製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごとに贈られるグッドデザイン賞(運営:公益財団法人日本デザイン振興会)。
「グッドデザイン・ベスト100」としてすでに発表されています(受賞件数1,395件[受賞企業数974社]、審査対象数4,769件 / 審査委員長 安次富 隆、審査副委員長 齋藤精一)。
10月20日に発表された「ベスト100」の中から、金賞20件と各賞、および大賞(内閣総理大臣賞)候補のファイナリスト5件が選出され、11月2日に行われた「グッドデザイン大賞」選出会にて、2021年度のグッドデザイン大賞が決定しました。
ファイナリスト:
・移動型X線透視撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO CROSS」
・小さくても地域の備えとなる災害支援住宅「神水公衆浴場」
・3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」
・遠隔就労・来店が可能な分身ロボットカフェ「遠隔勤務来店が可能な〈分身ロボットカフェDAWN ver.β〉と分身ロボット〈OriHime〉」
・Operations「The best sustainability-oriented organizational adaptation to climate change」
https://www.g-mark.org/activity/2021/nominate.html
受賞対象:遠隔就労・来店が可能な〈分身ロボットカフェDAWN ver.β〉と分身ロボット〈OriHime〉
事業主体・受賞企業:オリィ研究所
分類:一般・公共向け取り組み・活動
プロデューサー:オリィ研究所 吉藤オリィ(共同創設者 代表取締役CEO)
ディレクター:オリィ研究所 鈴木メイザ(分身ロボットカフェプロジェクト プロジェクトマネジャー)
デザイナー:オヤマツデザインスタジオ 親松 実(代表取締役、デザイナー)
https://www.g-mark.org/award/describe/52931
大賞は、オリィ研究所を事業主体者とする、遠隔就労・来店が可能な〈分身ロボットカフェDAWN ver.β〉が受賞。以下はオリィ研究所プレスリリースより。
〈分身ロボットカフェDAWN ver.β〉は、「すべての人に社会とつながり続ける選択肢を」をテーマに、ALSなどの難病や重度障害で外出困難な人々が、分身ロボット〈OriHime〉を遠隔操作して働く常設実験カフェです。
社会課題をテクノロジーによって克服し「動けないが働きたい」という意欲ある人々に雇用の場を提供し、ここから企業就職するケースを生み出すことなどを目指しています。
プロジェクトへの協賛や、クラウドファンディング(最終支援総額:44,587,000円、最終支援者数:2,156人)による支援を受けて、2018年に第1回をオープン。以降、3回の期間限定開催を経て、2021年6月に東京・日本橋本町に常設店舗を開店しています。
〈分身ロボットカフェDAWN ver.β〉
所在地:東京都中央区日本橋本町3-8-3 日本橋ライフサイエンスビルディング3 1F(旧:東硝ビル 1F / Google Map)
公式Webサイト
https://dawn2021.orylab.com/
開発者・吉藤オリィ氏コメント:
「長寿化が進む日本であるが、平均健康寿命と平均寿命の間には依然として約10年というギャップが存在する。寝たきりにならないのは寝たきりになる前に天寿を全うした人だけであり、医療の発展と共に将来的に多くの人が寝たきりになる可能性がある。
我々はいずれ来る「セカンドライフ」については、こんな趣味をしたい、ここに行ってみたいという豊かな夢を描くが、寝たきりになってからの「サードライフ」には具体的な未来像を描けずにいるばかりか、やがて来る現実から目を逸らすばかりである。 こうした私たちにとっての未来を先に生きているのが、我々が「寝たきりの先輩」と呼ぶ外出困難者・重度障害者たちである。彼らが社会と繋がり続け、誰かのためになっているという生の実感を得られるかどうかに、日本が世界から大きな注目を寄せられている「超高齢化社会をどう豊かに生きるのか」についての解があるのではないか、ということからこのカフェの実現を発想した。我々は「障害」を障害者手帳の有無などではなく、「したいことがあるのにできない状態」と定義している。このため、OriHimeパイロット[*]の中には、重度障害を抱える外出困難者に限らず「メルボルンに住む子育て中の女性」も含まれている。彼女は「外に出て働きたいのに子育てのためそれが叶わない=障害状態にある」と考えるからである。彼女は、頻繁に外国人観光客が来訪した渋谷のカフェでは「マリーさん、英語対応お願いします!」というメッセンジャーひとつで2分後に〈OriHime〉にログインし、流暢な英語でお客さまをお迎えできるので大好評であった。これこそが私たちの考える「リレーションテックによる適材適所社会」である。
先天性の障害で寝たきりだった特別支援学校の女子高校生は、在校中にこのカフェで働いた体験により「同じ道を後輩にも開きたい」という思いを抱くようになり、社会福祉士の資格獲得を目指して、この春からの大学進学を決めた。
特別支援学校の卒業後に大学進学を選ぶ生徒は、全体数の5%とも3%とも言われている現状から考えても、彼らがこのカフェでの経験を通じて得た「未来を描く力」が次の世代への道を拓くきっかけになっていることは間違いない。」オリィ研究所 公式Webサイト
https://orylab.com/
*.OriHimeパイロット:病気や障害・介護を理由に外出が困難な人で、遠隔操作型ロボット〈OriHime〉を遠隔操作して働くスタッフのこと
デザイナー・親松 実氏コメント:
「開発者の皆さんからこのプロジェクトの開発秘話や過去の実験店舗の話を聞くうちに、〈OriHime〉の魅力とその可能性にどんどん引き込まれていった。コンセプトについてのディスカッションを繰り返すうちに、やがて「健常者と障害者とロボットが共存するカフェ」の形に導かれていった。障害者にフォーカスを当てた空間を造るのではなく、あたりまえにすべての人が共存する空間を目指した。店内は複数のエリアで構成されているが、「スナック織姫」のバーカウンターの遊び心も空間のアクセントになっている。
バリアフリーの観点でも、一般社団法人WheeLogからの具体的なアドバイスを受け、車椅子が”足入れ”できるテーブルの微妙な高さや、エリアを繋ぐ動線の確保、バリアフリートイレの細かな衛生機器の配置まで、かなり細かいところまで配慮されている。まさに未来のカフェの在り方が凝縮された店舗となっている。デザイン面では、ディスカッションの中で、この分身ロボット〈OriHime〉が、意外にも自然物や植栽と相性が良いことを発見できたのは大きな収穫だった。白い〈OriHime〉のボディが、従来のロボット関連店舗にイメージされがちな「いかにも未来的な空間」ではなく「ほの暗く緑豊かな空間」でこそ際立つという効果を狙った。この狙いがどうだったかについてはSNSに掲載された #分身ロボットカフェ のタグがつけられた数々の写真を見れば一目瞭然であろう。」
オヤマツデザインスタジオ
https://oyamatsu.co.jp/
※「OriHime」「分身ロボットカフェ」:オリィ研究所の登録商標
株式会社オリィ研究所について:
「人類の孤独をリレーションテックで解決する」をミッションとし、遠隔操作でありながら「その場にいる存在感」を共有できる分身ロボット〈OriHime(オリヒメ)〉を中心としたロボットの製造、および分身ロボットを活用した就労支援サービス「AVATAR GUILD(アバターギルド)」の提供を行なっている。
このほかのプロダクトとしては、テレワークでの肉体的社会参加を可能にする分身ロボット〈OriHime-Dオリヒメディー)〉、重度障害があっても目や指先などの僅かな動きだけでコミュニケーションを可能にする意志伝達装置〈OriHime eye+Switch(オリヒメアイプラススイッチ)〉などがある。
オリィ研究所 公式Webサイト
https://orylab.com/