特注照明を手がけるワイ・エス・エム(Y.S.M)の企画展「BEHIND THE LIGHT Vol.2」 が、東京・表参道の TIERS GALLERY by arakawagrip にて10月16日(木)から4日間にわたり開催されます。
本展は、2022年に創業30周年を記念し 2022年9月に同会場にて開催された企画展「BEHIND THE LIGHT」に続くものです。
ワイ・エス・エム創業30周年記念展「BEHIND THE LIGHT」TIERS GALLERY by arakawagripにて、14の特注照明を展示
参加するデザイナーは、国際的に活動し次世代のデザイン界を担う注目の若手8組。今年4月にイタリア・ミラノで行われた国際的なデザインの祭典「ミラノサローネ」を含む「ミラノデザインウィーク」期間中に同地にて発表された新作など計12作品を見ることができます。
メッセージ
本展では、効率化や大量生産が優先される今の時代に、あえて「少人数で、特注で、時間をかけてつくる」ことの意味を問いかけます。デザイナーと共に制作することで生まれる作品や空間を通じて、私たちのものづくりの価値を体感いただけます。
Y.S.Mは、設計から製造、組み立てまでを一貫して行う小さなチームです。デザイナーと同じ目線で向き合い、アイデア段階から完成まで共に歩みながら形にしていきます。それは単なる製品ではなく、人と人との想いや関係を込めた「光」を生み出すことを目指しています。
光は、世界中どこでも夜になれば灯される普遍的な存在です。海外市場への挑戦を通じて、その普遍性と、人々が光に込める思いの深さを改めて実感しました。その光が、誰かの毎日を少し幸せにする——その喜びを、本展を通して共有したいと考えています。

〈Seed〉designed by AATISMO Photo: Shinya Sato
デザイナー:AATISMO
プロフィール:
建築家・デザイナーの海老塚啓太、工業デザイナーの中森大樹、建築家の桝永絵理子の3人によるデザインチーム。アートとテクノロジー、原初と未来、そして野生の思考と科学的思考の融合を図り、建築・デザイン・アートなど分野を横断した活動を通じて様々な物事の本質的価値を探求している。デザインした照明は、LuminaやGiorgettiといったイタリアのブランドで製品化されている。
これまでの主な受賞に「LEXUS DESIGN AWARD 2015 Prototype Winner」「KOKUYO DESIGN AWARD 2016」グランプリ、「iF Design Award」などがある。
https://www.instagram.com/aatismo/

AATISMO:左から、中森大樹、桝永絵理子、海老塚啓太 Photo: Shinya Sato
デザイナーコメント:
〈Seed〉は、円盤状の半透明の発光面と、そこに取り付く半円状の細い金属フレームで構成されています。発光面はぼんやりと背景を透かし、生命を感じさせる暖かい光を発します。フレームは発光面を保護するだけではなく、持ち運ぶ際の把手となり、壁のフックなどに引っかけることもでき、床に置いた際には発光面を立たせて周囲に光を届けます。物や風によって運ばれ、その生存範囲を広げていくように、「Seed」は人々に寄り添うことで、さまざまな場所で光を届けます。2025年ミラノサローネ「Salone Satellite」にて出展。

〈LIGHT HOUSE〉designed by Atelier matic × ONE KILN
デザイナー:Atelier matic × ONE KILN
プロフィール:
Atelier matic / 外山 翔
空間デザイナーとして、店舗設計や展示会などのイベント会場構成、PARCOや東京ミッドタウンなどのディスプレイデザインを手掛ける。
自然物と人工物の融合を得意とし、石や木、アクリルなどを使用したアートピースを制作し、国内外で展示を行なっている。
https://matic.jp.net
ONE KILN / 城戸雄介
2008年に鹿児島市で陶器工房「ワンキルン」(”ひとつの窯”の意味)を設立。”MADE IN KAGOSHIMA”を掲げ、桜島の火山灰を釉薬に用いたASHシリーズや、自ら掘り起こした地元の土を使用したCULTIVATEシリーズなど、地元素材を生かしたテーブルウェアを制作している。
https://onekiln.jp

左から、城戸雄介(ONE KILN)、外山 翔(Atelier matic)
デザイナーコメント:
生活の中に溶け込む、日常使いのできるONE KILNの器を再構築して作り上げた陶器の照明〈LIGHT HOUSE〉は、表面の釉薬を通して生まれる光の表情が魅力的なシリーズです。

〈Lineair〉designed by Baptiste Vandaele
デザイナー:Baptiste Vandaele
プロフィール:
ベルギーを拠点に国際的に活動するデザイナー。1999年ベルギー・コルトレイク生まれ。高校で美術と建築を学んだことをきっかけに創作の道に進み、18歳で全国デザイン賞に選出。コルトレイクのHowest Universityでインダストリアルデザインを修了後、ロンドンのRoyal College of Artに合格するも進学を見送り、自身のスタジオを設立した。以来、デンマークやイタリア、日本、フランスをはじめとする国際的な舞台でコレクションを発表し、新しい視点をもたらす作品で注目を集めている。
https://www.baptistevandaele.com

Baptiste Vandaele
デザイナーコメント:
〈Lineair〉は、複数の面が組み合わさって構成される幾何学的な形状のテーブルランプです。板金の精巧な技術でしかなしえないLineairの形状は、直線の美しさを際立たせます。面同士が向き合い反射によって広がる光は、間接照明の優雅な演出を生み出してくれます。Lineairは単なる照明器具に留まることなく、その存在自体がアート性を持ち、空間のアクセントになります。〈Lineair〉のデザインは、素材の使用、構造、スタイルにおいてバウハウス芸術運動からのインスピレーションを鮮明に表現しました。

