建築家の内藤 廣(1950-)の過去最大規模となる個展が、9月16日から島根県芸術文化センター「グラントワ」内の島根県立石見美術館にて開催されます。
本展のテーマは「Built(ビルト=建設された建物)とUnbuilt(アンビルト=実現しなかった建物)」。物理的に相反するこの2つを、本展では1人の建築家の内面に棲む「赤鬼」と「青鬼」のせめぎあいとして捉え、展覧会タイトルにも反映されています。
内藤氏は、設計時に自身の胸裡(きょうり)に沸き起こるこの2つの葛藤を「赤鬼(情熱、逸脱、放蕩)」と「青鬼(論理、堅実、緊縮)」と表現しています。本展では、この赤鬼と青鬼が建築家・内藤 廣になり代わり、これまで氏が手がけてきたさまざまなプロジェクトを解説します。
本展では、建築模型や図面、写真のほか、本展で初めて公開される資料も数多く展示されます。これらの貴重な資料を通して、建築として世に現れていない部分もふくめた、内藤氏の設計と思考の軌跡を辿っていきます。
会期中は「関連プログラム」も各種実施され、展覧会初日の9月16日には、大ホールにて内藤氏による講演会も開催されます(申込不要、聴講には企画展観覧券またはミュージアムパスポートが必要)。
展示構成
Built 内藤廣の建築
内藤の代表作を模型や図面、写真などによって紹介。2005年竣工の「グラントワ」を中心として、それ以前の作品から、海の博物館(1992年)や牧野富太郎記念館(1999年)など約10件を、「グラントワ」以降の作品として、静岡県草薙総合運動場体育館(2015年)、高田松原津波復興祈念公園 国営 追悼・祈念施設(2019年)などから近作の紀尾井清堂(2021年)まで、約15件が展示されます。BuiltとUnbuilt をつなぐもの
「海の博物館」の特徴的な架構をモチーフにした、本展のためのインスタレーション。Unbuilt 内藤廣の思考
さまざまな事情により実現しなかった建物や架空のプロジェクトを、図面や模型によって紹介。内藤氏の卒業設計から近年のコンペティションシートまでを紐解き、時代を追って内藤の思考と社会の動きの変遷をたどります。その時々で内藤の手元にあった手帖も展示され、アイデアの源や設計のプロセスも公開されます。
また、進行中の最新プロジェクトの進捗も「未だ実現していないもの」として展示され、未来への展望を提示します。内藤 廣の言葉
内藤の著作から集めた言葉の数々と、石州瓦に覆われたグラントワの外壁の美しさをとらえた映像によるインスタレーションが披露されます。
そして本展の大きな見どころは、内藤氏が設計して2005年3月に竣工、同年10月に開館した、島根県芸術文化センター「グラントワ」内の美術館での展示であること。島根県立石見美術館の展示室にあわせて構成され、他所に巡回する予定はありません。
多彩な展示で構成される本展のための展示空間のデザイン、さらには併設施設・いわみ芸術劇場や中庭広場の眺め、石州瓦を多用した建物の外観、そして内藤が「グラントワ」の設計中に向き合った益田のまちや石見の自然など、建築空間および周辺環境を「まるごと」楽しむことができる大規模展となっています。
開館から18年が経過し、地域に根を下ろした「グラントワ」を含めた自身の設計について、「建てた瞬間がいちばん美しい建築をつくりたいとは思っていない」と語る内藤氏の建築の魅力を堪能できる展覧会です。
内藤 廣(ないとう ひろし)プロフィール
1950年生まれ。フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て、1981年内藤廣建築設計事務所を設立。
2001~11年東京大学大学院教授、同大学副学長を歴任。2023年4月から多摩美術大学学長。
主な建築作品に、海の博物館、安曇野ちひろ美術館、茨城県天心五浦記念美術館、牧野富太郎記念館、島根県芸術文化センター、静岡県草薙総合運動場体育館、富山県美術館、とらや赤坂店、高田松原津波復興祈念公園 国営 追悼・祈念施設、東京メトロ銀座線渋谷駅、京都鳩居堂、紀尾井清堂などがある。内藤廣建築設計事務所
http://www.naitoaa.co.jp/
会期:2023年9月16日(土)~12月4日(月)
休館日:火曜
開館時間:9:30-18:00(展示室への入場は17:30まで)
会場:島根県立石見美術館 展示室A・C・D(グラントワ内)
所在地:島根県益田市有明町5-15(Google Map)
当日券料金:下記の通り
・一般:企画展 1,200円、企画展・コレクション展セット 1,350円
・大学生:企画展 600円、企画展・コレクション展セット 700円
・小中高生:企画展 300円、企画展・コレクション展セット 300円
