FEATURE
What is “NOT A HOTEL”?
- Creating new luxury
【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#03「プロジェクトをドライブさせる力」
FEATURE2021.11.15

#03 The power to drive projects

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#03「プロジェクトをドライブさせる力」

前稿【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する「新しいラグジュアリー」#01、#02

FEATURE2021.11.10

#01 What is “NOT A HOTEL”?

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#01「 NOT A HOTEL とは?」
FEATURE2021.11.12

#02 When the new sense of values are expanded

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#02「新しい価値観が拡張されるとき」

「NOT A HOTEL(ノット ア ホテル)という、住宅でもホテルでもない、その中間を狙った、新しい滞在体験を具現化するプロジェクトを立ち上げ、進めているベンチャー企業、NOT A HOTEL代表の濵渦伸次と、栃木県・那須で進行中のフラッグシップモデル〈NOT A HOTEL NASU〉の設計を担当する、建築家の谷尻 誠と吉田 愛氏(SUPPOSE DESIGN OFFICE、以下、サポーズと略)に、鼎談形式で話を聞く今回のインタビューもいよいよ終盤。

本稿では、「プロジェクトをドライブさせる力」について、3氏の言質から探る。

左から、谷尻 誠、濵渦伸次、吉田 愛の3氏(〈社食堂〉にて)Photo: toha

〈NOT A HOTEL〉の今後

2020年4月にNOT A HOTEL株式会社を起業した濵渦氏。特集記事冒頭の #01 で紹介した経歴が示すとおり、ホテル業界の出身ではない。セオリーどおりでなかったからこそ、これまでにない、〈NOT A HOTEL〉という新しい形態のビジネスが生まれたのだと言える。

濵渦氏に最後に質問するのは、誰もが気になる〈NOT A HOTEL〉の今後の展開だ。

建築家と施主を育てるプラットフォームに

「これからは、協働するであろういろんな建築家の方に、その土地、その場所にあった建築を考えてもらいたいなと考えています。オンラインストアの買い物かごで販売するやり方は変わりません。パースを見て、買いたいなと思ってくれるオーナーと、建築家とを結ぶ、新しいプラットフォームになると、むちゃくちゃおもしろいんじゃないかと。」(濵渦氏談)

サポーズの2人も、NOT A HOTELが、建築の可能性を引き出してくれるようなプラットフォームに育っていくことを期待している。

日本では、建築家と施主との出会いがまだまだ少ないと2人は言う。良きオーナーがパトロンとなり、建築家を育てるその効果のほどは、海外では顕著に見られる。名建築が生まれ出る土壌が育まれるのだ。

NOT A HOTEL NASU THINK棟 離れの外観イメージ(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)

建築家としてコミットすべき課題

建築設計事務所を吉田氏とともに率いるだけでなく、社食堂を運営し、絶景不動産、Bird bath & KIOSK、そして2019年に山根脩平氏らとtectureを立ち上げた谷尻氏。プロフィールに「起業家」と明記する建築家は、日本では珍しい。
手広くビジネスを手がける理由を、谷尻氏は次のように語った。

建築家として目指しているところを語る谷尻氏 Photo: toha

「設計の仕事って、ある条件の枠内で、これくらいの予算でこれくらいのものをつくってと言われますよね。でも言い換えると、事業はこっちでやるから、空間だけつくってねって言われている気がして。僕は以前から、それがすごく嫌だなと思っていた。」(谷尻氏談)

〈NOT A HOTEL NASU〉イメージパース第1稿 ©︎SUPPOSE DESIGN OFFICE
サポーズによる「暗やみのデザイン」が〈NOT A HOTEL NASU〉の空間の最大の特徴(イメージパース第1稿 ©︎SUPPOSE DESIGN OFFICE)

「事業主がやろうとしていることやいろんな問題に、一緒にコミットしていきたいんです。それには、規模は違えども、自分たちでやってみないと、体験してみないといけない。建築家はもっと、予算のこととか、ビジネスとしてこうしたほうがいいよとか、本質的な話に寄っていけるはず。僕たちは、自分たちが建てるものに納得したいし、責任をもちたいから。」(谷尻氏談)

