神奈川県川崎市内の自動車教習所跡地にアリーナが建設される計画「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」に連動して、各種アーバンスポーツを楽しめる場所として〈Kawasaki Spark(カワサキ スパーク)〉が、今春から期間限定でオープンしています。
〈Kawasaki Spark〉は、横浜DeNAベイスターズや川崎ブレイブサンダースを有することでも知られるDeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)が進めている、川崎駅周辺エリアの賑わいづくりや新たな文化を創造することを目的とした「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」の一環としてオープンした暫定的な施設で、スケートボードやストライダーのコース、3on3バスケットコートなどを有し、パルクールやダンスといったさまざまなアーバンスポーツを気軽に楽しめる空間を提供しています。

DeNA 2025年2月25日プレスリリースより(オープン前のイメージ画)
事業スケジュールの変更に伴い、着工までの約8カ月のあいだ、敷地を暫定的に活用するプロジェクトが新たに立ち上げられました。建築家の西田 司氏が主宰する建築設計事務所・オンデザインパートナーズが中心となり、暫定活用期間中の敷地全体の計画策定やデザインなどを担当しています。

画像提供:オンデザインパートナーズ
育てた種を未来へつなぐ
コンセプトは「未来につながる公園」である。
アリーナの完成に向けて、この場所やアーバンスポーツに対する地域の認知と理解、期待感を高めていくとともに、「つくってみる」「使ってみる」「評価してみる」のトライアンドエラーを地域住民と共に繰り返しながら活動の種を育て、アリーナシティにつなげていくことを目指している。暫定利用としての〈Kawasaki Spark〉は、同じ場所にアリーナが建設される。この場所で育まれた活動や愛着を、次のステージ、未来の川崎の風景へとつないでいくこと、〈Kawasaki Spark〉はそのための試金石である。
また、同じ川崎エリアには〈カワサキ文化会館〉や〈DISCOVER KAWASAKI〉といった、ここでの活動を受け入れ、さらに育てることができる施設やプロジェクトが点在している。〈Kawasaki Spark〉で育てられた花は次の活動の種となり、この川崎エリアで育てていく。そして将来、ここから日本へ、世界へ広がる人や活動が生まれていき、大きな花を咲かせる一歩目の「みんなの練習場」となることを期待している。(オンデザインパートナーズ)
プロジェクトチーム
運営:ディー・エヌ・エー
全体計画・企画運営:オンデザインパートナーズ
総合プロデュース:bonvoyage
施工(外構):長栄興業
施工(内装):DDDinc
アートディレクション:DDDart
撮影:木村 哲※本稿では「株式会社」表記は割愛

画像提供:オンデザインパートナーズ
元自動車教習所の既存地形を活かした全体計画
〈Kawasaki Spark〉の敷地は、元自動車教習所であることから、アスファルト舗装や縁石が敷かれた道路さながらの風景は残りつつも、縦列駐車やS字カーブといった教習のためのスペースがオブジェのように敷地全体に細かく配置されており、ひとつひとつの場所にどこか身体的なスケールを感じた。そこで、本来は“車のための施設”である自動車教習所を、休む機能や、アーバンスポーツに触れる機会を促す“人のための公園”として再解釈できないかと考えた。エリア全体を「Play」「Park」「Performance」「Practice」の大きく4つのエリアに分類し、各エリアの使い方を想起させるような補助線を引くようにして、什器やグラフィックの配置を計画した。
2025年2月計画発表時のゾーニングイメージ(DeNA 2025年2月25日プレスリリースより)
「Play」エリア
敷地中央の直線道路の幅員と長さを活用し、フルコートで試合のできるバスケットエリアに転用している。また、その横にある縦列駐車の練習用スペースには木製パレットをステージ状に積み上げることで、観戦ができるスポットを計画した。「Practice」エリア
クランクやS字カーブの既存地形を活かし、スケートボードやインラインスケート、ストライダーのための練習エリアとしているほか、芝生のブロックを並べた休憩スポットを配置している。また、芝生上に置かれたパルクールのための什器は、子供にとっての遊具であり、大人にとっての技を披露する競技物として機能し、多世代の交流を生み出している。「Performance」エリア
スケートボードやBMXの競技が実施できる設備を整え、「Practice」での練習を経て、本格的なパフォーマンスの披露を可能とした。これら3つのエリアをゆるやかにつなぐように人工芝の「Park」を設置することで、多方向への視線の“抜け”をつくりつつ、また、交差点部分には中心性のある「ヤグラ」を設置することで、使い方や属性の異なるプレイヤー同士が混ざり合わさるよう計画している。
さらに、〈Kawasaki Spark〉では、施設内の残置物をアップサイクルし、休憩ラウンジの什器を作成したほか、道路標識を活用したサイン計画や誘導表示を読み替えた外壁装飾など、元自動車教習所だからこその“ここにしかない風景“を創出した。
利用者は設置された什器を頼りに遊んでみたり使ってみたり、それぞれがやりたいことに取り組みしながら、周りを見渡して時に他者と混ざり合ったり教えあったりと、ゆるやかにつながるとともに、自分自身の楽しみ方も見つけていくことができる。
画像提供:オンデザインパートナーズ
〈Kawasaki Spark〉は、民間が管理する土地ゆえに、地域と連携し、つくり方や使い方を育てていくことが可能である。我々が設計したのは、空間の「余白」づくりであり、空間の更新は地域住民と共に事業者と設計者が伴走して進めていく。
寄稿:オンデザインパートナーズ

画像提供:オンデザインパートナーズ

画像提供:オンデザインパートナーズ

画像提供:オンデザインパートナーズ

トークイベント:未来のアリーナ建設予定地から考える、アーバンスポーツとパブリックスペースの「いま」と「これから」2025年6月21日開催時の様子 / 登壇者(左から順に、右端の進行役を除く):松本紘樹氏(ディー・エヌ・エー)、立花朋幸氏(ディー・エヌ・エー)、泉山塁威氏 (ソトノバ、日本大学)、 上田孝明氏(MEMENT)、 西田 司氏 (オンデザインパートナーズ) 主催・画像提供:オンデザインパートナーズ
所在地:神奈川県川崎市川崎区駅前本町25((KANTOモータースクール川崎校跡地 / Google Map)
※開園時間は公式ウェブサイトの案内を参照、イベント開催事は諸変更あり
利用方法:予約不要 ※ただし、利用規約への同意が必要、未就学児は18歳以上の保護者同伴要
入園料:無料 ※ただし、イベント開催時などは一部有料となる場合あり
プレオープン:2025年2月26日
オープン:2025年4月4日
閉園予定:2025年11月上旬
運営者:ディー・エヌ・エー
施設案内詳細
https://kawasaki-arena-city.spark.dena.com/
「川崎新!」公式ウェブサイト
https://kawasaki-arena-city.dena.com/
「川崎新!」公式インスタグラム
https://www.instagram.com/kawasakispark/
関連リンク
令和5年度「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定結果の公表について
経済産業省発表(2024年5月2日)
https://www.meti.go.jp/press/2024/05/20240502002/20240502002.html
文部科学省発表
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop02/list/detail/1411943_00014.htm