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2025年4月13日より大阪で開催される日本国際博覧会(2025年大阪・関西万博)に出展する、民間パビリオンの情報です。
特定非営利活動法人ゼリ・ジャパン[*1]によるパビリオン〈ブルーオーシャンドーム(Blue Ocean Dome)〉の概要とイメージビジュアルが8月25日に発表されました。
同NPOの活動の1つである「海の持続的活用」の保全と啓発促進を目的とし、大阪府が掲げる「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」[*2]の実現に向けた出展です。
総合プロデューサーを原 研哉氏(日本デザインセンター代表取締役社長)、パビリオン建設に関する建築プロデューサーを坂 茂氏(坂茂建築設計 代表取締役)が務めています。
原 研哉(はら けんや)氏 プロフィール
1958年生まれ。グラフィックデザイナー。日本デザインセンター(NDC)代表取締役社長。武蔵野美術大学教授。
世界各地を巡回し、広く影響を与えた「RE-DESIGN:日常の21世紀」展をはじめ、「HAPTIC」「SENSEWARE」「Ex-formation」など既存の価値観を更新するキーワードを擁する展覧会や教育活動を展開。また、長野オリンピックの開・閉会式プログラムや、愛知万博のプロモーションでは、深く日本文化に根ざしたデザインを実践した。2002年より無印良品のアートディレクター。松屋銀座、森ビル、蔦屋書店、GINZA SIX、MIKIMOTO、ヤマト運輸のVIデザインなどを手がける。2019年7月にウェブサイト「低空飛行」を立ち上げ、個人の視点から、高解像度な日本紹介を始め、観光分野に新たなアプローチを試みている。
主な著作に『デザインのデザイン』(岩波書店、2003年)、『DESIGNING DESIGN』(Lars Müller Publishers, 2007)、『白』(中央公論新社、2008年)、『日本のデザイン』(岩波新書、2011年)、『白百』(中央公論新社、2018年)など多数。
坂 茂氏 プロフィール
東京生まれ。1985年坂茂建築設計を設立。1995年災害支援活動団体 ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)設立。紙管を使った災害時の復興住宅などで知られる。
主な作品に〈大分県立美術館〉〈静岡県富士山世界遺産センター〉〈ラ・セーヌ・ミュージカル〉などがある。
主な受賞に、プリツカー建築賞(2014年)、フランス芸術文化勲章コマンドゥール(2014年)、マザー・テレサ社会正義賞(2017年)、紫綬褒章(2017年)など多数。慶應義塾大学環境情報学部教授(2001-2008年)、京都芸術大学大学院教授(芸術研究科)、2023年4月より芝浦工業大学特別招聘教授。
ゼリ・ジャパンのパビリオンは、カーボンファイバー(炭素繊維強化プラスチック、Carbon Fiber Reinforced Plastics: CFRP)を主構造とし、さらに坂茂建築を代表するマテリアルである紙管や竹の集成材も使って計画されています。
パビリオンで使用するカーボンファイバー(CFRP)は、飛行機や車のボディなどに用いられている炭素繊維強化プラスチックです。鉄と同程度の強度を持ちながら、比重は約1/5。CFRPのグリッドシェル構造により、軽量かつ大規模な空間が実現可能であり、かつ、基礎に杭を打設せずに施工することができます。
さらに、万博終了後は解体・撤去されるため、リサイクルできないコンクリートではなく、基礎部分に仮設用の鉄骨を採用するなど、産業廃棄物の発生を徹底的に削減しているのが特徴です。
〈ブルーオーシャンドーム〉主な特徴
・カーボンファイバー(CFRP)を主構造に採用
・CFRPに加え、紙管、竹の集成材も使用
・仮設建築として、解体後の廃棄物を徹底的に削減
パビリオンの設計を手がける坂 茂氏は、2021年10月から2022年3月末まで、UAE(アラブ首長国連邦)で開催された「2020年ドバイ国際博覧会(ドバイ万博)」を原氏らとともに視察。このときの様子を配信した動画の中で[*3: 後述で動画のシェア表示あり]「半年間の展示が終わり、パビリオンを解体する際にできるだけゴミや産業廃棄物を出したくない。ここでは半年なりの別のテーマと目標がある。建物をいかにリユースするかを考えるとともに、まだ建築にはほとんど使われていないカーボンファイバーを大々的に使いたい。軽い建築とすることで、杭を打たずに済み、解体およびその後の移設も容易となる」と、パビリオンの構想を述べています。
パビリオンは3つのドームで形成され、それぞれ「循環」「海洋」「叡智」のテーマで展示を行います。テーマに「海の蘇生」を掲げ、「水の惑星」のリアリティを訴求するとのこと。
