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「感覚する構造 - 力の流れをデザインする建築構造の世界 -」WHAT MUSEUMにて開催

[Report]古代から現代の建築、未来の月面構造物まで、40点以上の構造模型が一堂に

2023年10月1日初掲、2024年1月21日 講演会情報追記

寺田倉庫が運営する現代アートのコレクターズミュージアム・WHAT MUSEUM(ワットミュージアム)にて、9月30日より「感覚する構造 – 力の流れをデザインする建築構造の世界 -」が開催されています。

9月29日にメディア向けに開催された内覧会に『TECTURE MAG』では参加。写真を中心に会場の様子をレポートします。

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

本展の開催趣旨

1923年の関東大震災から、今年で100年が経ちます。われわれ人類は、地震力や風力をはじめ自然の力が及ぶ世界に生き、さらには地球という重力空間において、建築における力の流れをどうデザインしてきたのでしょうか。そうした力の流れや素材と真摯に向き合い、技術を駆使し、建築の骨格となる「構造」を創造してきたのが、構造デザインの世界です。
「建築家」と構造をデザインする「構造家」の協働により、数々の名建築が生み出されていますが、構造家や構造について詳しく紹介される機会は多くはありません。構造家は数学や力学、自然科学と向き合い、計算と実験、経験を積み上げた先に、やがて力の流れが自身の中に感覚化し、感性を宿すといわれています。
このことから、WHAT MUSEUMでは構造デザインについて、模型を介して体感から理解を深める展覧会を企画しました。
本展では鑑賞者自身が構造模型を通して、構造デザインという創造行為の可能性とその哲学を体感することができます。また、建築の構造を「感覚」することで、自らが住む世界にはたらく力の流れと、その力と自身の感性との結びつきについて思考を促します。(本展序文より)


展示構成

A:建築家と構造家の協働
B:宇宙空間へ
C:素材と構造
D:力の流れと建築

展示協力:磯崎新アトリエ、伊東豊雄建築設計事務所、日建設計、北方町ホリモク生涯学習センターきらり、木内隆行、佐々木睦朗構造計画研究所、妹島和世+西沢立衛/SANAA、滋賀県立大学 陶器浩一研究室、白川村教育委員会、多摩美術大学 環境デザイン学科研究室、東京スカイツリー®️、東京大学生産技術研究所 腰原幹雄研究室、東京大学総合研究博物館、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 佐藤淳研究室、佐藤淳構造設計事務所、西沢立衛建築設計事務所、明星大学 建築学部 松尾智恵研究室

 

本展は、1FのSPACE 1とSPACE 2に分かれ、上記テーマごとに展示が構成されています。

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

SPACE 1 展示風景

A:建築家と構造家の協働

構造家・佐々木睦朗と、建築家・磯崎新、伊東豊雄、妹島和世+西沢立衛 / SANAAの協働を取り上げる。

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

せんだいメディアテーク 1/50構造模型
建築設計:伊東豊雄建築設計事務所 / 構造設計:佐々木睦朗構造計画研究所 / 竣工:2000年
右奥:壁の展示は初期のスケッチ(向かって左が佐々木氏、右が伊東氏のもの)

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

フィレンツェ新駅(コンベ案)1/250模型
建築設計:磯崎新アトリエ / 構造設計:佐々木睦朗構造計画研究所 / コンペ提案:2002年

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

手前:北方町ホリモク生涯学習センター きらり・岐阜県建築情報センター 1/100実施設計時模型
建築設計:磯崎新アトリエ / 構造設計:佐々木睦朗構造計画研究所 / 竣工:2006年
奥の展示:豊島美術館 1/50構造模型
建築設計:西沢立衛建築設計事務所 / 構造設計:佐々木睦朗構造計画研究所 / 竣工:2010年

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ) 1/100意匠模型
建築設計:妹島和世+西沢立衛/SANAA / 構造設計:佐々木睦朗構造計画研究所 / 竣工:2024年予定

