FEATURE
The first exhibition of "ELEMENT GALLERY," an online gallery that crosses fiction and reality
FEATURE2023.03.10

フィクションとリアルを横断するオンラインギャラリー"ELEMENT GALLERY"

旧築地市場よりインスパイアされた空間をDOMINO ARCHITECTS、SUNJUNJIE、Gottinghamからなるコレクティブ・FICCIONESが構築

架空の空間で実作品を展示、販売するためのギャラリー空間

インターネットの仮想空間に、ELEMENT GALLERY(エレメントギャラリー)がオープン。こけら落としとなる展覧会「Fictional Fact」が1月28日から3月31日まで開催されています(入場・閲覧は無料)。

こちらのギャラリー空間で展示されるのは、現実世界に存在するアート作品です。コンセプトは、フィクションとリアルを横断するオンラインギャラリー。販売される作品の購入者には、NFT(Non-Fungible Token)と呼ばれる非代替性トークン作品ではなく、出展したアーティストが制作した実際の作品が配送されます。

オンラインという非リアルで鑑賞には制約もある環境において、実在するアート作品を鑑賞してもらい、かつ購入まで誘導するために、建築家の大野友資氏らが参画したプロジェクトメンバーが、従前にはない、かつリアル世界では建設が難しい壮大なギャラリー空間を創り出しています。

※本稿1枚目の画像クレジット:Ficciones, “M.C.W.M (Video)” © DOMINO ARCHITECTS + SUNJUNJIE + Gottingham (Licenced under CC-BY 4.0)

Ficciones, "M.C.W.M (Video)" © DOMINO ARCHITECTS + SUNJUNJIE + Gottingham (Licenced under CC-BY 4.0)

各領域のデザイナー、クリエイターが多数参画

コンピュータで生成された架空の建築空間(CGI建築: Computer Generated Imagery)を構築したのは、建築家の大野友資氏が代表を務めるDOMINO ARCHITECTS、映像作家のSUNJUNJIE、写真家のGottingham(ゴッティンガム)の3者からなるコレクティブ・FICCIONES(フィクショネス)[*]。そのほか、各領域のデザイナー、クリエイターが多数参画しています。

ELEMENT GALLERY(エレメントギャラリー)プロジェクトメンバー
運営・キュレーション:角尾 舞(デザインライター)
CGI建築構築:FICCIONES[*]
グラフィックデザイン:岡本健デザイン事務所(岡本 健、宮野 祐)
サイトディレクション:萩原俊矢
ウェブ制作・コーディング:N sketch(清水 快)
プロジェクトマネジメント・編集:山本梨央
写真:Timothée Lambrecq、清水はるみ
CGI内シャンデリアデザイン:Mario Tsai Studio
映像音楽:香田悠真
翻訳:ジェームズ・ケティング
PR:HOW INC.(小池美紀)
アドバイザー(コンセプト):クロス・フィロソフィーズ(吉田幸司、清水友輔)
アドバイザー(契約、規約など):CITY LIGHTS LAW(水野 祐、林かすみ)

「デジタル世界だからこそ実現可能な空間表現と、現実世界に存在する作品や製品、そしてギャラリーという空間とシステムが、ウェブサイトのプラットフォームとしての役割や機能と結びついたとき、どのようなあり方が可能となるのか。ここはその実験の場でもあります。」(ギャラリーオープンに際してのプレスリリースより、全文は後述)

Ficciones, "M.C.W.M (Video)" © DOMINO ARCHITECTS + SUNJUNJIE + Gottingham (Licenced under CC-BY 4.0)

旧築地市場からインスパイアされた空間

架空のギャラリーをイチから構築するにあたり、空間デザインではどのようなことに主軸が置かれたのか?
まず、モチーフとなったは、東京・築地にあった卸売市場の空間でした。

“設計”を担当した建築家の大野友資氏(DOMINO ARCHITECTS代表)は、すでに2018年に閉場している築地市場の内外観のディテールを参照するにあたり、東京市時代に発行された古い資料などを取り寄せています。建物の内外観が撮影された写真や、構造がわかる図面、全体の配置図などに目を通し、プロジェクトメンバーとともにELEMENT GALLERYの空間を創出しました。

ELEMENT GALLERY(エレメントギャラリー)
主要用途:ギャラリー
CGI(Computer Generated Imagery)建築:FICCIONES
サイン計画:岡本健デザイン事務所


2018年に惜しまれつつも解体された東京の築地市場。
鼻をつく魚の匂い、喧騒、湿った熱気。鉄道の回転半径に合わせて大きく弧を描いた鋼鉄の躯体。
かつて確かに現実世界に存在していた、その巨大でシンボリックな建築を、
架空世界のギャラリーのモチーフにすることを考えた。

