CULTURE

長坂常氏が「LLOVE HOUSE」のクラファンを開始

広島・尾道の山手で古民家と大切な風景を「残す」仕組みづくり

CULTURE2022.05.05

建築家の長坂常氏(スキーマ建築計画代表)が、広島県尾道市にある、築110年以上の木造家屋を改修し、新たな施設として再生するための費用の支援を求め、クラウドファンディングを開始しました。
クラファンサイトの「READY FOR」にプロジェクトのページが開設され、長坂氏のSNSなどで告知が行われています。

プロジェクトのページに寄稿全文が掲載されている長坂氏のテキストによれば、古民家の立地は、尾道市の山手地区。インドのスタジオ・ムンバイが改修設計を手がけたことで知られる複合施設〈LOG〉に隣接しているとのこと。
長坂氏はすでにこの建物を譲り受けており、今年2月に改修に着工しています。

スキーマ建築計画 尾道「LLOVE HOUSE」クラファンプロジェクト

正門(右手奥が今回の建物 / 左側は作家の志賀直哉が暮らした長屋)

7月末を予定している工事完了後は、「LLOVE HOUSE」と長坂氏が命名した交流施設となります。地元・尾道の人々と、クリエーター・建築家・アーティストらとが交流できる場として、試験運用期間を経て、9月末にオープニングを迎える予定です。「LLOVE HOUSE」を通した、尾道の地域再生・まちづくりにも取り組むとのこと。

宿泊も可能な「LLOVE HOUSE」のアイデアは、2010年に東京・代官山の駅前で解体が決まっていたビルを会場に、長坂氏をはじめ、国内外の同世代の建築家が参加して1カ月限定で開催された特別企画展「代官山LLOVE」からコンセプトを引き継いだものです[*]
さらに、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響で会期が1年延期され、昨年開催された、第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(VBA)日本館展示に参加した際の体験も、施設のコンセプト形成に影響しているとのこと。
*.改修後の建物の在り方について、長坂氏は、長年の友人で、「代官山LLOVE」のアートディレクターを務め、オランダ・アムステルダムの〈ロイドホテル〉の共同創設者の1人であるスザンヌ・オクセナール氏(Suzanne Oxenaar)に相談。氏とのメール往還の内容は、プロジェクトページにて日本語で公開されている

スキーマ建築計画 尾道「LLOVE HOUSE」クラファンプロジェクト

建物および一帯の俯瞰(夜間)

現場は坂のまち・尾道の山手地区。立地条件から重機を搬入でず、人力での作業となっています。さまざまな困難が予想される現地での修繕工事の内容は、全てオープンソースとして公開されます。
現場管理は、スキーマ建築計画出身で、今回のプロジェクトを機に現地に移り住んだ、建築家の中田氏、松井氏が担当し、改修後の施設運営も担います。

 

「誰か一人が負荷を負うのではなく、一緒にやっていこう」と、参加する人それぞれがこの取り組みから何かを得られるような協力のあり方でつながり、動き出しているプロジェクトです。」(長坂氏 寄稿文より)

 

スキーマ建築計画 尾道「LLOVE HOUSE」クラファンプロジェクト

イラスト:いしばし・ゆき

本件は、目標金額の達成の有無にかかわらず、実行者は支援金を受け取る「All in 方式」です。各種リターンが設定された工事費用支援の金額は、1万円から200万円までの6種類。支援の受付は2022年6月30日(木)23:00まで。

大切な風景を「残す」仕組みをつくりたい
—築110年の建物を活用し、課題解決の仕組みづくりへ

建築家、スキーマ建築計画代表として東京で活動する私、長坂常は、旅先の広島県尾道市の山手地域で、築110年以上の今は誰も住んでいない建物に一目惚れし、縁あって前オーナーから譲り受けることになりました。

そこにしばらく滞在し、この地域に魅了されると同時に、他の地方都市と同様、高齢化に伴う人口減少の問題、さらに、車が入ることのできない斜面地のため、古くなった建物の改修が容易ではないなど、この地域が抱える様々な課題を実感した私は、よそ者ではありますが、「建物だけではなく、心から大切にしたいと感じたこの美しい尾道の風景を、このままでは残していくことができない」という危機感から、今回のプロジェクトを立ち上げました。

まずは、この歴史ある建物を次の時代に残していけるように、修繕工事を実施します。尚、この工事の詳細をオープン化することで、尾道や近しい条件の他の地域で、同じような境遇で困っている人たちのガイドの一つになればと考えています。

さらに、完成後の建物は「LLOVE HOUSE」と名付け、世界中から訪れるクリエーターに中長期的に滞在してもらえる、アーティスト・イン・レジデンスとして活用していく予定です。そこで新しい文化交流のあり方を提案しながら、クリエーターと地域の人々が相互に影響を与え合うことで、山手での暮らしを豊かにするきっかけをつくっていきたいと計画しています。

今回、「一人が多くの資金を投じたから、残すことができた」というあり方ではなく、この取り組みに賛同くださる方々に参加してもらい、「この場所を一緒につくっていく一員」として、まずは建物を残すこと、その先の新しい文化交流、それを通じたコミュニティづくり・・・できるだけ多くの皆さまと私たちの経験を共有する方法を模索していきたいと考え、今回クラウドファンディングに挑戦することにいたしました。

大切な風景を残したいという、一建築家の思いとこれからの取り組みに賛同いただける方からのあたたかいご支援をお待ちしております。(長坂 常)

 

スケジュール(全て2022年、予定)
2月 着工
6月 ワークショップの実施
7月末 工事完了
8月末 運営準備開始 試泊開始
9月末 オープニング

クラウドファンディングプロジェクト
「尾道の山手で、大切な風景を「残す」仕組みをつくりたい。」詳細

https://readyfor.jp/projects/llovehouse_onomichi

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