COMPETITION & EVENT

デザインの変遷100年を辿る! アール・ヌーヴォー、バウハウス、ミッド・センチュリー、イタリアン・モダンまで

[Report]織田コレクションの名品が揃う「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」日本橋髙島屋S.C.にて開催

2024年2月29日初掲、3月1日会場写真(+レポート)追加

東京・日本橋の日本橋髙島屋S.C.本館8Fホールにて、織田コレクションを中心とした企画展「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」が2月29日から開催されます。

(2024年2月29日初掲、3月1日に会場取材内容と1Fポップアップストア「ハーマンミラーフェア」について追加)

織田コレクションの名品が一堂に

織田コレクションとは、椅子研究家として名高い織田憲嗣(おだ のりつぐ|1946-)氏が長年にわたり収集、研究してきたもので、20世紀のすぐれたデザインの家具と日用品で構成されます。その種類は北欧を中心とした椅子やテーブルから、照明、食器やカトラリー、木製のおもちゃまで多岐にわたり、かつ写真や図面、文献などの資料もあわせて系統立てて集積されているため、学術的にも極めて貴重な資料であり、世界有数のコレクションとなっています[*1]

[*1] 織田コレクション 公式ウェブサイト https://odacollection.jp/
織田コレクションの一部は、織田氏が自ら平面図を引いた自邸がある北海道・東神楽町の隣町・東川町の複合交流施設「せんとぴゅあ」に常設展示されている。

カーザ・カルベットのアームチェア

カーザ・カルベットのアームチェア アントニ・ガウディ 1900年頃 Photo by Kentauros Yasunaga

〈ヒルハウス〉 チャールズ・レニー・マッキントッシュ

チェア〈ヒルハウス〉 チャールズ・レニー・マッキントッシュ 1902年 Photo by Kentauros Yasunaga

アームチェアB3(ワシリー)

〈アームチェアB3(ワシリー)〉 マルセル・ブロイヤー 1925年 Photo by Kentauros Yasunaga

バルセロナ・チェア

〈バルセロナ・チェア〉 ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ 1929年 Photo by Kentauros Yasunaga

近代デザイン史の変遷を辿る企画展

本展では、現在希少価値の高いものを含め、織田コレクションから厳選した100脚の名作椅子が展示されるのが見所です。加えて、それらの椅子と誕生時期を同じくする、ともに人々の暮らしの中にあった食器、インテリア製品、キッチン用品、家電製品、事務用機器などもあわせて展示され、近代デザイン史の変遷を俯瞰することができます。

食器シリーズ〈セレス〉

食器シリーズ〈セレス〉 テオ・シュムッツ=バウディス 1913年 Photo by Kentauros Yasunaga

ガラス・コンテナ・ブロック(クブス〉

ガラス・コンテナ・ブロック(クブス〉 ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルト 1938年 Photo by Kentauros Yasunaga

展示構成

第1章:―20世紀の始まり― アール・ヌーヴォー 1901-1918
第2章:―デザイン革命― モダニズム 1919-1938
-時代を象徴する部屋Ⅰ バウハウスやフランスで活躍したデザイナーたち
第3章:―デザイン黄金時代― ミッド・センチュリー 1939-1968
-時代を象徴する部屋II ノルディック・モダンのティー・パーティー
-時代を象徴する部屋III アメリカン・ミッド・センチュリーのくつろぎ
-戦後の復興と科学技術の発展
-ジャパニーズ・モダン
第4章:―斬新なデザイン― ポストモダンへ 1969-2000
-時代を象徴する部屋IV・V イタリアン・モダンの2つの部屋
エピローグ:時代に生まれ、時代を超える。

第1章の展示コーナー。時代や潮流のカテゴリーごとに家具や小物などの実物が置かれ、特徴が解説される。Photo: TEAM TECTURE MAG

第2章の展示コーナー。部屋として設えられた空間に名作家具が配されている。Photo: TEAM TECTURE MAG

イームズチェア

チェア〈LCW〉 チャールズ&レイ・イームズ 1945年 Photo by Kentauros Yasunaga

曲げ木の技術による椅子はトーネットが有名ですが、積層した木材に熱と圧力を加えて自由曲面をつくりだす成型合板の技術は、1940年代にチャールズ&レイ・イームズ夫妻が開発したと言われています。その新技術に注目したのがアメリカ海軍でした。軍はイームズ夫妻に合板ベニア板の添え木、担架、グライダーシェルなどの開発を依頼し、第二次世界大戦で負傷した兵士たちのために実際に使われました。
戦後、イームズ夫妻は同じ技法で成型した合板ベニア(プライウッド)を用いて〈チェアLCW〉をデザイン。手頃な価格ながら高品質で、クッションの代わりに立体的な形を持つ、大量生産が可能なチェアを世に送り出します(参照元:ハーマンミラーウェブサイト「プライウッドチェアの歴史」)。
この技術の系譜はやがてプラスティック製チェアの誕生へとつながっていきます。

イームズ夫妻「脚部固定用添え木」

脚部固定用添え木 チャールズ&レイ・イームズ 1942年 撮影:大塚友記憲

〈ロッキング・チェアRAR〉

〈ロッキング・チェアRAR〉 チャールズ&レイ・イームズ 1950年 撮影:大塚友記憲

本展で見ることができる〈ロッキング・チェアRAR〉は、イームズ夫妻がデザインし、ハーマンミラーから1950-1953年の3年間しか製造されていない貴重な初期モデルです。