外周に沿ってカーブしている鉄骨造の空間は、同心円状に無限に増殖していくだろう。
そうしてバウムクーヘンみたいに幾重にも重なったボリュームを、
ガラス・ファサードの羊羹みたいな新築棟が潔くまっすぐに貫いていく。
新築棟の中にはホワイトキューブの展示室が終わりなく連続している。

無限に増殖していくギャラリーでは、どんな大規模な展示にも対応できるし、どれだけ収蔵が増えてもいい。
そこで展示・販売されている作品や製品はどれも現実世界に存在していて、
ウェブサイトから実際に購入することができる。

そこはかつて本当に市場だったのかもしれないし、まったくそんなことはないのかもしれない。

text by FICCIONES

 

Ficciones, “M.C.W.M (Video)” © DOMINO ARCHITECTS + SUNJUNJIE + Gottingham (Licenced under CC-BY 4.0)

*FICCIONES(フィクショネス)プロフィール

DOMINO ARCHITECTS、SUNJUNJIE、Gottinghamからなるコレクティブ。建築家、CGアーティスト、写真家という枠を超えて活動する彼らの作品は、空間であり現象であり、物語である。
一連のイメージによって架空世界と物質世界とが互いに入れ子になっていくような作品を手がける。その創作は一貫して架空世界の中で行われる。複製・反復・循環の手法により物質世界では不可能な空間を構築し、素材を与え、撮る。

第1回企画展「Fictional Fact」には4人のアーティストが参加

ELEMENT GALLERYの運営とキュレーションを担当するのは、デザインライターの角尾 舞氏。
こけら落としとなる企画展「Fictional Fact」を開催するにあたり、角尾氏は出展する4人のアーティスト1人ひとりと「架空のギャラリーで展示するために適切な作品とは何か」について話し合い、そのうえで作品を選出しています。

出展作家(プロフィールは後述):AKI INOMATA、荒牧 悠、磯谷博史、鈴木康広

展示作品の大半は購入が可能、本展のビジュアルブックもあわせて販売されています。

出展作家 / 鈴木康広プロフィール

1979年静岡県生まれ。日常の見慣れた事象を独自の「見立て」によって 捉え直す作品を制作。公共空間でのコミッションワーク、大学の研究機関や企業とのコラボレーションにも取り組んでいる。
瀬戸内国際芸術祭 2010では全長11メートルの《ファスナーの船》を出展。2014年水戸芸術館 鈴木康広展「近所の地球」、金沢21世紀美術館 鈴木康広「見立て」の実験室を開催。2016年「第1回ロンドン・デザイン・ビエンナーレ 2016」に日本代表として出展。2017年から2018年にかけて箱根・彫刻の森美術館にて個展「鈴木康広 始まりの庭」開催。
武蔵野美術大学空間演出デザイン学科准教授、東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室客員研究員。
2014毎日デザイン賞受賞。平成29年度文化庁文化交流使。
作品集に『まばたきとはばたき』『近所の地球』(青幻舎)、絵本『ぼくの にゃんた』『りんごとけんだま』(ブロンズ新社)などがある。

Yasuhiro Suzuki Website
http://www.mabataki.com/

Yasuhiro Suzuki Instagram @mabataki_suzuki
https://www.instagram.com/mabataki_suzuki/

出展作家 / AKI INOMATAプロフィール

アーティスト。1983年生まれ。2008年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。東京都在住。
2017年アジアン・カル チュアル・カウンシルのグランティとして渡米。生きものとの関わりから生まれるもの、あるいはその関係性を提示している。
これまでの主な作品展示に、ナント美術館(ナント)、十和田市現代美術館(青森)、北九州市立美術館(福岡)での個展のほか、2018年「タイビエンナーレ」(クラビ)、2019年「第22回ミ ラノ・トリエンナーレ」トリエンナーレデザイン美術館(ミラノ)など、国内外で多数。
2020年に『AKI INOMATA: Significant Otherness 生きもの と私が出会うとき』(美術出版社)を刊行。

AKI INOMATA Website
https://www.aki-inomata.com/

AKI INOMATA Instagram @akiinomata
https://www.instagram.com/akiinomata/

出展作家 / 磯谷博史プロフィール

美術家。1978年生まれ。東京藝術大学建築科を卒業後、同大学大学院 美術研究科先端芸術表現専攻およびロンドン大学ゴールドスミス校で美術を学ぶ。写真、彫刻、ドローイング、それらの相互の関わりを通して、事物への認識を再考している。
近年の主な展覧会に「動詞を見つける」(小海町高原美術館、長野、2022)、「Constellations: Photographs in Dialogue」(サンフラン シスコ近代美術館、2021)、「L’image et son double」(ポンピ ドゥー・センター、パリ、2021)などがある。

