第1回「前橋国際芸術祭」2026年9月開催決定! 建築・アート・詩でまちの魅力を世界へ発信 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
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第1回「前橋国際芸術祭」2026年9月開催決定! 建築・アート・詩でまちの魅力を世界へ発信

第1回「前橋国際芸術祭」2026年9月開催決定! 建築とアートを軸にまちの魅力を世界へ発信

[Report] 山田紗子、渋谷慶一郎、田中仁ら関係者が出席した記者発表会を取材

建築・アート・詩を主要コンテンツにまちの魅力を発信する「前橋国際芸術祭」の概要が先ごろ発表されました。群馬県前橋市の中心市街地を舞台に2年に一度開催され、その第一回は2026年9月から12月まで80日間の会期で予定されています。

 

「めぶく。Where good things grow. 前橋国際芸術祭 2026」開催概要

会期:2026年9月19日(土)~12月20日(日)
主な会場:アーツ前橋、白井屋ホテル、まえばしガレリア、前橋文学館、前橋市のまちなか
主催:前橋国際芸術祭実行委員会

顧問:山本一太(群馬県知事)
実行委員長:小川 晶(前橋市長)
総合プロデューサー:田中 仁(田中仁財団代表理事、ジンズホールディングス代表取締役CEO)
アドバイザー:南條史生(アーツ前橋特別館長、前橋市文化芸術戦略顧問)、萩原朔美(前橋市文化活動戦略顧問)、松田文登(ヘラルボニー代表取締役副社長)、牧 寛之(バッファロー代表取締役社長)
プログラムディレクター:宮本武典(東京藝術大学准教授、アーツ前橋チーフキュレター)
事務局長:橋本 薫(MMA代表理事、まちの開発舎代表取締役)
デザインディレクター:木住野彰悟(6D-K代表)
コミュニケーションディレクター:笠間健太郎(アーツ・アンド・ブランズ代表取締役)
キュレーター:高橋由佳(アーツ前橋学芸員)、武田彩莉(アーツ前橋学芸員)、阿部由布子(前橋工科大学助教)
リサーチャー:石倉敏明(人類学者、秋田公立美術大学准教授)、臼井敬太郎(建築史家、前橋工科大学准教授)
構成施設・連携団体・事業など(2025年8月21日時点、順不同):前橋市(アーツ前橋、前橋文学館)、群馬県(群馬パーセントフォーアート)、前橋工科大学工学部建築・都市・環境工学群、JR東日本高崎支社、白井屋ホテル、へラルボニー、小山登美夫ギャラリー、Taka Ishii Gallery、rin art association、アート・オフィス・シオバラ、MAKI Gallery、まちの開発舎、マチスタント、フリッツアートセンター、ya-gins、Bentena SHOP、re/noma、双子蒸留所、広瀬川文化交流

前橋国際芸術祭 2026 記者発表会

フォトセッションに応じる「前橋国際芸術祭 2026 」関係者(左上の人物から時計回りに(敬称略):橋本 薫、宮本武典、和⽥彩花[公式アンバサダー]、田中 仁、南條史生、木住野彰悟、松田文登[ヘラルボニー代表取締役副社長]、渋谷慶一郎、小川 晶、山田紗子[山田紗子建築設計事務所主宰]、吉開菜央[ダンサー、映像作家])

前橋国際芸術祭 公式ウェブサイト
https://maebashi-biennale.com/

 

『TECTURE MAG』では、8月21日に都内で行われた記者発表会を取材しました(特記なき画像はすべて「前橋国際芸術祭」主催者側提供)。

INDEX

・「めぶく。Where good things grow. 前橋国際芸術祭 2026」開催概要
・“シャッター商店街”から建築・アートの最先端のまちへ
・藤本壮介氏と平田晃久氏が手がける大規模再開発が2026年度中に着工
・歩いてまわる、まちなか芸術祭
・山田紗子氏が新作を発表、プログラム PICK-UP
・キービジュアルは6Dの木住野彰悟氏がデザイン
・”めぶく。”策定から10年、次のステップへ 〜総合プロデューサー メッセージ


