建築家・永山祐子の展覧会「永山祐子個展 確かにありそうなもの」が9月20日より開催されます。
会場となるAWASE galleryは、既存建物を改修して今年6月にオープンした、複合的に運営されているギャラリーです(施設概要は後述)。
本展は、永山氏の作品集『永山祐子作品集 建築から物語を紡ぐ』(グラフィック社)と新書『建築というきっかけ』(集英社)の刊行を記念して開催されるものです。永山氏の個展は、2013年に東京・表参道の[EYE of GYRE]にて開催された「建築から始まる未来」展以来、12年ぶりとなります。
本展では、永山氏が関わった建築・デザインプロジェクトの模型やマテリアル(素材)、完成品であるプロダクトなどが展示されます。
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)および2020年ドバイ国際博覧会におけるパビリオンに関する展示のほか、能作とのコラボレーションで誕生した小さなジュエリーから、歌舞伎町の新たなランドマークとなった高層ビルまで、スケールや領域を横断して創作活動を続ける、近年の永山祐子氏の創作活動にスポットをあてて紹介します。

LOUIS VUITTON 大丸京都店 偏光板(光学フィルム)の筒

松坂屋名古屋店会員制ラウンジ 柱巻のオリジナルタイル

昭和女子大学正門 組子検証模型

豊島横尾館 赤ガラス

東急歌舞伎町タワー コンセプト模型

東急歌舞伎町タワー 青海波アルミキャスト

AOI CELESTIE COFFEE ROASTERY 大屋根オリジナルタイル

女神の森セントラルガーデン 森綾模様アルミキャスト(一部)
会場では、永山氏自身の音声による展示ガイドを無料で用意[*]。永山氏が手がけたジュエリーや家具、書籍(一部サイン本)の販売も行われます。
*.音声ガイドは音楽ストリーミング配信サービス・Spotify(スポティファイ)を使用
永山祐子氏コメント
今年、作品集と新書という2冊を刊行する節目に、AWASE galleryからお声がけをいただき、本展を開催することとなりました。
会場は2つの部屋で構成されています。
ひとつ目の部屋には、作品集の「レシピページ」を思わせる展示が広がります。発想の種や、思いがけないブレイクスルーをもたらしたモノが並び、私の頭の中をそのまま形にしたような空間となっています。
もうひとつの部屋では、作品集の第1章「動く建築」をテーマに、万博をはじめとするリユースのプロジェクトを実物のモックアップや映像を通して、かたちを変えながら未来へとつながっていく建築の姿として展示しています。
展示写真はタペストリーやTシャツとなっており、会期終了後も廃棄されることなく、誰かの手に渡り、新たに活かされることを願っています。
また、展示解説は音声でお聞きいただけますので[*]、会場で作品とあわせて、あるいは帰り道などに耳を傾け、展示の理解を深めていただければと思います。永山祐子氏 プロフィール:1975年東京生まれ。青木淳建築計画事務所を経て2002年永山祐子建築設計設立。これまでの主な仕事に、豊島横尾館、ドバイ国際博覧会日本館、東急歌舞伎町タワー、大阪・関西万博におけるウーマンズパビリオンおよびパナソニックグループパビリオン「ノモの国」などがある。
主な受賞に、JIA新人賞(2014)、山梨県建築文化賞、東京建築賞優秀賞(2018)、照明デザイン賞最優秀賞(2021)、WAF Highly Commended(2022)、IFデザイン賞(2023)など。現在、東京・丸の内で建設中の〈Torch Tower〉など複数のプロジェクトが進行中 永山祐子建築計画 ウェブサイト:http://www.yukonagayama.co.jp/

『永山祐子作品集 建築から物語を紡ぐ』(グラフィック社、2025年)書影と中面の一部(序文 / 日本語)
会期:2025年9月20日(土)〜10月12日(日)
開廊時間:12:00-19:00
休廊日:月・火曜
入場料:無料
会場:AWASE gallery
所在地:東京都新宿区新宿3丁目32-10 松井ビル8F(Google Map)
主催:AWASE gallery、永山祐子建築設計

新宿の築60年を超える老舗ビルの8階にオープンした、複数の現代アートギャラリーの1つ。改修設計を永山祐子建築設計に在籍する建築家の松井 陸氏が設計を担当した。ギャラリーのディレクターを務めるアーティストの山田康平氏との共同主宰。
所在地:*上記・本展覧会開催概要を参照
設計:松井 陸、関 健太、中村幸介
施工:古崎、三井工務店
塗装:KSAG
竣工写真撮影:関 健太
オープン:2025年6月

Photo: kenta seki
設計コンセプト
ビルは5〜6年後の建て替えを目標としており、数年間かけてテナントを減らしている。そこでビルが新しく建て替わる際に引き継げる「場」を育てることを目標に、オルタナティブスペースを設けることとなった。
このスペースでは現代アートの展覧会を軸にしつつも、決してクローズな環境にはせず、地域や企業とも連携ができるスペースを設けることで、開かれた場をつくることが目標とされた。空間は2つのアートギャラリーとそれらに挟まれる共有スペースの3つの空間によって成り立っている。
3つの空間体験を一連に捉えられるように、同じロの字型の照明と床仕上げを設けている。一方で、空間の平面形状や天井高、景色の抜けは、各部屋毎に異なる要素がある。このような少量の”あべこべさ”は、統一された都市計画に合わせつつも部分的に個性が生まれていく街のようにも見え、潔癖になりがちなギャラリーの緊張空間に少しの緩和をもたらす。各ギャラリー同士は、一般的なギャラリー複合施設のように空間が完全に切り分けられておらず、美術館のように統一されたフォーマットで並べられる展示室でもない、共同体と単体が両立するような複合体である。
このような展示空間のシークエンスは、連関しつつも予定調和にならない新たな体験になると考えており、3つの空間の展覧会の内容が変わる度に、新たな発見が生まれることを期待している。(松井 陸)AWASE gallery Website
https://awase-gallery.com/