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麻布台ヒルズギャラリー開館記念展「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」

[Report]SOEキッチンとのコラボカフェ「THE KITCHEN」も期間限定オープン

東京・港区に11月24日にオープンした新街区「麻布台ヒルズ」の主要施設のひとつ、麻布台ヒルズギャラリー(東京都港区虎ノ門5丁目)にて、こけら落としとなる麻布台ヒルズギャラリー開館記念展「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」が開催されています。

『TECTURE MAG』では、11月22日にプレス向けに開催された、森美術館館長・片岡真実氏によるギャラリーツアーを取材。施設の概要と本展についてレポートします。

オラファー・エリアソン展2023

片岡氏によるメディアガイドツアーの様子(手前の作品:〈ダブル・スパイラル〉2001) Photo: TEAM TECTURE MAG

INDEX

・麻布台ヒルズギャラリー 施設概要
・作家プロフィール
・「麻布台ヒルズ」に設置されたパブリックアートとの連動展
・自然・宇宙・環境への意識の高さを示す展示構成
・光と水を用いた大型インスタレーション〈瞬間の家〉
・アーティストメッセージ
・本展開催概要
・コラボレーション企画「THE KITCHEN」

麻布台ヒルズギャラリー 施設概要

ギャラリーがあるのは、麻布台1丁目・虎ノ門5丁目・六本木3丁目にまたがる広域な「麻布台ヒルズ」のうち、ヘザウィック・スタジオがデザインを手がけた低層部の1つ、麻布台ヒルズガーデンAのMB階です。

新街区「麻布台ヒルズ」11/24開業、商業施設、オフィス、ウェルネス、ギャラリー、グリーンを複合・集約したコンパクトシティ[内覧会レポート]

「麻布台ヒルズ」全体で約9,300m²を有する文化施設のうち、麻布台ヒルズギャラリーの施設面積は約2,300m²、展示面積は700m²(六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーは約1,000m²の規模)。さまざまな事業者に会場を貸し出し、活用してもらう前提で計画されており、来年の4月以降は原則として貸しギャラリーとして運営されます。

本展は「麻布台ヒルズ」の開業および麻布台ヒルズギャラリーの開館を記念するものとして、森美術館館長の片岡真実氏と同館アソシエイト・キュレーターの德山拓一氏が企画者として参画し、国際的なアーティストであるオラファー・エリアソンの作品がオープニングを飾っています。

作家プロフィール

オラファー・エリアソン 近影

Photo: Lars Borges

オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)
1967年生まれ、アイスランドとデンマークで育つ。1995年にベルリンに移住し、スタジオ・オラファー・エリアソン(SOE)を設立。1997年以降、インスタレーション、絵画、彫刻、写真、映像など幅広いジャンルの作品を発表、世界の主要な美術館で個展を開催している、当代を代表するアーティストのひとり。現在はデンマーク・コペンハーゲンとドイツ・ベルリンを主な拠点として活動中。現在、ベルチンにあるスタジオ・オラファー・エリアソンは、職人、建築家、アーキビスト(archivist)、研究者、管財人、料理人、プログラマー、美術史家、専門技術者らによって構成され、大規模なチーム編成で作品制作が行われている。
2019年に国連からの任命で、再生可能エネルギーと気候変動対策に関する国連開発計画の親善大使に就任。2023年に第34回高松宮殿下記念世界文化賞彫刻部門を受賞したほか、受賞歴多数。

Studio Olafur Eliasson Website
https://olafureliasson.net/

 

麻布台ヒルズ 森JPタワー パブリックアート

オラファー・エリアソン〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉展示風景:麻布台ヒルズ森JPタワー オフィスロビー(2023年) 撮影:木奥恵三

麻布台ヒルズ 森JPタワー パブリックアート

オラファー・エリアソン〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉展示風景:麻布台ヒルズ森JPタワー オフィスロビー(2023年) 撮影:木奥恵三

