本作は、現存する世界最古の舞台芸術「能」に触発された音楽劇という表現形態をとります。
「新国立競技場」と「高速増殖炉もんじゅ」の2つをそれぞれのテーマに掲げ、建築家のザハ・ハディド(Zaha Hadid、1950-2016)をシテに描く演目「挫波(ザハ)」と、高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる演目「敦賀(つるが)』の2演目で構成されます。日本の古典芸能「能」のフォーマットを応用し、ついえた「夢」を幻視する、レクイエムとしての音楽劇です。
「挫波」ストーリー:
東京五輪招致のため、2012年新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれた天才建築家、ザハ・ハディド。その圧倒的なデザインで脚光を浴びながら、後にその採用を白紙撤回され、ほどなくして没した彼女をシテとして描く。「敦賀」ストーリー:
夢のエネルギー計画の期待を担い、1985年の着工以来一兆円を超す巨額の資金が投じられたものの、一度も正式稼動することなく、廃炉の道をたどる高速増殖炉もんじゅ。もんじゅを臨む敦賀の浜を訪れた旅行者が出会うのは――。
作・演出は、劇作家・演出家で、チェルフィッチュを主宰する岡田利規。これまでに手がけた作品は世界90都市以上で上演をかさねるなど、国際的に活躍しています。
音楽は32年にわたって音楽監督として維新派に携わり、『NŌ THEATER』をはじめ、岡田のミュンヘン・カンマーシュピーレで発表した4作品の音楽も手掛けた内橋和久が担当。内橋は、即興演奏家としての活動と並行してUA、Salyu、細野晴臣、カルメンマキらと共に歌にも積極的に取り組んでいます。本作では、ダクソフォン三重奏を軸に、能の囃子方(はやしかた)を担います。
出演者も才能あふれる個性派揃い。ダンサーで俳優としても活躍する森山未來をはじめ、片桐はいり、栗原 類、石橋静河のほか、映画監督としても話題を集める太田信吾が出演。さらにはシンガー・ソングライターの七尾旅人が劇中で謡をつとめ、内橋率いる演奏家とともに音楽劇としての能の根幹を担います。
このように重層的に展開する作品の舞台デザイン(美術)を、建築家の中山英之が手がけているのも見どころです。
本作『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』は、2020年6月から7月にかけて上演されるところ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響を受け、中止となっていました。カンパニーではその後、リモートで稽古を行い、成果の一部を映像作品『「未練の幽霊と怪物」の上演の幽霊』としてオンラインで上演。上演は2回限りでアーカイブ配信もなかったにも関わらず、そのコンセプトと内容で大きな話題となり、今後への期待を集めていたとのこと。
さらに、白水社より出版された戯曲集が、2021年2月に第72回読売文学賞(戯曲・シナリオ賞)を受賞するなど、社会的・文化的にも注目度の高い作品です。
今回の公演が、オリジナルのキャストおよびスタッフによる待望の劇場上演となります。
「未練の幽霊と怪物」について、岡田利規コメント:
社会とその歴史は、その犠牲者としての未練の幽霊と怪物を、
ひっきりなしに生み出して来て、今だって生み出し続けています。
わたしたちはそれら幽霊や怪物のことを見ないこと忘れてしまうことを、
その気になればできちゃうし、そのほうが快適な向きは確かにある。
でもそれらに、つまり直視しないこと忘却することに、抗うために、
能という演劇形式が持つ構造を借りて、音楽劇を上演します。
企画製作・主催(神奈川公演):KAAT神奈川芸術劇場
作・演出:岡田利規
音楽監督・演奏:内橋和久
出演:森山未來、片桐はいり、栗原類、石橋静河、太田信吾 / 七尾旅人(謡手)
演奏:内橋和久、筒井響子、吉本裕美子
STAFF:
美術:中山英之(中山英之建築設計事務所 代表)
照明:横原由祐
音響:佐藤日出夫
衣裳:Tutia Schaad
衣裳助手:藤谷香子(FAIFAI)
ヘアメイク:谷口ユリエ
舞台監督:横澤紅太郎
公演日程:2021年6月5日(土)~26日(土)
上演時間:約2時間(休憩を含む)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
所在地:神奈川県横浜市中区山下町281(Google Map)
料金:一般 6,800円、24歳以下・U24チケット3,400円、高校生以下割引 1,000円、シルバー割引(満65歳以上)6,300円
※当日券:開演の45分前より、大スタジオ当日券売場にて若干枚数販売予定(1人1枚まで / 枚数は各回で異なる)
※未就学児の入場不可
問合せ先:チケットかながわ TEL.0570-015-415(10:00-18:00)
KAAT 公式Webサイト
https://www.kaat.jp/
公演内容詳細・チケット販売
https://www.kaat.jp/d/miren2021