東京・表参道の複合施設・表参道ヒルズ(本館)の吹抜け空間に、建築・デザイン・アートの領域を横断してボーダレスな創作活動を行なっている、建築家の沖津雄司氏がデザインしたクリスマスツリーが展示されています。展示期間は12月25日まで。
同所にて11月13日より開催中のイベント「OMOTESANDO HILLS CHRISTMAS 2024」のために沖津氏が設計・デザインしたもので、約4万枚のレンズで構成されたツリーは高さ8.4m、沖津氏がこれまでレンズを用いて手がけた作品のなかでは最大規模となります。
YUJI OKITSU〈Christmas tree of Light〉
『TECTURE MAG』では、展示期間中に特別に実施されたメディア向け特別観覧ツアーを取材。出席した沖津氏のコメントをもとに、”光のクリスマスツリー”の見どころをレポートします(特記なき画像はYUJI OKITSU提供 / すべて撮影許可を得たもの)。
沖津雄司(おきつ ゆうじ)プロフィール
建築家。
1983年生まれ、大阪府出身。2009年東京電機大学大学院修士課程(建築学)修了。同年、建築家の中村竜治に師事。2017年にYUJI OKITSUを設立。建築、デザイン、アートの領域をボーダレスに考え活動している。作品はコンセプチュアルでタイムレスであり、環境と風景、空間に影響を与える事象、日常に潜む心の琴線に触れる現象に焦点をあてた設計を特徴としている。ミラノサローネサテリテへの出展や、海外の照明ブランドとのコラボレーションなど、グローバルにプロジェクトを展開。作品は国内外で評価され、多数のデザイン賞を受賞している。施設の開館時間前に行われたメディアツアーで、ツリーおよびオーナメントのデザインについて説明する沖津氏(Photo: TEAM TECTURE MAG)
YUJI OKITSU Website
http://www.yujiokitsu.com
「今回、表参道ヒルズのクリスマスのデザインを担うにあたり、このエリアの地域性を表現するとともに、この場所でしか体験できないツリーをつくり出すことに腐心しました。表参道・青山界隈は、日本におけるアートやファッションといった文化の発信拠点の1つであり、さまざまなカルチャーがクロスするまちです。ここから発信された情報、総じて文化が、人々をひきつけ、国外からも多様な人々が訪れます。そして、ツリーがあるこの建物は、安藤忠雄さんの設計で知られ、吹き抜けの大空間をスロープがぐるりと囲み、回遊性の高い内部空間となっています。建物の外に目を向けると、国内外の建築家が手がけた建築も立ち並び、246通りに槇 文彦さんが設計したスパイラル、JR架線の向こうには丹下健三建築である国立代々木競技場があります。これらの建築作品にみられる螺旋を、1つ大きなモチーフとしました。」
Photo: TEAM TECTURE MAG
「ツリーは、3つのリングと螺旋の二重構造で、上昇気流のような弧を描くかたちに、このまちとヒルズのさらなる発展と再生の願いを込めるとともに、表参道を起点としたクロスカルチャーを表現しています。外周部には、ペット(PET:Polyethyleneterephthalate)製のレンズをあわせて約4万枚、鉛直に吊るしています。レンズがもたらす白い光だけが宙に浮かんでいるようにしたかったので、レンズには小さな孔とスリットだけを開け、この小さな孔同士を連結することで、糸や金具といった他の素材なしで、レンズだけでリボンのような螺旋のスクリーンを構築しているのが特徴です。面の向きは90度の角度で2方向に揃え、訪れた人がツリーに近寄り、覗き込むと、その人の姿だけでなく、周囲の景色も取り込み、かつ多数のレンズで複製されて、万華鏡のような景色がそこに映し出されます。」
ツリーを構成する約4万枚のレンズは直径5.5cm、厚み0.3mm、重量は1枚あたり0.9g、素材はPET(Polyethyleneterephthalate)製
Photo: TEAM TECTURE MAG
映り込む素材として鏡(ミラー)があるが、沖津氏は「ほかにはないツリーをという革新性を求めたクライアントの要望に応えるとともに、向こう側を透過しつつ、まわりの景色を取り込む素材としてレンズを採用した」とのこと
今回の展示では、”光のツリー”のほか、階段下に設置された大小2つのオーナメントと、吹抜け空間の上層に吊された複数のオーナメントも沖津氏がデザインしています。
オーナメントのレンズはツリーと同じPET製で、厚みは0.4mm。階段下の2つのオーナメントの足元に示された推奨の立ち位置からレンズを通してツリーを見上げると、上の画のような複合レンズならではの視覚効果が得られる
沖津氏はこれまでにもレンズを用いた作品を発表しており、「DESIGNART TOKYO 2022」でも展示された〈FOCUS〉がある。「経験値から、万華鏡のような視覚効果が得られることはわかっていた」と沖津氏談
上層の複合レンズ越しのツリーの見え方は、映り込むまわりのブティックや広告看板の色味などをあらかじめ考慮したうえで、オーナメントの角度を決めて設置されている
「理論上では、多角形を組み合わせていけば無限に大きくできる。ずっと温めていたアイデアを実現できた。我々の新たなシリーズになると思います」(沖津氏談)
「エスカレーターやスロープで館内を巡り、あちらこちらからこのツリーを眺めてほしい」と沖津氏。”光のツリー”の視覚体験は、そのまま安藤建築の空間体験となる
ツリーのそばに設置されたモニターでは、〈Christmas tree of Light〉のメイキング風景とあわせて沖津氏のインタビュー映像もループ上映されている
Photo: TEAM TECTURE MAG
展示期間中、20分ごとに約2分間の「音と光の特別演出」が行われるのも見どころです(上の画はその一部、緑色のほか、赤と黄色の光がツリーを包む)。
期間:2024年11月13日(水)~12月25日(水)
会場:表参道ヒルズ
所在地:東京都渋谷区神宮前4丁目12-10
ツリー点灯時間:11:00-23:00 ※営業時間によって変更される場合あり / 光の演出初回は11:20、最終回は22:20
クリスマスイベント詳細
https://www.omotesandohills.com/sp/christmas2024/