“シャッター商店街”から建築・アートの最先端のまちへ

かつての前橋市中心市街地は、1990年代後半から衰退が始まり、アーケード街はいわゆる「シャッター商店街」と化していました。下記・数々の施策により、現在はその状態から脱しつつあります。

前橋中心部 アーケード街

前橋中心部・千代田町交差点を挟んでアーケード街「中央通り」の北側にのびる「弁天通り」 Photo: TEAM TECTURE MAG(2021年撮影)

中心市街地の深刻な空洞化に歯止めをかけ、まちを再興するため、前橋市では、官民が一体となり、未来に向けたまちづくりビジョン「めぶく。Where good things grow.」を2016年に策定。本芸術祭を含めた以降のデザイン・アート関連のさまざまな施策は、いずれもこの「めぶく。」のビジョンが根底にあります。

施策の1つ、「前橋市アーバンデザイン」のリーディングプロジェクト(前橋デザインプロジェクト)では、建築家の中村竜治(中村竜治建築設計事務所)、長坂 常(スキーマ建築計画)、髙濱史子(髙濱史子建築設計事務所 / +ft+)らが参画。前橋の近代建築遺産を象徴する”赤れんが”を外装に用いてデザインされ、2018年以降にオープンした各店舗は、休日には行列ができる人気店となっています。
商店街の一角で芽吹いたこれらの賑わいは、周辺エリアにも影響を与え、空きビルを活用したローカルビジネスの誕生に寄与しているとのこと。

前橋中心市街地アーバンデザインプロジェクト

中央通り / 建築家が手掛けた店舗(角地から右に:中村竜治建築設計事務所〈GRASSA〉、スキーマ建築設計による和菓子屋〈なか又〉、+ft+/髙濱史子建築設計事務所〈1 Fつじ半・2F 月島もんじゃ てっぱん〉。2023年9月には永山祐子[永山祐子建築設計]が店舗デザインを担当したカレー屋〈月の鐘〉もこの並びにオープン。最近はその向かいにカフェ併設の本屋〈水紋〉がオープンしている
Photo: TEAM TECTURE MAG(2021)

白井屋ホテル

アートデスティネーション〈白井屋ホテル〉国道20号側(ヘリテージタワー)外観 Photo: TEAM TECTURE MAG

2020年12月には、解体も検討されていた古い旅館施設を、藤本壮介が設計を担当してアートデスティネーションに再生した〈白井屋ホテル〉が開業。国内外からアーティストが参加して作品が多数展開され、大きな話題となりました。2023年5月には、小山登美夫ギャラリーやタカ・イシイギャラリーなどが出店したアートレジデンス〈まえばしガレリア〉がオープン(設計:平田晃久建築設計事務所)。白井屋ホテルに隣接する馬場川(ばばっかわ)通り沿いには、SUPPOSE DESIGN OFFICEが設計した複合ビル〈ばばっかわスクエア〉が2024年3月にオープンしています。

〈まえばしガレリア〉外観

〈まえばしガレリア〉外観 Photo: TEAM TECTURE MAG

前橋中心市街地アーバンデザインプロジェクト

SUPPOSE DESIGN OFFICEが設計して2024年に竣工した〈ばばっかわスクエア〉 Photo: TEAM TECTURE MAG
1Fにはminä perhonen(ミナ ペルホネン)の新店舗〈ovi〉が2025年5月にオープン。同ビルの上階にはminä perhonen監修のもと白井屋ホテルの新たなレジデンス型客室もオープンしている(詳細は同ホテル ニュースを参照)

前橋中心市街地アーバンデザインプロジェクト

「馬場川通りアーバンデザイン・プロジェクト」の一環で、馬場川沿いにはベンチなどが2024年に整備された(ランドスケープデザイン:平賀達也 / ランドスケープ・プラス) Photo: TEAM TECTURE MAG

前橋中心市街地アーバンデザインプロジェクト

「馬場川通りアーバンデザイン・プロジェクト」の1つ、2024年4月に供用開始した公衆トイレ(デザイン:ジャスパー・モリソン / 実施設計:髙濱史子建築設計事務所) Photo: TEAM TECTURE MAG

