.Mプロジェクトマネジメントが手がけているとのこと。

2階 ダイニング / 新しくデザインされた間接照明 Photo: TEAM TECTURE MAG

旧市庁舎のエレベーター前で使われていた天井照明を4基1セットで組み合わせた照明デザイン Photo: TEAM TECTURE MAG

ライブラリー機能を備えたパブリックスペース。壁のアートワークは旧市民広間に飾られていたものを専門家が補修した Photo: TEAM TECTURE MAG

旧本会議場の扉で使われていたZ字の金物把手は、引き戸の把手に再利用 Photo: TEAM TECTURE MAG
2階はかつて市長室がおかれていたフロアで、ホテルとなった今、宿泊者以外でも利用できるベーカリーショップとダイニングなどがあります。
外光を和らげて内部に取り込んでいるカーテンは、テキスタイルデザイナーの安東陽子氏によるものです(詳細は後述)。
「今回のプロジェクトで私たちが最も大切にしたのは、”接木”の考え方をベースに、村野藤吾らしい空間構成を持ち込むことでした。村野藤吾らしさとは何かを考えるにあたり、私たちは国内にある村野藤吾が手がけたホテルを幾つか訪ねています。そこで感じた、共通項の1つが、空間の中央部分はとてもおおらかにつくられているのに対し、窓際はヒューマンスケールで居心地よくつくられていたこと。旧市庁舎の「市民広間」でもこの傾向がみられました。この考察を踏まえて、パブリックスペースおよび客室空間をしつらえています」(成瀬・猪熊両氏談を要約)

フロア中央の吹き抜けを囲むように、テーブルと椅子の緑色は、旧本会議場の絨毯と椅子の色味を参照し、OMO7横浜の雰囲気に合わせてチューニングされている Photo: TEAM TECTURE MAG

旧本会議場に固定されていた椅子を、グリーン系の生地に張り替え、脚部を成瀬・猪熊建築設計事務所が新たにデザインしてアップサイクルしている(画像提供:OMO7横浜)
パブリックスペースおよび後述する客室のカーテンはすべて、安東陽子氏が手がけました。もとになっている”レガシー”は、村野と親交が深かった彫刻家の辻 晉堂(1910-1981)が制作し、旧市民広間の壁を幅50m、高さ7mもの大きさで彩っていた陶彫作品〈海・波・船〉です。このレリーフから、安東氏が図形を抽出し、それを再構築した柄となっており、それぞれ2色の金属箔が用いられています。

[タワー]と[ザ レガシー]のあいだ、「継承の道」に移設された辻 晉堂の彫堀レリーフの一部 Photo: TEAM TECTURE MAG

Photo: TEAM TECTURE MAG

カーテンに近寄ってみると、柄の線に青い箔が使われていることがわかる Photo: TEAM TECTURE MAG

箔の色やレースカーテンの色は、インテリアの雰囲気に合わせており、空間によって異なる Photo: TEAM TECTURE MAG

柱の1スパンごとに半円を連続させたヴォールト天井が、長いダイニングをヒューマンスケールに分節している。アッパー照明の真鍮色は旧横浜市庁舎で使われていたマテリアルからの引用 Photo: TEAM TECTURE MAG

ダイニング 朝食ビュッフェのレイアウト Photo: TEAM TECTURE MAG
壁面の縦張りタイルは、旧市庁舎にみられ、一部が残されている青い磁器質タイル(下の画)を念頭に既製品から厳選されたもの

2階 エレベータまわり、青い磁器質タイル(原位置保存) Photo: TEAM TECTURE MAG

3基のエレベータは、既存の壁と大理石の三方枠および敷居の材は活かして原位置保存、中のケージ(かご)を新しく替えた関係で、ドアパネルの調整部分の納まりが左右非対称となった。インジケーターはオリジナルデザインをもとに新規で製作されている Photo: TEAM TECTURE MAG

エレベータ前、ベーカリーショップに面したタイル壁画 Photo: TEAM TECTURE MAG
泰山タイルを用いて辻 晋堂が制作したもので、旧市庁舎時代からここに位置する(原位置保存)

この壁の裏側に、現代の美術タイル職人による、”レガシー”を引き継いだ壁画(下の画)が新たに制作された Photo: TEAM TECTURE MAG
前述の辻晉堂による泰山タイルレリーフの裏側には、美術タイル職人の白石 普と吉永美帆子の両氏によるユニット・Euclidが手がけた壁画〈このさきゆくさき〉が展示されています。作品を構成しているのは、解体した辻作品の泰山タイルを一部再利用した作品。色の鮮やかな部分は釉薬を再びかけて焼きなおしています。Euclidとしては初の試みで、「旅の玄関口」と、横浜市のシンボル花である「バラ」を表現したものです。

Euclid / 白石 普、吉永美帆子〈このさきゆくさき〉 Photo: TEAM TECTURE MAG

トイレなどのサインも、辻の泰山タイル作品をもとに不整形でデザインされている(デザイン:UMA / design farm)Photo: TEAM TECTURE MAG

