CULTURE

黒川紀章の「カプセル」が長野に現存

黒川自身の別荘「カプセルハウスK」が宿泊施設として動態保存へ

CULTURE2021.04.07

20世紀を代表する日本人建築家の1人、黒川紀章(1934-2007)が長野県で設計・建設したメタボリズム建築〈カプセルハウスK〉が、2021年5月より初めて一般に公開されます。さらに、6月から宿泊施設としてオープンする予定です(プレスリリース)。
本稿掲載の外観写真撮影:山田新治郎

黒川紀章は、1970年に開催された大阪万博(日本万国博覧会)の会場にて、カプセルを用いたパビリオン〈空中テーマ館 住宅カプセル〉などを発表。1972年には、カプセル型の集合住宅〈中銀カプセルタワービル〉が、東京・銀座に竣工しています。
これらの「カプセル建築」は、住人のライフスタイルや用途にあわせて、カプセルごと交換して改修できるというコンセプトで設計されました。「メタボリズム」を代表する建築作品であり、同氏の代表作としても知られています。

長野に現存する〈カプセルハウスK〉は、黒川紀章が自身の別荘として、1973年に同県北佐久郡御代田に建てられたもの。2019年からは長男の黒川未来夫氏(くろかわ みきお / MIRAI KUROKAWA DESIGN STUDIO 代表)が所有し、修繕と維持管理を行ってきました。私邸であったため、基本的に公開されず、竣工後から約50年を経た現在も良好な状態が保たれています。

このほど、未来夫氏と、工学院大学建築学部 鈴木敏彦研究室(建築デザイン学科)が共同で立ち上げた「カプセル建築プロジェクト」を始動。将来のカプセルの交換を含めて長く後世に残すために、2021年5月より一般公開を開始。6月より民泊事業を開始すべく準備中です。建物を使いながら状態を維持、向上させる「動態保存」のかたちをとります。

6月の開業へ向け、2021年5月23日まで、下記のクラウドファンディングにて支援金を受け付けています(その後、6月30日まで延長)。
2020年に行った改修で、建物本体と内装の修繕はほぼ完了。今回のクラファン集まった支援金は、空調設備の新調や食器類など備品の購入などに充てられます。

なお、プロジェクトを共同で立ち上げた、工学院の研究室、鈴木敏彦教授は、1984年から1990年にかけて黒川紀章建築都市設計事務所に勤務し、黒川氏の薫陶を受けました。カプセル建築に関する研究は、鈴木研究室にて進化し、現代的なダンボール製スリープカプセルの開発などにもつながっているとのことです。(en)

プロジェクトメンバー:鈴木敏彦(工学院大学)、黒川未来夫(MIRAI KUROKAWA DESIGN STUDIO)、阿部暢夫(阿部設計室)、茂木愛子(同左)、山田新治郎(写真家)、石間克弥、杉原有紀(ATELIER OPA)、マルコ・インペラドリ(ミラノ工科大学)

クラウドファンディング詳細
https://miraikurokawa.jp/activity/capsule-house-k/crowdfunding/

「カプセル建築プロジェクト」公式ウェブサイト
https://www.capsule-architecture.com/

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