藤本壮介氏と平田晃久氏が手がける大規模再開発が2026年度中に着工

市の中心部の千代田町では、藤本壮介と平田晃久が設計を担当する大規模再開発が進行中です。商業施設が入る複合ビル、市立図書館、百貨店などが建設予定で、2031年4月の「まちびらき」を目指しています(『前橋新聞 me bu ku』ウェブサイト 2025年8月1日ニュースより)。近隣には小中一貫校も開校予定です。

この再開発プロジェクトとあわせて注目されるのが、建築家の原田真宏と麻魚の両氏が率いるマウントフジアーキテクツスタジオを代表企業とするグループが提案した「稜線がつなぐ まちづくり_前橋リッジライン」の計画です。群馬県主催で2024年から今年にかけて実施された「前橋クリエイティブシティ 県庁~前橋駅都市空間デザイン 国際コンペ」において最優秀案に選出され、庁舎前広場と、市街地を貫く国道50号から連なる県庁前通りもあわせて整備されます(詳細は群馬県ウェブサイト報道提供資料[2025年4月10日更新]を参照)。

群馬県庁間空間デザイン国際コンペ最優秀案

「JR前橋駅―群馬県庁間空間デザイン国際コンペ」最優秀作品イメージ(ビジュアル:マウントフジアーキテクツ)

上記・再開発プロジェクトで誕生した建築のほか、前橋市内には、近代期にまちの発展を支えた生糸産業のレガシーを伝える赤レンガの倉庫群や、前橋出身の詩人・萩原朔太郎(1886-1942)の名を冠した文学館、前橋ビジョン「めぶく。」のシンボルとして広瀬川河畔緑地に移設された岡本太郎(1911-1996)の作品〈太陽の鐘〉などが点在しています。また、本稿で紹介しきれていない建築・アートプロジェクトも多数あり、これら新旧の文化資源も継承しつつ、市の中心市街地に点在する建築・アートスポットや既存のまちづくり活動をネットワークで結び、ウォーカブルな「アート × 都市体験」を創造する芸術祭となります。

赤城山

駒田建築設計事務所が設計して2023年に完成した〈弁天アパートメント〉屋上から、赤城山の眺め Ptoho: TEAM TECTURE MAG

歩いてまわる、まちなか芸術祭

「前橋国際芸術祭」は、市の中心市街地を舞台に展開され、プログラムを”歩いてまわれる”ことが1つ大きな特徴です。

主な会場となるのは、百貨店だった空きビルを市立美術館にコンバージョンして2013年に開館した〈アーツ前橋〉(改修設計:水谷俊博建築設計事務所)、〈白井屋ホテル〉、アートレジデンス〈まえばしガレリア〉(設計:平田晃久建築設計事務所)など、近年の前橋の”顔”となっている建築群です。それぞれが内包、展示するアートも大きな見どころとなっています。

アーツ前橋

アートレジデンスの草分け的存在、旧西武デパートWALK館をコンバージョンした〈アーツ前橋〉 Photo: TEAM TECTURE MAG

〈白井屋ホテル〉レポート(2020年)

藤本壮介、レアンドロ・エルリッヒらによる奇跡のコラボレーションで再生された〈白井屋ホテル〉現地レポート

〈まえばしガレリア〉レポート(2023年)

平田晃久氏が設計した前橋の新アートレジデンス〈まえばしガレリア〉内覧会レポート、小さな箱の集合体からなる”1本の樹”の下に人々が集い、活動が”芽吹く”建築

 

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山田紗子氏が新作を発表、プログラム PICK-UP

記者発表会に出席した建築家の山田紗子氏は、会期中に予定されているプログラムの説明パートで登壇。アーケード商店街の一角、さくら屋の跡地で進行中の、まちなが再開発の起点となる複合ビルの外観イメージビジュアルを披露しました。

前橋国際芸術祭 2026 記者発表会

Photo: TEAM TECTURE MAG

このほか、音楽家の渋谷慶一郎氏は生成型サウンドインスタレーションを会場エリア内に社会実装するプロジェクト「Abstract Music」について説明。映像作家でダンサーでもある吉開菜央氏は、アーティスト・イン・レジデンスで市内に滞在し、赤城山から吹き下ろす強風・からっ風をテーマにした短編作品を発表する予定です。さらに、『恋と誤解された夕焼け』で第32回萩原朔太郎賞を受賞した詩人の最果タヒ氏が、2019年に京都市内のホテルを舞台に発表した〈詩のホテル〉でタッグを組んだデザイナーの佐々木 俊氏とのコラボレーションが本芸術祭で実現。前橋市内各所でパブリックアートを展開予定です。