展示構成
ドームA:「循環」
水の不思議さを表現する装置に触れ、心身を清める禊の空間ドームB:「海洋」
「超撥水のメカニズム」を用いた、巨大・緻密・精巧なスペクタクルによる導入演出ドームC:「叡智」
生命の源である海洋の豊かさや危機を巡る球体オペラ
更家悠介氏(ゼリ・ジャパン理事長)コメント
ゼリ・ジャパンのZERIとは、”Zero Emissions Research and Initiative”の略で、これを自然に倣い、「廃棄物ゼロの社会をつくろう」という理念で2001年に設立されたNPOです[*3]。
2025年大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。「いのち輝く未来社会」は、地球の7割を占める海が”いのち輝いて”いて、かつ持続可能でなければなりません。海には、海洋プラスチックの問題、漁獲量の問題、珊瑚礁減少の問題などがあり、これらついて「万博を契機に考えよう」と社会に対して伝えるために、私たちはパビリオン〈ブルーオーシャンドーム〉を出展します[*4]。
パビリオンの総合プロデューサーには、日本デザインセンターの原 研哉さん、建築プロデューサーには坂茂建築設計の坂茂さんが就任し、紙や竹、炭素繊維などを使った3つのドームから形成されるパビリオンを計画中です。
私が特にお伝えしたいのがドームCについてです。ここでは、さまざまな企業と団体にも活用していただき、ドームCをコミュニケーションポイントとして、叡智を集めながら、情報を発信、ビジネスや人々の具体的な行動につなげていきたいと考えています。
日本はプラスチック汚染と海の持続的な活用、漁業、観光、船、いろいろな切り口から海のストーリーをつくっていくべきであり、万博を機に、みなさんと海洋問題の改善を推進していければと考えています。(ゼリ・ジャパン2023年8月25日プレスリリース / 記者発表会での更家理事長の登壇コメントより要約)
〈ブルーオーシャンドーム〉ティザーサイト
https://www.zeri.jp/expo2025/
*1.ゼリ・ジャパン組織概要:
資源とエネルギーを循環再利用し、廃棄物をゼロに近づける「ゼロ・エミッション構想」(ZERI: Zero Emissions Research and Initiative)を出発点として、日本における環境教育の啓発と実践、産業クラスター(連環)の構築、会員企業への情報提供や技術指導などを行い、循環型社会を実現するために2001年に設立されたNPO(特定非営利活動法人)。
*2.大阪ブルー・オーシャン・ビジョン:
2019年に大阪で開催された「G20大阪サミット(第14回20か国・地域首脳会合)」で共有されたビジョン、「2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染ゼロ」を目指している。
2022年12月には、海の課題をビジネスで解決することを目指し、NPOゼリ・ジャパンの更家悠介理事長が代表取締役社長を務めるサラヤ株式会社ほか企業連合によるブルーアクション・プラットフォーム「ブルーオーシャン・イニシアチブ(Blue Ocean Initiative: BOI)」が発足。
関連リンク
環境省発表
https://www.env.go.jp/water/post_75.html
大阪府発表
https://www.pref.osaka.lg.jp/eneseisaku/kannou_sdgs/blue-ocean-plan.html
*3.NPOゼリ・ジャパンによる「2025年大阪・関西万博パビリオン」出展に関する、原、坂の両氏の参画とパビリオンのコンセプトイメージは、同NPOが2021年「ドバイ万博」にて実施した「2025年大阪・関西万博 告知キャンペーン」の様子を配信した、YouTube「ポリマ号のブルーオデッセイ」チャンネルの動画でも触れられている
#「ポリマ号のブルーオデッセイ」YouTubeチャンネル:「ドバイ万博」とその先の未来をつなぐもの(2022年05月30日)
*4.NPOゼリ・ジャパンでは、海上輸送からの排出ゼロに貢献することを目指すプロジェクト「ブルー・オデッセイ」を支援している。活動を広めるデモンストレーション船〈ポリマ号〉は、化石燃料を使わずに風力・太陽光・水素などの再生可能エネルギーだけで航行する、世界最大級のソーラー船。〈ポリマ号〉は、2025年大阪・関西万博のスペシャルサポーターを務める。
公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会 プレスリリース(2022年3月18日)
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20220318-01/