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)
左:1/100建築模型 / 右:1/500構造模型
建築設計:伊東豊雄建築設計事務所 / 構造設計:佐々木睦朗構造計画研究所 / 竣工:2007年

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

瞑想の森 市営斎場 1/100建築模型
建築設計:伊東豊雄建築設計事務所 / 構造設計:佐々木睦朗構造計画研究所 / 竣工:2006年

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

左奥:ソチミルコのレストラン 1/100構造模型
建築設計・構造設計:フェリックス・キャンデラ / 竣工:1958年
中央奥:イタリア・ローマのパンテオン 構造模型
右手前:フィレンツェ新駅(コンベ案)スケッチ

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

左上:サグラダ・ファミリア 逆さ吊り構造実験模型 写真
左手前:ソチミルコのレストラン 1/100構造模型
右手前:パンテオン 構造模型


B:宇宙空間へ

地球上での建築構造デザインを、宇宙空間へと展開する取り組みを紹介する。構造家の佐藤 淳氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)と、JAXA(Japan Aerospace Exploration Agency / 宇宙航空研究開発機構)が開発を進めている、人間が月に滞在するための構造物の縮尺1/10模型が本展にて初めて公開される。

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

SPACE 2 展示室入口

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

解説パネルの後方:月面構造物(滞在モジュール / ソーラーモジュール / オーバーハングモジュール)
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 佐藤淳研究室

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

「枕型多面体と高床が同時展開する滞在モジュール / 月の縦孔のベースキャンプ」
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 佐藤淳研究室、佐藤淳構造設計事務所

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

「月の縦孔滞在ベースキャンプ スタディ・モックアップセット」
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 佐藤淳研究室、佐藤淳構造設計事務所

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

手にとって展開を試すことができるサンプル展示を解説する本展企画担当者

C:素材と構造

構造デザインは建築物の素材を追求することと密接に関係していることに着目し、本展では「竹」にスポットをあて、サステナブルな素材でもある竹を活用した建築空間の可能性をモックアップなどで提示する。

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

竹による構造物〈三灯小径〉
設計・モックアップ制作:滋賀県立大学 陶器浩一研究室

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

釘を使わない接合方法「三方格子」の触れる模型

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

「Expo2025 大阪・関西万博パビリオン計画案」1/20構造模型
滋賀県立大学 陶器浩一研究室

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

「Expo2025 大阪・関西万博パビリオン計画案」1/20構造模型
滋賀県立大学 陶器浩一研究室

D:力の流れと建築

薬師寺西塔、浄土寺浄土堂、白川郷合掌造り民家(旧田島家)、錦帯橋、日本万国博覧会 富士通グループパビリオン模型など、古代から現代までの建築物・構造物の構造模型の展示。模型を通して建築における力の流れを感覚的に捉えられる構成となっている。

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

膜構造 / 日本万国博覧会 富士グループパビリオン 1/60模型(太陽工業所蔵)
建築設計:村田豊建築設計事務所 / 構造設計:川口衞構造設計事務所 / 竣工:1970年(現存せず)

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

ラーメン構造 / 浄土寺浄土堂  1/50模型(東京大学総合研究博物館所蔵)

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

トラス構造 / 白川郷合掌造り民家・旧田島家 1/5模型(白川村教育委員会所蔵)※手前はサンプル展示
奥の壁の展示:「47都道府県 構造MAP」

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

スペースフレーム構造 / 日本万国博覧会 お祭り広場 1/100模型(鹿児島大学工学部建築学科 朴・増留研究室)
建築設計:丹下健三研究室 / 構造設計: 坪井善勝研究室、川口衞構造設計事務所 / 竣工:1970年(現存せず)

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

アーチ構造 / 錦帯橋 1/100模型(模型制作・所蔵:東京大学生產技術研究所 腰原幹雄研究室)

古代から現代、さらには未来における40点以上の構造模型が一堂に会する本展では、構造について知る導入部として、手で触れ、動かすこともできるサンプル模型も一部で用意されており、建築における力の流れを誰でも感覚的に捉えることができます。