※敬老週間:9月16日(土)~9月21日(木)は年内に65歳以上になる方は観覧無料
※開館18周年感謝祭「きんさいデー」10月8日(日):美術館は終日無料開放
開幕記念 内藤 廣 講演会
日時:9月16日(土)14:00-15:30
会場:「グラントワ」大ホール
※申込不要、参加無料(ただし企画展観覧券またはミュージアムパスポートが必要
※講演終了後、本展公式図録『建築家・内藤廣 BuiltとUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い』(内藤廣著、販売価格:本体3,900円+税)会場購入者へのサイン会あり
新刊『建築家・内藤廣/BuiltとUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い』島根県立石見美術館で本日開幕した過去最大規模個展の公式図録
内藤廣によるグラントワ建築案内
開催日:9月17日(日)/ 10月22日(日)/ 11月25日(土)
※定員に達したため受付終了
グラントワスタッフによる建築案内
日時:10月7日(土)14:00-15:00 / 11月12日(日)14:00-15:00
集合場所:「グラントワ」講義室
参加方法:要事前申込(詳細は美術館ウェブサイトを参照)
定員:各回30名
参加費:無料(ただし企画展観覧券またはミュージアムパスポートが必要)
グラントワteaガーデン「瓦茶」にて、内藤廣氏”お気に入りのコーヒー”のふるまい
日時:9月24日(日)10:30~
会場:美術館ロビー
数量限定100杯(先着順)
料金:無料(ただし企画展観覧券またはミュージアムパスポートが必要)
関連プログラム
まちなか編 ~Unbuilt 未来の街
「建築家・内藤廣」× Shimane Cinema Onozawa
アニメ映画『ハーモニー』上映&スペシャルトーク
テーマ:「未来の都市をどう描く? 建築×アニメ」
概要:本展にて、アニメ映画『ハーモニー』のために内藤廣建築設計事務所が描いた都市や飛行機などのスケッチが、「Unbuilt」として展示される。本作品を上映した後、内藤 廣氏、アニメ制作会社・STUDIO4°Cのプロデューサー・田中栄子氏、『ハーモニー』制作時に内藤廣建築設計事務所の担当者だった湯浅良介氏によるトークセッションを行う。
日時:11月5日(日)映画上映 / 13:00-15:00、トーク / 15:15-16:15
会場:Shimane Cinema Onozawa シマネ シネマ オノザワ
登壇:内藤 廣、田中栄子(STUDIO4℃プロデューサー)、湯浅良介(建築家、内藤廣建築設計事務元所員)
入場料金:1,000円(映画、トーク含む)※劇場にてチケットを購入
定員:200名(当日先着順に受付)
※『ハーモニー』上映期間:11月1日(水)〜5日(日)
※スペシャルトークは11月5日のみ開催
※1日〜4日の上映時刻は決まり次第、シマネ シネマ オノザワウェブサイトにて発表
https://onozawacinema.com/
関連プログラム
まちなか編 ~Built グラントワと益田の街
建築家・内藤廣×MASCOS HOTEL
テーマ:「建築で街は変わった?」
概要:建築によって街は変わるのか? 街づくりにとって建築とは? 「グラントワができたから、このホテルを作ろうと思った」と語る、島根県益田市発の新感覚クラフトホテル[マスコスホテル]の洪昌督氏と、設計時からグラントワに関わっている企画展の担当学芸員・川西由里氏が、建築と街との関係をテーマに、内藤氏に話を聞く。
日時:11月25日(土)15:00-16:30
会場:MASCOS BAR&DINING マスコス バー&ダイニング
登壇:内藤 廣、洪 昌督(マスコス代表取締役)、川西由里(島根県立石見美術館専門学芸員)
料金:1,000円(ソフトドリンク、ケーキ付き)
定員:30名
参加方法:要事前申込
申込専用フォーム
https://ws.formzu.net/fgen/S795117816/
※10月1日(日)9:00より申込受付開始(定員に達し次第、締め切り)
本展詳細
https://www.grandtoit.jp/museum/hiroshi_naito_built_unbuilt
『TECTURE MAG』への感想など、簡単なアンケートにお答えいただいた方の中から、本企画展の観覧券を5組10名さまにプレゼント!
受付期間:9月11日(月)〜9月17日(日)まで ※受付終了
※応募者多数につき、抽選
※結果発表:チケットの発送をもって了(個々の問合せには対応しません)
※発送完了後、都道府県を除く住所情報は削除し、データとして保有しません