Photo: toha

吉田氏も「世の建築家は、建築にしか意識が向いてない」と現状を嘆く。
両氏は、設計事務所を構え、人を雇い、経営者としてのリスクを抱えているが、仕事を依頼する事業主たちと同じ目線と感覚を得なければ、自分たちの言葉にも説得力が出ないと考えた。理想だけで終わるのも嫌だった。

Photo: toha

「考える歩みを止めてはいけない」

サポーズのこの事業にコミットする姿勢は、〈NOT A HOTEL NASU〉でも示された。
時間がないスケジュールのなかで、濵渦氏サイドが了承したデザインにも関わらず、「こうしたほうがもっといいから」とプレゼンをやり直され、思わず閉口したこともあったという。
「書斎の天高を変えてきたりして。いやいや、こっちもスケジュールがありますから!って」と濵渦氏は笑う。

谷尻氏は苦笑しつつ、建築家としてそれが当たり前という立場を崩さない。「その提案によって、設計料が減額になることがあっても」と吉田氏も同意する。

「これから1年をかけてつくるあいだ、現場に通う担当者は、いつだって、もっとよくなるための提案を継続して行うべきなんです。情報はあるし、知識だってもっとつくし、考える歩みを止めてはいけない。ただし、方向性を間違った場合には、いろいろ大変なことになるだろうけどね(笑)。でも、そうやって勉強させてもらっているんですよ、僕らは。」(谷尻氏談)

プロジェクトをドライブさせる「決断力」

#01でも触れたが、銀行と話をしてからでは動かない事業が世のほとんどだろう。「自分たちでつくりたいものから考える」ことから始めたNOT A HOTELは、従前の経済の枠組みを軽々と超え、実現できることを示した。
起業家、実業家としての才ある濵渦氏だからこそ、可能となったことだと、谷尻氏は指摘する。

NOT A HOTEL NASU プロジェクト

〈NOT A HOTEL NASU 〉MASTERPIECE イメージパース(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
自然の中に建築を彫刻作品のように置いたイメージ

NOT A HOTEL NASU プロジェクト

空間の奥行きが5m以上あるTHINK棟 書斎イメージ(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)

「建築のプランって、仮にビジュアルが良くても、なかなかGOがかからない。これって経済的にどうなの?って言われる。でも、就職試験と同じで、2次、3次まで進むと尖ったやつがだんだんいなくなるように、建築のプランも、揉むと、どんどんふつうになっていっちゃう。でも、今回は、いきなり最終面接みたいな感じで(笑)。濵渦さんが決断してくれるから、プロジェクトを大きくドライブさせることができた。」(谷尻氏談)

濵渦氏が本当にやりたいこと

約束の収録時間の刻限が迫るなか、鼎談の終盤に、濵渦氏は「実は、本当にやりたいことはソフトウエアの開発」と吐露し、座の一同を少なからず驚かせた。
さらに「建築とテクノロジーは、ぜったいに相性がいい!」と言葉を続け、私たちTECTUREのコンセプトとの共通点を挙げてくれた。
TECTUREの立ち上げに大きく関わった谷尻氏も交え、話題は建築業界のDXへとシフトした。
続きは最終稿となる#04にて。

収録は約1時間、3氏からは常に熱量とワクワク感が発せられていた Photo: toha

前稿【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する「新しいラグジュアリー」#01、#02

FEATURE2021.11.10

#01 What is “NOT A HOTEL”?

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#01「 NOT A HOTEL とは?」
FEATURE2021.11.12

#02 When the new sense of values are expanded

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#02「新しい価値観が拡張されるとき」

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン TECTURE NEWS LETTER

今すぐ登録!▶

次稿【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する「新しいラグジュアリー」#04

FEATURE2021.11.17

#04 “NOT A HOTEL” expands the DX and future of architecture

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#04「NOT A HOTELが拡張する建築のDXと未来」

「NOT A HOTEL」関連記事

BUSINESS2021.09.28
NOT A HOTELがフラッグシップモデルの販売をオンラインストアで開始
CULTURE2022.07.16

〈NOT A HOTEL FUKUOKA〉2023年夏 福岡に竣工予定

NOT A HOTEL初の都市型コンドミニアム。⼩⼭薫堂監修、axonometric+NKS2 architectsが設計、インテリアを小坂竜 / A.N.D.が担当
CULTURE2022.08.01

藤本壮介最新作!