「麻布台ヒルズ」に設置されたパブリックアートとの連動展

オラファー・エリアソンは「麻布台ヒルズ」内に展開するパブリックアートの出品者のひとりでもあり、森JPタワーのオフィスロビーには〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉 と題した、直径約3mの作品が、高さ約15mの吹き抜け空間に4連で吊り下げられています(上の画、作品の詳細は後述)。本展の開催には、このパブリックアートへの理解をより深めてもらいたいという狙いがあり、この作品を構成する金属と元の素材を同じくする作品(新作)が、麻布台ヒルズギャラリー会場に展示されています。

自然・宇宙・環境への意識の高さを示す展示構成

本展で来場者を最初に迎えるのは、展覧会フライヤーのビジュアルにも採用されている作品〈蛍の生物圏(マグマの流星)〉です。こちらは個人蔵の作品であるため、貴重な観覧の機会となります。

オラファー・エリアソン展2023

オラファー・エリアソン〈蛍の生物圏(マグマの流星)〉2023年 麻布台ヒルズギャラリー(Photo: TEAM TECTURE MAG)

この小さな多面体は、スタジオ・オラファー・エリアソンの数十年にわたる研究の成果であり、関連する16の吊り彫刻シリーズのひとつです。同心円状に配置された3つの多面体は、小さいものが他の多面体の中に入り込み、幾何学的な形、影、色の精巧な配列を作り出し、それらが周囲の壁に投影されます。(本展作品リストより)

オラファー・エリアソン展2023

複雑に屈折する光を内包する幾何学立体〈蛍の生物圏(マグマの流星)〉 Photo: TEAM TECTURE MAG

アイスランド系デンマーク人のオラファーは、活火山と氷河で知られる国・アイスランドの大自然の中で過ごしました。それゆえか、壮大な自然の法則や宇宙の物理学、これらの壮大なエネルギーへの関心が高く、それらがどのようにすれば人々の体験として転換されるのかを考えて作品制作に取り組んできたといいます。

加えてオラファーは、地球規模の環境問題に対する意識が極めて高いアーティストの1人としても知られ(2020年に東京都現代美術館(MOT)で開催された大規模個展でもその傾向が見られました)、片岡氏によれば、飛行機に搭乗する回数や作品の空輸も制限しており、本展への出品も船便にて日本まで運ばれたとのこと。

その意識の高さがかたちとなってあらわれているのが、本展のタイトルにもなっている、前述のパブリックアート作品〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉で、本展のために制作された新作〈呼吸のための空気〉の2作品です。

オラファー・エリアソン展2023

手前の床置きの作品:オラファー・エリアソン〈呼吸のための空気〉2023 Photo: TEAM TECTURE MAG

別稿・麻布台ヒルズ内覧会レポートにも記載しましたが、〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉および〈呼吸のための空気〉を構成している最小単位は、11の面をもつ双対象多面体です。素材にも特色があり、産業廃棄物などを燃焼させた際に発生する煙の中に含まれる(大気中に放散されても問題ないとされる微量の)亜鉛(あえん)を特別な方法で抽出した再生亜鉛合金(亜鉛90%)を採用してつくられています(技術協力:キバック)。

オラファー・エリアソン〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉 Photo: TEAM TECTURE MAG

オラファー・エリアソン〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉(部分)2023年 展示風景:麻布台ヒルズ森 JPタワー オフィスロビー、2023年(撮影:木奥 恵三)
螺旋状の構造体は、 遅さ、ディープ・タイム(地質学的な時間)、 そして量子幾何学の隠れた構造(リサジュー曲線)から着想を得て、それをダイナミックな立体に転換したもの(本展プレスリリースより)

麻布台ヒルズ 森JPタワー パブリックアート

オラファー・エリアソン〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉(部分)展示風景:麻布台ヒルズ森JPタワー オフィスロビー(2023年) 撮影:木奥恵三

11面の多面体は、菱形、凧型、三角形の3種類があり、いずれかの面同士を隙間なく接着させることができます。11という面が奇数であるため、 結果的に予期せぬ蛇行性が生まれ、さまざまな形状となるとのこと。「数学者や大学教授といった専門知識のない、例えば自身の母親でも、自宅で容易につくりだせる美しいかたち」であることがオラファーにとって重要なポイントです。