2階 吹抜けまわりの手すりの木笠木は、旧市民広間で使われていたものを再利用している Photo: TEAM TECTURE MAG
3階の客室フロアは”ドッグフレンドリー”仕様で、星野リゾートとして初めて1フロア全室が飼い犬同伴での宿泊が可能。3階宿泊者のみ利用できる[OMOドッグガーデン]は、屋外ドッグランと屋内ラウンジを備えています。
屋内ラウンジは、設備機器類を中央部天井裏に集約、その周りは既存スラブあらわしとし、大きな気積を確保しています。高低のコントラストに加え、杉板型枠によるコンクリート打ち放しの素材感を活かした空間デザインです。

3階宿泊者のみ利用できる[OMOドッグガーデン]屋内ラウンジ Photo: TEAM TECTURE MAG

この腰壁は旧市庁舎竣工時の外壁で、その後の増築によって見えなくなっていたもの。今回の改修工事で、竹中工務店作業所と伝統建築グループが偶然に元外壁を発見し、村野建築の”レガシー”として当時のレンガタイルによって外壁を復元した Photo: TEAM TECTURE MAG

[OMOドッグガーデン]屋外ドッグランに出ると、村野がデザインした特徴的なファサードを間近に確認できる Photo: TEAM TECTURE MAG
成瀬・猪熊建築設計事務所がインテリアデザインを手がけた客室は、窓際などに心地よく過ごせるヒューマンスケールをつくるなど、村野藤吾の空間構成を受け継ぐことを目指したものとなっています。
室内のカーテンやソファおよびクッションの生地のデザインは、前述のパブリックスペース同様に、安東陽子氏によるものです。
3階 ドッグフレンドリースイート

ドッグフレンドリースイート 宿泊イメージ(画像提供:OMO7横浜) 部屋面積:73m² / 宿泊者数:1〜6名

ドッグフレンドリースイート Photo: TEAM TECTURE MAG

村野藤吾がデザインしたガラスブリックは一部客室で見ることができる(画像提供:OMO7横浜)

Photo: TEAM TECTURE MAG
3階 ドッグフレンドリーダブルルーム

ドッグフレンドリーダブルルーム(24〜25m² / 1〜2名)窓際空間 Photo: TEAM TECTURE MAG
3階から8階の客室(計276室・9タイプ)では、赤・青・緑のテーマカラーがそれぞれ設定されています。旧市庁舎内で見られた色から主な3色を選んで落とし込んだものです。赤は旧議長室の絨毯の色、青は旧市庁舎内の艶のある磁器質タイルの色、緑は旧市会棟本会議場の絨毯や議員席の色をイメージしているとのこと。
8階 かたりばルーム(テーマカラー:赤)

かたりばルーム(41〜55m² / 1〜4名) 画像提供:OMO7横浜

ソファの生地も安東氏によるデザイン。 前述・カーテンと同じく旧市庁舎のタイルレリーフから抽出した図形を再構成した柄となっている Photo: TEAM TECTURE MAG

遮光カーテンは、既製品をベースに安東氏が色調整したもの。クッションの生地デザインも同氏が手がけた Photo: TEAM TECTURE MAG
8階 ダブルルーム(テーマカラー:青)

ダブルルーム(20〜21m² / 1〜2名) 画像提供:OMO7横浜

窓からは横浜スタジアム(ハマスタ)が見える。客室は既存サッシの内側に木製サッシを入れて遮音している Photo: TEAM TECTURE MAG
8階 やぐらスイート(テーマカラー:緑)

やぐらスイート(47〜49m² / 1〜6名) 画像提供:OMO7横浜
8階 デラックスルーム(ユニバーサル仕様、テーマカラー:赤)

8階 ユニバーサル仕様客室 Photo: TEAM TECTURE MAG
R階・HAMAKAZEテラスは遮るものがなく、横浜スタジアムを見下ろすことができます。

HAMAKAZEテラス Photo: TEAM TECTURE MAG
画面奥に見える白い鉄塔は、現在は敷地の北側に移設された「愛市の鐘」が吊るされていたもので、この地がかつて魚市場だったことから、村野が魚網をイメージしてデザインしたという(参照元:「継承の道」展示資料ほか)

Photo: TEAM TECTURE MAG

Photo: TEAM TECTURE MAG
HAMAKAZEテラスへはもちろんエレベータが通じていますが、「階段の名手」と謳われた村野の内階段を1回でも使ってみることをおススメします。
手すりは原位置保存されたもの。そして現在は施工そのものが少なくなった、人造石研ぎ出しによる腰壁の仕上げを見ることができます。

内階段(R階) Photo: TEAM TECTURE MAG

内階段(2階) Photo: TEAM TECTURE MAG
村野によるデザインの痕跡は、客室番号サイン、各階階数サイン、エレベーター内階数ボタンの数字にもあらわれています。