柳宗理〈バタフライ・スツール〉

〈バタフライ・スツール〉 柳 宗理 1956年 Photo: Kentauros Yasunaga

グランプリチェア

〈チェア4130(グランプリ)〉 アルネ・ヤコブセン 1957年 Photo by Kentauros Yasunaga

チューリップ・アームチェア

チューリップ・アームチェア エーロ・サーリネン 1957年 Photo by Kentauros Yasunaga

本展では、アール・ヌーヴォー期に始まり、ドイツ・バウハウスのデザイン、ミッド・センチュリー、イタリアン・モダンまで、各時代を象徴するようなプロダクトが織田コレクションによって一堂に介します。現代へとつながる近代デザインの変遷を辿りつつ、当時の社会背景や人々の生活との関係性が浮かび上がらせます。

〈キャセロール〉

〈キャセロール〉 ティモ・サルパネヴァ 1960年 Photo by Kentauros Yasunaga

1965年〈ラジオフォノグラフォ〉

〈ラジオフォノグラフォ〉 アキーレ&ピエール・ジャコモ・カスティリオーニ 1965年 Photo by Kentauros Yasunaga

食器シリーズ〈TAC〉

食器シリーズ〈TAC〉 ヴァルター・グロピウス / ルイス・A・マクミレン 1968年 Photo by Kentauros Yasunaga

ソットサス / タイプライター〈ヴァレンタイン〉

タイプライター〈ヴァレンタイン〉 エットーレ・ソットサス 1969年 Photo by Kentauros Yasunaga

ガエターノチェア UP5+UP6

〈チェアUP5+UP6〉ガエターノ・ペッシェ 1969年 Photo by Kentauros Yasunaga

デスク・ランプ〈ブリッツ〉

デスク・ランプ〈ブリッツ〉 フランチェスコ・トラブッコ 1969年 撮影:大塚友記憲

〈キッチン・スケールBA22〉

〈キッチン・スケールBA22〉 マルコ・ザヌーゾ 1976年 Photo by Kentauros Yasunaga


会期開始当日に行われたメディアツアーで、パイプによるバウハウス家具の成り立ちを解説する織田氏。Photo: TEAM TECTURE MAG

第3章のミッド・センチュリーの部屋にて「デザインは人を幸せにするもの」と力を込めて説明する織田氏。Photo: TEAM TECTURE MAG

第4章のうちイタリアン・モダンの家具類を集めた部屋。Photo: TEAM TECTURE MAG

会場の中央付近に展開される「ノルディック・モダンのティー・パーティー」のコーナー。北欧のミッド・センチュリーの多彩な家具や食器、照明器具などが展示されている。Photo: TEAM TECTURE MAG

ODA COLLECTION「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」
会期:2024年2月29日(木)~3月18日(月)
開場時間:10:30-19:30(入場受付は19:00まで)
※ 最終日3月18日(月)は18:00閉場(入場受付は17:30まで)
※ 都合により、催事内容・会期などが変更または中止になる場合あり(最新の情報は日本橋髙島屋S.C.ウェブサイトを参照)
会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール
所在地:東京都中央区日本橋2丁目4-1(Google Map
入場料:一般1,200円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
問合せ先:日本橋髙島屋(代表TEL.03-3211-4111)
主催:椅子とめぐる20世紀のデザイン展実行委員会
特別協力:織田憲嗣(東海大学名誉教授)、北海道東川町
協力:織田コレクション協力会、旭川家具工業協同組合、インターオフィス、オゼキ、ハーマンミラー、フリッツ・ハンセン、フロス、ヤマギワ、ルイスポールセン
企画協力:ジェイアール東海エージェンシー

ODA COLLECTION「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」

日本橋髙島屋S.C. 本館 1F正面入口の展示。Photo: TEAM TECTURE MAG

巡回予定
大阪髙島屋 7階グランドホール:2024年3月27日(水)〜4月14日(日)
ジェイアール名古屋タカシマヤ 10階特設会場:2024年4月18日(木)〜5月5日(日・祝)

展覧会 特設ページ
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/20thcenturychair/index.html

日本橋髙島屋S.C. ウェブサイト
https://www.takashimaya.co.jp/nihombashi/


同じ日本橋髙島屋S.C. 本館1階の正面入口を入った右手では、ポップアップストア「ハーマンミラーフェア」も開催中。

「ハーマンミラーフェア」。Photo by Yusuke Kawata

「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」の展示に関連するチャールズ&レイ・イームズによる家具のほか、ハーマンミラーで扱うポスターや高機能ワークチェア「Aeron Chair(アーロンチェア)」などのハーマンミラーのアイコニックな製品が販売されている。

展示会を紹介するショーウィンドウも必見。Photo by Yusuke Kawata

ポップアップストア開催概要
期間:2024年2月28日(水)〜 3月12日(火)
会場:日本橋髙島屋S.C. 本館1階 正面イベントスペース
営業時間:10:30-19:30

日本橋髙島屋S.C. 本館。Photo: TEAM TECTURE MAG

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