麻布台ヒルズ 森JPタワー パブリックアート

オラファー・エリアソン〈相互に繋がりあう瞬間が協和する周期〉(部分)展示風景:麻布台ヒルズ森JPタワー オフィスロビー(2023年) 撮影:木奥恵三

オラファー・エリアソン展2023

〈呼吸のための空気〉に取り付けられた4つのファンは会場にて可動、風を送りとどけており、私たちがそうとは知らずに体内に吸い込んでいる金属(亜鉛)の存在を知らしめ、意識させる。本作の表面はマット仕上げ、パブリックアートは鏡面仕上げ。 Photo: TEAM TECTURE MAG

オラファー・エリアソン展2023

「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」会場風景(Photo: TEAM TECTURE MAG)

また本展には、MOTでの大規模個展でも見られた、氷河から採取した氷の小片を使って制作された”水彩画”のシリーズら4点が出品。地球温暖化の深刻な状況を想い起こさせる作品です。

オラファー・エリアソン展2023

2017年の作品(4点とも、左から)〈溶けゆく地球 (バナジウム・イエロー)〉、〈あなたのエコーの追跡子〉、〈私のエコーの痕跡〉、〈溶けゆく地球 (カドミウム・イエロー、 グレー)〉。オラファーによる色彩研究の断片を示すものであり、使用されたのは、2014年に発表された〈アイス・ウォッチ〉制作時にグリーンランド沖で採取された氷河期時代の氷(Photo: TEAM TECTURE MAG)

オラファー・エリアソン展2023

オラファー・エリアソン〈終わりなき研究〉2005 Photo: TEAM TECTURE MAG

オラファー・エリアソン展2023

取り付けられた振り子の力でアームの連結部に取り付けられたペンが幾何学像を生成する。本展では観覧料プラス料金で本作品での描画を体験できる(予約制) 撮影:中戸川史明

壁に並んだ6点の作品も新作です。〈「オラファー・エリアソン:想像力を擁する砂漠」からのドローイング〉は、カタール・ドーハ近郊の砂漠に設置されたキャンバスに、ドローイングマシーン(カタール国立博物館で2023年に開催された展覧会 「想像力を擁する砂漠」のために設計されたもの)が、風で揺れる振り子の筆先から垂れたインクや、ガラスの球体が収れんした太陽光が白い紙の上につける焦げ跡などをドローイングの線と捉え、制作地の”肖像画”として見立てたものです。

オラファー・エリアソン展2023

〈「オラファー・エリアソン:想像力を擁する砂漠」からのドローイング〉2023 / 手前の2点〈風の記述〉(2023年5月31日、2023年5月23日) Photo: TEAM TECTURE MAG

オラファー・エリアソン展2023

「オラファー・エリアソン:想像力を擁する砂漠」からのドローイング / 太陽のドローイング (2点とも2023年4月18日) Photo: TEAM TECTURE MAG

オラファー・エリアソン展2023

「オラファー・エリアソン:想像力を擁する砂漠」からのドローイング / 手前の2点:〈風の記述〉(2023年4月29日、2023年4月12日)Photo: TEAM TECTURE MAG

続く”暗室”に、本展のメインピースとなる作品〈瞬間の家〉が展示されています。2010年の第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で披露された作品を再構成したものです。

光と水を用いた大型インスタレーション〈瞬間の家〉

オラファー・エリアソン展2023

オラファー・エリアソン〈瞬間の家〉2023 Photo: TEAM TECTURE MAG

〈瞬間の家〉は、不規則に動くホースの先から放たれる水が、ストロボの一瞬の光で暗闇の中に浮かび上がるというシンプルな作品ながら、残像も伴って美しい世界観を形成している。撒かれた水が床面で吸収され、浄水を経て再利用されている。

なお、本作品でいう「瞬間」とは、 2つの秒の間の空間を意味しているとのこと。

オラファー・エリアソン展2023

オラファー・エリアソン〈瞬間の家〉2023 撮影:中戸川史明

オラファー・エリアソン展2023

オラファー・エリアソン〈瞬間の家〉2023 Photo: TEAM TECTURE MAG

出口付近の最後の展示室では、動画「オラファー・エリアソン 片岡真実(森美術館館長)との対話」がループ上映されており、本展を読み解くための情報を得ることができます。例えば、本展のタイトルでもある「相互に繋がりあう」とは、価値観の共有・理想の共有を意味することや、11面の双対象多面体(バイシメトリック・ヘンデカヘドロン / 空間充填多面体)が1つひとつ手作業でかたどられていることなどが語られています。