8階 客室ドア表示(画像提供:OMO7横浜)
〈OMO7横浜〉では村野藤吾が手がけた数字のデザインを継承・発展させ、エレベーター内階数ボタン、各階階数サイン、客室番号サインの3つで再デザインを施しました。
「村野藤吾 数字デザイン」
所蔵・資料提供:京都工芸繊維大学美術工芸資料館(資料番号 AN.5206-58) 図面名:「時計文字原寸」 画像:OMO7横浜 2026年3月12日プレスリリースより「鈴木志朗氏デザイン『0』と『9』」資料提供:「MURANO design」画像:2026年3月12日OMO7横浜プレスリリースより
再デザインにあたり、村野氏のオリジナルデザインには存在しなかった「0」と「9」の数字が課題となりましたが、Togo Murano Archives 村野朋子氏との出会い、紹介により、村野、森建築事務所で村野氏と共に活動していた鈴木志朗氏にデザインを依頼。「村野先生であればこうデザインするだろう」という想いのもと、試行錯誤を重ねて制作されました。本デザインは、鈴木志朗氏と村野朋子氏の監修を経て完成。ホテル改修全体のコンセプトである「歴史継承・新旧融合」を、サインデザインの細部に至るまで具現化した取り組みです。(OMO7横浜 2026年3月12日プレスリリースより)

8階階数サイン Photo: TEAM TECTURE MAG

2階 エレベータまわりの階数サイン Photo: TEAM TECTURE MAG
横浜の街の記憶と風景を継承
旧横浜市庁舎は、横浜開港100周年記念事業として1959年に村野藤吾氏の設計により竣工し、60年以上にわたり横浜市政を支えてきました。市民に親しまれた旧市庁舎の景観を継承するため、行政棟を原位置に残し、観光の賑わいの拠点となるようレガシーホテルとして活用します。2025年8月には、戦後の建造物として初めて「横浜市認定歴史的建造物」に認定されました[*3]。「長きにわたり地域のシンボルであった旧横浜市庁舎行政棟の保全と活用により、新旧が融合した新たな都市のランドマークが形成される」点が評価されました。横浜の街の記憶と風景を継承し、JR関内駅周辺地区の新たなにぎわいを創出するホテルを目指します。(星野リゾート 2026年3月12日プレスリリースより)
*3.詳細は横浜市記者発表資料(2025年8月5日)を参照

1階 チェックインカウンター、柱の時計は旧市庁舎「市民広間」で使われていたもの Photo: TEAM TECTURE MAG

1階の床 Photo: TEAM TECTURE MAG
村野による拍子木タイルをそのまま受け継いだ(原位置保存、一部復元。ヘリンボーン貼りは建物の外まで連続している

旧市庁舎の要所で使われていた掛け時計が、可動式掲示板となって再登場 Photo: TEAM TECTURE MAG

2階と同様に、窓側に親密なスケール感のカウンター席とラウンジ席がまわっている。天井照明は、前述・円形の大型照明と同じ仕様の角形 Photo: TEAM TECTURE MAG

1階 展示コーナー「ハマイズムコレクション」 (画像提供:OMO7横浜)

展示コーナー「ハマイズムコレクション」 Photo: TEAM TECTURE MAG
かつての「市民広間」の内観写真、階段質の手すり(現物)、青図などの展示

ホテル1階と2階は村野の「市民広間」の精神を受け継ぎ、誰でも自由に出入りして利用できる空間となっている Photo: TEAM TECTURE MAG
Photo of the day by Takuya Tsujimura, Shuhei Yamane, Naoko Endo / TEAM TECTURE MAG
Texed by Naoko Endo
旧市庁舎の建築様式については、星野リゾートからの配布資料および館内展示、下記・文化庁ウェブサイト内「近現代建造物緊急重点調査(建築)」のテキストを参照した

夜間外観(画像提供:OMO7横浜)
ホテル名に付く数字は星野リゾートとして提供するサービスの数(幅)を表し、現行のOMOシリーズでは最大級となる
OMO7 ウェブサイト
https://basegate-yokohama-kannai.com
インスタグラム
https://www.instagram.com/basegate_official
施設名称:BASEGATE横浜関内
所在地:神奈川県横浜市中区港町1丁目1番1
敷地面積:約16,500m²
延床面積:約128,500m²
竣工日:2025年12月26日
開業日:2026年3月19日
各棟主用途:
タワー:オフィス・大学、新産業創造拠点、エデュテインメント施設、商業
ザ レガシー(旧横浜市庁舎行政棟):ホテル、商業
ザ ライブ:ライブビューイング施設、商業
グリーンウォークテラス:商業
スタジアムサイドテラス:商業
ビジターフロント:観光案内所
事業者代表企業:三井不動産
事業者:鹿島建設、京浜急行電鉄、第一生命保険、竹中工務店、DeNA、東急、星野リゾート
設計・施工デザイン:
設計・施工:鹿島建設
設計・施工:竹中工務店
ランドスケープデザイン:ランドスケープ・プラス
商環境デザイン:Degins JP
商業エリア運営:東急モールズデベロップメント

Photo: TEAM TECTURE MAG
BASEGATE横浜関内 ウェブサイト
https://www.basegate-yokohama-kannai.com/