COVID-19(新型コロナウイルス感染症)による影響が生活のすべてに及ぶ中で、空間デザインにはどのような変化があったのか。
TECTURE MAG の2020年の主な記事をテーマごとに振り返る、本特集。
全3回の第2回のテーマは、空間ビジネスの新たな展開について。
来たる2021年とニューノーマル時代を切り拓く、空間デザインのヒントにしていただきたい。
■集い交流することが阻まれる
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)では、複数人が集い交流することに大きなブレーキがかかった。
コロナ以前は「にぎわい」や「交流・コミュニケーション」といった要素には、楽しく心温まるアクティビティや時間、そして空間が伴っていた。
しかしコロナ以降は一転し、「密」という言葉とともにネガティブなイメージがつきまとっている。
「ウィズコロナ時代の生活者の旅行意識調査」より(ロコガイド、2020.7.22-29、有効回答数:1,963名)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000023072.html
それでも、交流やにぎわいから得られる感覚は、人間にとって必要不可欠なものであるはず。
コロナの影響を、空間デザインはどのように乗り越えることができるのか。
2020年は、空間の伴うビジネスのアイデアも多く生まれた年であった。
そのいくつかを、ピックアップしよう。
■アウトドアに空間デザインを広げる
人を集める考えのもとに計画された閉じた空間は、ニューノーマル時代には敬遠されるはず。
そうした予測のもと、また近年のアウトドア人気の高まりも受けて、オープンエアで開放的なアウトドア施設の整備が加速している。
テレワークの一般化とともに、働くための場としても、アウトドアの魅力は高まっている。
【PICK UP!】
●焚き火を囲む、ニューノーマル時代の新しいビジネス合宿施設「TAKIVIVA」が北軽井沢に開業
https://mag.tecture.jp/business/20200904-12952/
プロセスデザインによる企業風土改革コンサルティングを行っている株式会社スコラ・コンサルトと、日本最大級のキャンプ場「北軽井沢スウィートグラス」を運営する有限会社きたもっくは、群馬県吾妻郡長野原町北軽井沢に宿泊型ミーティング施設「TAKIVIVA(タキビバ)」を9月1日に開業。ビジネス合宿サービス「TAKIBIcation(タキビケーション)」を提供する。
【その他の注目記事】
●スノーピークとJR九州が包括連携協定を締結、アウトドアを通じた地域の魅力向上や観光誘致へ協働
https://mag.tecture.jp/business/20201104-16844/
九州旅客鉄道は、新潟県三条市に本社を構えるスノーピークと包括連携協定を締結、九州全域における、アウトドアを通じた地域の魅力向上や、観光誘致、また新たなライフバリューの提案を行っていく計画であることを発表。
オフィスワーカー向け野外ワークスタイル(キャンピングオフィス)の提案も。
●遊休化している公共施設をアウトドアリゾートへと再生させる新事業をコスモスイニシアが開始
https://mag.tecture.jp/business/20200717-9831/
大和ハウスグループのコスモスイニシアは、国や地方自治体が所有する公共施設等を活用したアウトドアリゾート事業を開始。
ワーケーションの場として、ロッジやテント、アウトドアスペースを利用するサービスも開始している。
■分散型のツーリズムを発見・発信
大人数で長距離を移動するツーリズムが敬遠される一方で、少人数で近距離への旅行が見直された2020年。
少人数で訪れる近場ならではの魅力を、どう再発見・再編成して発信するかが問われている。
【PICK UP!】
●withコロナ時代のマイクロツーリズム。村全体が1つのホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」に新棟〈崖の家〉オープン
https://mag.tecture.jp/business/20200727-10507/
地域内にホテルの客室を分散させる「分散型ホテル」は以前からあったが、withコロナ時代に向いている形態といえるだろう。
古民家を活用した「NIPPONIA 小菅 源流の村」では、1棟貸し客室をオープンさせ、他の宿泊客と接しないように配慮した部屋でのチェックインとチェックアウトをするなど、いわゆる3密を回避したサービスを提供する。
【その他の注目記事】
●隈建築をガイド付きで。日本交通タクシー「隈研吾 建築ツアー in Tokyo」10/16より運行
https://mag.tecture.jp/event/20201009-15547/
日本交通は、隈研吾建築都市設計事務所監修のもと、タクシーで都内の隈研吾が設計した建築作品を巡る「隈研吾 建築ツアー in Tokyo」を実施。ツアー催行中は、乗務員のマスク着用、手洗い・うがいの徹底、車内除菌清掃、窓開けによる換気など、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)予防対策を徹底するという。
■デジタルテクノロジーを利活用
非接触が求められる時代にあって、デジタルテクノロジーの活用がその一助となる。
合理化や効率化のために普及が進んできた技術は、感染防止という側面からも注目されることとなった。
【PICK UP!】
●チームラボがCOVID-19拡散防止対策に活用できる時間制来館者システムの提供を開始
https://mag.tecture.jp/business/20200520-5917/
最新のテクノロジーを活用したデジタルソリューションを幅広く手がけるチームラボが、美術館、水族館、遊園地などさまざまな集客施設において、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)防止対策として導入が可能な、時間制来館者システム「チームラボチケッティングシステム」の提供を開始。
チームラボが東京・台場で運営している「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」(TECTURE MAGレポート記事)で開館当初より導入されているもので、来場者が希望した日の入場時間にあわせて、スマートフォン端末などを経由してチケットをQRコードで販売する。
【その他の注目記事】
●高級賃貸サイト「モダンスタンダード」がオンライン内覧を強化(COVID-19対策)
https://mag.tecture.jp/business/20200402-1429/
日本最大級の不動産投資サイト「RENOSY(リノシー)」を運営する、GA technologies(GAテクノロジーズ)は、新型コロナウイルス感染症拡大による不動産取引の非対面式サービスの需要の高まりを受けて、取引の一部をオンライン化、3Dウォークスルー画像によるオンライン内覧コンテンツを強化。
●安藤忠雄や坂茂が設計したホテルなどをバーチャル体験できるサービスサイト「DOOR TO THE FUTURE」
https://mag.tecture.jp/business/20201122-18048/
「いつか行きたい場所を、いまから楽しむウェブメディア」をコンセプトに、魅力的な観光施設や宿泊施設をオンライン上に再現し、体験、応援できるプロジェクト「DOOR TO THE FUTURE」がローンチ、サービスの提供を開始。
■2021年以降のビジネス×空間は!?
COVID-19の感染防止の側面から、またソフト・ハードを問わず、多角的な対応が求められるようになった2020年。
利用者の不安とともに、これまでの課題を解消するサービスが登場してきている。
そして、領域や業界を超えた提携や連携に、新たなビジネスが生まれる兆しが見られる。
TECTURE MAGでは2021年も、新たな空間×ビジネスの事例を取り上げ、深堀りしていく。
次回「ニューノーマル時代の空間デザインとクリエイティブ Ⅲ」では、「コロナから創出! 未来に跳躍するプロダクト」として、コロナを受けた新しい形態のプロダクトの数々と傾向を特集する。
(jk)
【2020-2021 特別企画】
ニューノーマル時代の空間デザインとクリエイティブ
Ⅰ コロナで加速! 働き方とワークプレイスの変革
Ⅱ コロナに着想! 進化する空間ビジネス
Ⅲ コロナから創出! 未来に跳躍するプロダクト