兵庫県神戸市にある百貨店・大丸神戸店に、”新居留地”をテーマにしたパブリックスペースが7月12日にオープンします。空間デザインを、SKWAT(スクワット)が手がけています。
大丸神戸店は、1868年1月の神戸港(当時名称は兵庫港)の開港に伴い、外国人のために建設された旧居留地エリアに属しています。周囲には、昭和初期竣工の〈旧居留地38番館(旧ナショナルシティバンク神戸市店)〉や〈ニッケビル〉のほか、明治・大正期に建てられた建物が、阪神・淡路大震災(1995年1月17日発生)を経て現存しており[*1]、大丸神戸店では、これらの歴史的建造物が織りなす美しい街並みを活かした周辺店舗の開発を、震災以前の1987年より進めてきたとのこと(2023年6月1日、6月30日 大丸松坂屋プレスリリースより)。
*.参照:神戸居留地ウェブサイト(運営:旧居留地連絡協議会)
https://www.kobe-kyoryuchi.com/
大丸神戸店では、旧居留地の街並みを活かしたプロモーションに加え、街を「文化の発信拠点」とする新たな取り組みを開始しており、その一環として、場の価値の転換に焦点をあてた活動を行っているSKWATとタッグを組み、BLOCK30(大丸カーポート)の空き区画3カ所(以下 MAP参照)を期間限定のパブリックスペースとしてオープンします。旧居留地に新たな価値を加えるとともに、土地の歴史を感じられるような空間として、街に対して開き、順次展開していく計画です。
テーマは「新居留地」
7月12日に計3カ所が同時オープンするパブリックスペースのテーマは「新居留地」。
現「旧居留地」は、江戸期の鎖国時代には長年にわたり閉ざされており、1868年の開国によって世界に開かれました。それからおよそ150年後、コロナ禍によって人々の行動が制限され、再び国は閉ざされてしまいました。変化が問われる今だからこそ、「旧居留地」を中心に、再び街が開かれる「新居留地」としての在り方を考え、提案します。大丸神戸店は、近代洋風建築によって形作られたかつての街並みの良さを現代に「継承」し、「旧居留地」として世界に「開かれた」場所を築いてきました 。SKWATは、店舗が抜け、新規テナントが入るまでの遊休区画に焦点をあて、大丸神戸店が「旧居留地」で取り組んできた「継ぐ」と「開く」を紐解き、「新居留地」をインスタレーションという手法を用い、場の価値転換を起こしていきます。
単なる観賞用の美術展示ではなく、 (1)誰もがその土地の歴史に触れ、憩いの場としてのパブリックスペースへと「開かれ」、(2)インスタレーションを構築する素材として、内装用資材であるLGS(軽量鉄骨)を使用することで、一時的な大丸神戸店保有の「内装用資材置き場」としての機能を有します。新規テナントが決まった際には、これらのLGSは従来の下地として次のテナントへ「継承」されます。(大丸松坂屋プレスリリースより)
今回のインスタレーションプロジェクトでは、1868年に設計され、126の区画に分割して建設された当時の建築的特徴であった「屋根瓦」に着目。神戸市からも近い淡路島で約400年の歴史を誇る「淡路瓦」が、インスタレーションを構成する素材として採用されています。
「淡路瓦」のほかに、パブリックスペースの構成素材としてLGS(軽量鉄骨)を採用しているのも本プロジェクトの特徴で、あらかじめ壁側に配置することで、入居するテナントが決まり、このインスタレーションが終了した後、空間を継承するテナント側の施工費を軽減できる見込みです。
SKWAT(スクワット)プロフィール
SKWATは都市の遊休施設を一時的に占有し、一般へ解放する運動として、2019年に設計事務所・DAIKEI MILLS(ダイケイ・ミルズ)の中村圭佑氏を中心に始動。物理的な空間のみならず、オンラインや公共電波にも領域を拡大し、場づくりや発信活動などに取り組んでいる。その手法は、展示、出版、物販、レクチャーとさまざまであり、かつ、いずれも不完全なものから生じる価値の転換に焦点をあてて展開している。これまでに、原宿、南青山、京都、ミラノなどで実施し、いずれも大きな話題を呼んだ。
SKWAT Website
https://www.skwat.site/
大丸神戸店ウェブサイト「”新居留地”をテーマにしたパブリックスペース」オープンニュース
https://www.daimaru.co.jp/kobe/topics/skwat.html