敷地のある雲雀丘花屋敷は地名のとおり屋敷街として栄えた街である。戦後、敷地の細分化、ミニ開発が進み、現在では、大規模な邸宅と築35年前後の戸建住宅が混在するエリアとなっている。また、前者は高い塀を後者は低い塀を敷地境界に沿ってぐるりと回していることで街並みにどことなく連続感が生まれ、この街固有の風景を形成している。
しかし、よくよく観察すると、低い塀と住宅の間には低層住居地域の外壁後退による1mほどの庭しか設けることができず、狭小でプライバシーのない死に地となっているパターンの住宅が多く見られる。
敷地となる既存建物も、敷地周囲に約1mの塀を立て、1m幅の庭に囲われた典型的な住宅であり、これを建て替えるにあたって施主は、「家の前を通る通行人と目が合わないようにしたい」ということと、「自然光を採り入れた明るい住宅にしたい」という思いからコートハウスを望まれていた。
そこで、まち / 塀 / 庭 / 建物の関係性を再考し、花屋敷という住宅地におけるコートハウスのあり方を見出す必要があると感じた。
まず建物をできるだけコンパクトに建てて道路からの十分な後退でプライバシーを向上させ、大きな庭をとることを考えた。そして道路に面する塀をかつての屋敷のように高く立てて、さらにプライバシーを向上させながら屋敷街の風景に馴染ませることを試みた。そして、その庭に対して建物を開くことで、庭のようなインテリアのようなひとつながりの大きな空間をつくり、庭と建物の間を行き来するように暮らせるようにした。
かつての屋敷街で不可逆的に進行するミニ開発の中、塀によって最小限の床面積で最大限の空間を獲得した新しい住宅が、暮らしをより豊かにしてくれる「小さな屋敷」となる在り方を提示したい。（近藤陽子＋近藤直人）
Open courthouse that blends in with the landscape of the mansion district
The site is in Hibarigaoka-harnayashiki, where there used to be many big mansions. After the worldwide war, those sites were split, and now there are small new houses and big old mansions.
Those big old mansions have tall walls, and those small new houses have low walls. Those small houses’ footprints were maximized, and they have small gardens as the alley. Those gardens are not useful, and those houses do not have enough privacy. The clients wanted enough privacy and well-lighted rooms. So we reconsidered the relationship between wall, garden, and house and proposed courthouse.
We minimalized the house’s footprint and maximized the garden. And we designed taller walls as big mansions. A taller wall can keep the privacy and become familiar with the surrounding big mansions. The house is open to the garden. The garden can be used as the interior.
We did not design a small house. And we design the small mansion. (Yoko Kondo + Naoto Kondo)
【HEY HOUSE】
所在地：兵庫県
用途：戸建住宅
クライアント：個人
竣工：2017年
設計：nLDK
担当：近藤陽子＋近藤直人
構造設計：片岡構造
施工：丹生
撮影：笹倉洋平
工事種別：新築
構造：木造
規模：地上2階
敷地面積：143.45m²
建築面積：52.23m²
延床面積：96.04m²
設計期間：2016.12-2017.06
施工期間：2017.06-2017.11
【HEY HOUSE】
Location: Hyogo, Japan
Principal use: Residential
Client: Individual
Completion: 2017
Architects: nLDK
Design team: Yoko Kondo + Naoto Kondo
Structure engineer: Kataoka Structure
Contractor: Tansei
Photographs: Yohei Sasakura
Construction type: New Building
Main structure: Wood
Building scale: 2 stories
Site area: 143.45m²
Building area: 52.23m²
Total floor area: 96.04m²
Design term: 2016.12-2017.06
Construction term: 2017.06-2017.11