沖縄の海と空を独占する、丘のような屋根をもつFUJIMOTO建築〈NOT A HOTEL ISHIGAKI〉
CULTURE2022.08.02

SUPPOSE DESIGN OFFICEが温泉地のヴィラを設計

渓谷美をサウナ付きで堪能できる〈NOT A HOTEL MINAKAMI〉
CULTURE2022.08.03

暗さの中にある本当のラグジュアリー

SUPPOSE DESIGN OFFICEが設計する洞窟のような別荘〈NOT A HOTEL NASU〉に"CAVE"が登場!
CULTURE2022.08.04

S・M・Lサイズの服を選ぶように別荘を買う

「NOT A HOTEL PRODUCTS」第一弾は、White Mountaineeringの相澤陽介氏がディレクション
FEATURE2022.09.27

藤本壮介インタビュー:響き合い進化するプロジェクト

現地視察から3カ月で〈NOT A HOTEL ISHIGAKI〉の基本デザインが決まるまで
BUSINESS2022.10.07

NOT A HOTELが全国のホテルと提携するパートナー事業を開始

第一弾は沖縄〈UMITO PLAGE The Atta Okinawa〉の9室をHORIJUKUが販売
CULTURE2022.12.02

NOT A HOTEL 国内4拠点が続々開業、青島、那須に続き、広尾と浅草にも〈NOT A HOTEL EXCLUSIVE〉が2023年1月にオープン

ジェネラルデザイン、SUPPOSE DESIGN OFFICE、Wonderwall®︎片山正通、DAIKEI MILLS中村圭佑が設計を担当
CULTURE2023.12.08

藤本壮介氏が手がける〈NOT A HOTEL ISHIGAKI "EARTH"〉の最新ビジュアル

約3,000坪の敷地に1棟、約42億円でNOT A HOTELが販売を開始
CULTURE2024.05.04

SUPPOSE DESIGN OFFICEが設計した〈NOT A HOTEL NASU〉に3棟目の「CAVE」が開業

洞窟のような水風呂や開放的なサウナとインフィニティプール、自然に溶け合うリビングダイニングなどを内包

〈HOUSE T〉関連記事

PROJECT2021.01.09

HOUSE T / SUPPOSE DESIGN OFFICE

設計の範囲まで再考した、洞窟のような陰影と暖かみのある自邸
FEATURE2021.01.10

【Special movie & interview】Makoto Tanijiri's home "HOUSE T"

谷尻誠が自邸〈HOUSE T〉のコンセプトを語る動画と工事中の様子をおさめた動画を公開!
PRODUCT2021.10.19
建築家・谷尻 誠が Kasthall(カスタール)のラグを選んだ理由

DAICHI(ダイチ)TIOICS

FEATURE2021.02.23

【Special interview】What is "DAICHI"? -New form of natural development

新しい自然開発とは!? 「DAICHI」始動インタビュー:馬屋原竜 谷尻誠 齊藤太一 木本梨絵
BUSINESS2022.08.14

"NatureDevelopment"を掲げるDAICHIの新事業

谷尻誠、齊藤太一、馬屋原 竜らによる能動的ラグジュアリーな建築〈DAICHI ISUMI〉にて、会員制貸別荘サービス第一弾を開始
BUSINESS2024.03.31

SUPPOSE DESIGN OFFICEが設計した"名護の家"が1棟貸しヴィラに

海が美しく見える高さを考え抜いた建築、NatureDevelopmentを掲げるDAICHIがマッシグラと共同で宿泊施設〈DAICHI OKINAWA villa M〉として運営

U-40「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2024」

COMPETITION & EVENT2024.04.11

U-40「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2024」エントリー開始

次のNOT A HOTELとして実現・販売するデザインを公募、片山正通、藤本壮介、谷尻誠、吉田愛の4氏が審査を担当
  • TOP
  • FEATURE
  • INTERVIEW
  • 【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#03「プロジェクトをドライブさせる力」
【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン
お問い合わせ