本展は来年の2月25日まで開催されたあと、後期展「感覚する構造 – 法隆寺から宇宙まで -」が来春より開催予定です。

WHAT MUSEUM「感覚する構造 力の流れをデザインする建築構造の世界」

「感覚する構造 – 力の流れをデザインする建築構造の世界 -」

会期:2023年9月30日(土)~2024年2月25日(日)※前期展示
※後期展示「感覚する構造 -法隆寺から宇宙まで-」は2024年春より開催予定
会場:WHAT MUSEUM 1F
所在地:東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫G号(Google Map
開館時間:11:00-18:00(最終入場 17:00まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜休館)、年末年始
入場料:一般 1,500 円、大学生/専門学生 800 円、高校生以下 無料
※同時開催 TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展の観覧料を含む
※チケットはオンラインにて事前購入可能
※本展会期中に何度でも入場できるパスポートあり(展覧会パスポート 2,500円 / 本展と同時開催中の展覧会をセットで鑑賞可能)

WHAT MUSEUM

WHAT MUSEUM エントランス(提供:寺田倉庫)

主催:WHAT MUSEUM
企画:WHAT MUSEUM 建築倉庫
企画協力:犬飼基史、富岡庸平
展示協力:吉野弘建築設計事務所
会場グラフィック:榊原健祐
キービジュアルデザイン:関川航平
映像:瀬尾憲司
模型制作協力:ラムダデジタルエンジニアリング
部材製作協力:竹田木材工業所

詳細
https://what.warehouseofart.org/exhibitions/sense-of-structure_first-term


また、WHAT MUSEUM 2Fでは、同時期にIT分野で活躍する竹内真氏のコレクションより、国内外のアーティストによる現代アート33点と、ル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレなどがデザインした家具33点を展示した、TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展も開催されています(本展の観覧料で当日に限り入場可)。

WHAT MUSEUM TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展

TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展 HALL展示:ピエール・ジャンヌレがインド北部「チャンディガール都市計画」のためにデザインした〈フローティングバックチェア〉の21脚によるインスタレーション


WHAT MUSEUMの建築倉庫では、建築家や設計事務所から寺田倉庫が保管を委託されている600点以上の建築模型の一部が公開されています(入場は1時間毎の予約制)。

建築倉庫入場料(通常):一般・大学・専門学生 700円、高校生以下 500円、小学生以下無料

建築倉庫

建築倉庫(提供:寺田倉庫

建築倉庫 ウェブサイト
https://archi-depot.com/


関連イベント

特別講演会「月に棲む」開催概要
登壇者(敬称略):春山純一(JAXA)、佐藤 淳(構造家)
内容(予定):世界で初めて月面の縦孔(たてあな)を発見したJAXAの春山氏と、月面構造物の設計に携わっている構造家の佐藤氏が登壇。月の縦孔・地下空洞直接探査(UZUME)の計画や、人間が月に滞在するための月面構造物について解説する

特別講演会「月に棲む」

イベント詳細・申し込み方法はバナーをクリック!

日時:2024年1月27日(土)15:00-17:00
会場:WHAT MUSEUM
聴講方法:要予約
参加費:無料(ただし、別途イベント付き展覧会チケットの購入が必要、講演会開始10分前までに受付を完了すること)
会場定員:150名(先着順に受付、定員に達し次第、締め切り)
https://what.warehouseofart.org/events/sense-of-structure_first-term_event4/

※当日は建築倉庫公式YouTubeチャンネルにてライブ配信あり(視聴無料)
配信URLhttps://youtube.com/live/6QvO7qOo2xw

WHAT MUSEUM「感覚する構造 - 力の流れをデザインする建築構造の世界 -」展示風景

WHAT MUSEUM「感覚する構造 – 力の流れをデザインする建築構造の世界 -」展示風景 Photo by ToLoLo studio

Photograph & text by Naoko Endo


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