アーティストメッセージ

すべてのものごとは、たとえ安定しているように見えるものでさえ、大きなスケールで見れば動きのなかにある。私たちの惑星、太陽、そして太陽系は、天の川を駆け巡り、中央のブラックホールを取り囲むように動いている。同時に、よくよく目を凝らせば、この世界は種々の構成要素から成り立っており、それらはまだ見ぬ「現実」の足場でもある。今のところ、私たちは夢のレベルでしかこれにアクセスできない。アートとは、想像力を駆使して、不可能を可能にし、見えないものを見えるようにすることなのだ。

オラファー・エリアソン

 


#森ビル YouTubeチャンネル「Azabudai Hills Artist Introduction|オラファー・エリアソン」(2023/11/28)

オラファー・エリアソン展2023

麻布台ヒルズギャラリー開館記念「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」開催概要

会期:2023年11月24日(金)〜2024年3月31日(日)
開場時間:10:00-20:00 ※日時指定の予約制(展覧会特設サイトにて受付)
休館日:2024年1月1日(月・祝)
会場:麻布台ヒルズギャラリー
所在地:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階(Google Map
観覧料金(通常):大人 1,800円、高校・専門・大学生 1,200円、4歳~中学生 900円
※作品体験付チケットは別途料金設定あり
主催:麻布台ヒルズギャラリー
後援:アイスランド大使館、デンマーク王国大使館
制作協力:チヨダウーテ
企画:片岡真実(森美術館 館長)、德山拓一(森美術館 アソシエイト・キュレーター)

詳細・展覧会特設ページ
https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/olafureliasson-ex/

麻布台ヒルズギャラリー公式SNS
https://www.instagram.com/azabudaihillsgallery/
https://www.facebook.com/azabudaihillsgallery/


コラボレーション企画「THE KITCHEN」

本展では、食の関連企画も同時開催。ベルリンのスタジオ・オラファー・エリアソン(SOE)のアトリエ内にある「SOEキッチン」とコラボレーションしたカフェ「THE KITCHEN」が、麻布台ヒルズガーデンプラザA B1Fの駅前広場に期間限定でオープン、コラボメニューを提供しています(運営:ソルト・コンソーシアム)。

オラファー・エリアソン展「THE KICHEN」

コラボレーション企画「THE KITCHEN」外観 撮影:中戸川史明

ベルリンに設立された「スタジオ・オラファー・エリアソン・キッチン」では週に3日、食事が提供されています。スタジオのチーム全員のほか、その時たまたまスタジオを訪れていたゲストやコラボレーターも同席。オーガニックで、CO2排出量も抑え、かつヴィーガン・ベジタリアンにも対応したメニューの食材は、スタジオ近郊の有機農場で採れた旬の野菜が使われています。

オラファー・エリアソン展2023

スタジオ・オラファー・エリアソン「キッチン」での昼食風景(2017年) 撮影:María del Pilar García Ayens

レシピ集『スタジオ・オラファー・エリアソン キッチン』(2016, Phaidon社)

オラファー・エリアソン展関連企画「THE KITCHEN」

「THE KITCHEN」フード&ドリンク(イメージ) 撮影:中戸川史明

オラファー・エリアソン展「THE KICHEN」

撮影:中戸川史明

オラファー・エリアソン展「THE KICHEN」

撮影:中戸川史明

麻布台ヒルズギャラリーカフェ

麻布台ヒルズギャラリー カフェ / スペース Photo: TEAM TECTURE MAG

麻布台ヒルズギャラリーショップスペース

麻布台ヒルズギャラリー 物販スペース Photo: TEAM TECTURE MAG

「麻布台ヒルズギャラリーカフェ」および「THE KITCHEN」詳細(ソルト・コンソーシアム 2023年11月14日プレスリリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000031558.html

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