Hirofumi Isoya Website
https://www.whoisisoya.com/

Hirofumi Isoya Instagram @hirofumi_isoya
https://www.instagram.com/hirofumi_isoya

出展作家 / 荒牧 悠プロフィール

アーティスト。神奈川県生まれ。慶應義塾大学政策メディア研究科修了。構造や仕組み、人の認知に注目した作品を制作している。つくるオブジェは動いたり動かなかったり、扱う材料はさまざま。
これまでに参加した主な展覧会に「単位展-あれくらい それくらい どれくらい?」(21_21 DESIGN SIGHT、2015年)、「デザインの解剖展:身近なものから世界を見る方法」(21_21 DESIGN SIGHT、2016年)、「すがたかたち展」(青山スパイラル、2017年)、個展「青と赤展」(Hikarie 8/ aiiiima、2018年)「ストゥラクチャ」(Hikarie 8/ aiiiima、2021年)などがある。

Haruka Aramaki Website
https://harukaaramaki.com/

Haruka Aramaki Instagram @haruka_aramaki
https://www.instagram.com/haruka_aramaki/

ELEMENT GALLERY 開設の背景

「世界的なパンデミック以降、オンラインで作品を見せたり、販売したりする企画も増え、また、現実の美術館を3DやVRで見渡せるウェブサイトやサービスも、数多く誕生しました。
しかし、Web上で作品を発表するという行為自体は、インターネット黎明期の1990年代から存在しています。ネットアートと呼ばれる分野も同時期に確立されました。
このギャラリーが目指すのは、ネットアートの再興ではありません。同時に、いま現実世界に存在する空間の複写でもありません。さらには、VRやARのようなリッチなウェブコンテンツでも、NFTのような形式でもありません。
デジタルだからこそ実現可能な建築空間と、現実世界に存在する作品と製品、そしてギャラリーという空間性を持つシステムが、ウェブサイトにおけるプラットフォームとしての役割や機能と結びついたとき、どのようなあり方が可能となるのか。その実験であり、実践の場として、今回の企画をメンバーで立ち上げました。この空間を用いて、今後も新しい企画やコラボレーションができればと考えています。」(ギャラリー運営・キュレーター / 角尾 舞)

Ficciones, "M.C.W.M #7 (Spread)" © DOMINO ARCHITECTS + SUNJUNJIE + Gottingham (Licenced under CC-BY 4.0)

ELEMENT GALLERY コンセプト

ELEMENT GALLERYは、フィクションとリアルを横断する架空のギャラリーです。オンライン上の展示空間で、現実世界に存在する作品を展示、販売します。

デジタル世界だからこそ実現可能な空間表現と、現実世界に存在する作品や製品、そしてギャラリーという空間とシステムが、ウェブサイトのプラットフォームとしての役割や機能と結びついたとき、どのようなあり方が可能となるのか。ここはその実験の場でもあります。
あえて自由に動き回るのではなく、写真や映像だけで理解してしまうのではなく、想像の余地を規定しながら作品にふれることで、非日常の体験ともいえる美術館での鑑賞行為を、オンラインで新たな体験として生み出せないかと考えました。

リアルへの渇望と、架空世界への憧憬が混ざり合う、どこにもないギャラリーへようこそ。

Ficciones, "M.C.W.M #3 (Spread)" © DOMINO ARCHITECTS + SUNJUNJIE + Gottingham (Licenced under CC-BY 4.0)

企画展「Fictional Fact」開催概要

出展作家:AKI INOMATA、荒牧 悠、磯谷博史、鈴木康広
会場:ELEMENT GALLERY
会期:2023年1月28日(土)〜3月31日(金)
入場料:無料

展覧会公式ブック『Visual Book of ELEMENT GALLERY』
仕様:ドイツ装、2冊組み
・ビジュアルブック:A5サイズ 40ページ
・Fictional Fact・図録:A5サイズ、36ページ、中綴じ
販売価格(消費税・国内送料込):3,300円
詳細
https://shop.elementgallery.net/collections/books/products/element-gallery-visual-book

ELEMENT GALLERY(エレメントギャラリー)ロゴ

ELEMENT GALLERY(エレメントギャラリー)ロゴデザイン:岡本健デザイン事務所

ELEMENT GALLERY Website
https://elementgallery.net/ja

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