このほか、前橋のまちのオルタナティブなアートシーンを支えてきたキーパーソン諸氏、前橋を研究対象としている前橋工科大学の教員らが中心となり、まちの日常に根ざした魅力と楽しみ方を伝える「まちびらきのプログラム」なども計画されています。

 

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キービジュアルは6Dの木住野彰悟氏がデザイン

「前橋国際芸術祭」のオフィシャルロゴとキービジュアルは、6Dを率いるグラフィックデザイナーでアートディレクターの木住野彰悟氏がデザイン。同氏は芸術祭のサイン計画などを含むデザインディレクターを務めます。

前橋の北側につらなる赤城山の稜線や、開催エリアを流れる広瀬川と馬場川の川筋などから着想を得たもので、さまざまなものが”芽吹く”元となっている、この地の雄大な自然が描く線を取り入れたデザインとなっています。開幕直前には駅前などにフラッグやバナーが掲示し、有機的な形状を景色のようにしてまちなかに展開していく計画とのこと。

前橋国際芸術祭 2026 キービジュアル イメージ

オフィシャルロゴ・キービジュアル(イメージ)

前橋国際芸術祭 2026 キービジュアル イメージ

オフィシャルロゴ・キービジュアル(デザイン:木住野彰悟)

前橋市では、これまで育んできた建築・アートを軸としたコンテンツの一層の拡充を官民一体で行なっていく考えで、未来へと確実に受け継いでいくことを目的に企画された最新プロジェクトがこの「前橋国際芸術祭」となります。単発ではなくビエンナーレ方式を採用したのもその意志を表したもので、隔年開催によって進化させ、市民への浸透を図ります。国内外で活躍する建築家による各施設が今後整備されていくなかで、その使い手となる市民の感性を、芸術祭を通して育んでいくことも企図されています。

 

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“めぶく。”策定から10年、次のステップへ

総合プロデューサー メッセージ

前橋国際芸術祭は、誰か一人の想いから始まったわけではありません。前橋という土地で長年積み重ねられてきたまちづくりの実践と、それに呼応するかたちでアートや文化に惹かれて集まってきた人たちの存在が、見えない根を張り、土壌を耕し、そして今、この芸術祭という芽を押し上げるに至りました。
私たちが担うのは、そうした無数の芽吹きを、より遠くまで、より多くの人の心に届くかたちで実装していくことです。アーティストの感性と市民の生活が交差する場をどう創るか。ミュージアムの機能をどう拡張し、まちそのものを“舞台”に変えていくか。そして国内外の観客をどう迎え、次の創造へとつなげていくか。それはまさに、芸術都市・前橋を〈かたちにしていく〉仕事にほかなりません
この芸術祭に〈国際〉の名を冠したのは単なる外向きの姿勢ではなく、むしろ内なる開放を志向するためです。ローカルな経験と記憶がグローバルな問いと出会う場をつくりたい。分断の時代において、それでもなお越境しようとする人々の想像力を信じたい。前橋にはその受け皿となりうる空気と人の温度があります。
「めぶく。」という言葉には、ただ芽が出るという意味以上に、見えないものがかたちを得て立ち上がっていくという、都市と人間の深い関係性が込められているようにも思えます。私たちはこの言葉を未来の合言葉として、次の時代へと向かう芸術都市の歩みを、共に進めていきたいと願っています。
みなさんとともに、この挑戦を育んでいけることを、心から楽しみにしています。

「前橋国際芸術祭 2026」総合プロデューサー 田中 仁

前橋国際芸術祭 2026 記者発表会

記者発表会に登壇した田中 仁 氏(田中仁財団代表理事、ジンズホールディングス代表取締役CEO)

 

 

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詳細 / エイベックス・クリエイター・エージェンシープレスリリース(2025年8月21日発表時点)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000161.000065348.html

前橋市中心市街地での建築・アート プロジェクト

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Maebashi Brick Warehouse / 髙濱史子建築設計事務所 / +ft+

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