〈ubique〉designed by Hiroto Yoshizoe Photo by Shunsuke Watanabe
デザイナー:Hiroto Yoshizoe / 吉添裕人
プロフィール:
1986年生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。独立後、都市開発や商業施設開発等の空間デザインを主軸としたクライアントワークに従事。制作活動では日本の文化背景や宗教観と通ずる「変化」「動き」「時間」といった不完全で流動性のある事象を扱う。なかでも変容し続ける「光と影」の要素を軸に探究。すべての事物(素材)は光と影を瞬間的にかたちに留め、認知するための媒体であると捉え、その間に生じる現象と知覚の関係性を用いて制作を行う。
これまでの主な受賞に、「HUBLOT DESIGN PRIZE 2022」Finalist、「LEXUS DESIGN AWARD 2017」グランプリなど多数。
京都芸術大学非常勤講師。
https://www.hirotoyoshizoe.com

吉添裕人
デザイナーコメント:
〈ubique〉は、金属、絹、ワイヤーで構成され、空間と知覚に影響を与える動的な装置として機能します。作品の中核をなすのが、荒川技研工業が製造するワイヤーハンギングシステム〈ARAKAWA GRIP〉です。同システムの機構により、ワイヤー上のパーツを自由に配置することができ、全体の姿や、光や影の効果を調整することができます。
ubique(ウビークエ)とは、ラテン語で「遍在すること」を意味します。この作品は光や影という無形の要素が素材や空間へと浸透し、あらゆる場所に遍在しうる様子を映し出します。
Y.S.Mコメント:
Y.S.MとしてはLEDへの配線接続とアクリル部材の組み込みが中心で、大きな難所はありませんでした。ただ一つ想定外だったのは、使用予定だった配線の在庫が社内にもメーカーにもなく、調達に奔走したことです。思いのほか探し回ることになりましたが、最終的には代替を確保し、無事に製作を進めることができました。
コラボレーション:荒川技研工業
制作協力:松井機業、落合製作所、シーフォース
編集部註.2025年ミラノデザインウィーク「ALCOVA MILANO 2025」にてインスタレーション作品として披露。「TOKYO MIDTOWN DESIGN LIVE 2025」にも出展(2025年10月10日~11月5日)

〈Toi〉designed by JYUNICHIRO YOKOTA STUDIO
デザイナー:JYUNICHIRO YOKOTA STUDIO
プロフィール:
プロダクトデザイナーの横田純一郎が主宰。オランダのDesign Academy Eindhoven(DAE)に留学後、デザインオフィス、大手電機メーカー勤務を経て、2020年にJUNICHIRO YOKOTA STUDIOを設立。日用品や電化製品といったプロダクトを中心に、戦略開発からアウトプットまで一貫したデザイン活動を行っている。クライアントが抱えている課題を解決するだけでなく、固定概念にとらわれない視点や手法を積極的に取り入れる事で新たな発見や価値の創出を日々探求しながら活動している。
https://junichiroyokota.com

JUNICHIRO YOKOTA
デザイナーコメント:
和紙で作られた複数個のシェードを必要に応じた高さに調整することができる照明。シェードを分けることで広範囲に光をあてたり、まとめる事で限定的な光にも変化します。〈Toi〉という名前は、フランス語で「君、あなた」を意味します。光の高さを上下することで「あなた」の高さにして欲しい、あなたのライトにして欲しいという思いを込めたものです。

〈Kaleido〉designed by JYUNICHIRO YOKOTA STUDIO
デザイナー:JUNICHIRO YOKOTA STUDIO
プロフィール:同上
デザイナーコメント:
Kaleidoとは、ギリシャ語の”kalos”(=美しい)、”eldos”(=形態)を語源とする単語で、変幻極まりない、二度と同じ形には出来ないという意味を持ちます。万華鏡の語源でもあります。
今作品ではカメラレンズなど使われるオプティカルガラスの端材を使用しており、リサイクルという観点だけでは無く、その素材の魅力を最大化し普遍的な美しさと価値を付与する事を目指し製作されました。生まれる模様は、同じ模様になる事はなく幻想的で唯一無二のガラス照明が完成します。

〈Condivi〉designed by JYUNICHIRO YOKOTA STUDIO
デザイナー:JUNICHIRO YOKOTA STUDIO
プロフィール:同上
デザイナーコメント:
〈Condivi〉とは、イタリア語で「共有する・分かち合う」を意味する、灯りを共有することを目指したポータブル照明です。灯りを分かち合う事でより便利になるだけでなく、誰かと共有することでコミュニケーションやストーリーを生み出し、より豊かな時間へと導きます。複数人と光を共有することに特化しており、左右に延びた形状となっています。また、上部の発光面は、360°動く構造になっており、ちょうど良いと思う光の共有が可能となります。

Y.S.M〈Moment〉designed by Kotaro Usugami
デザイナー:Kotaro Usugami / 薄上紘太郎
プロフィール:
1991年福島県生まれ。金沢美術工芸大学美術工芸研究科デザイン専攻製品デザインコース修了。2016年より時計メーカーにて腕時計のデザインに従事。その後デザイン事務所UUD™️を設立。フィジカルな試行錯誤によるプロダクトデザインのプロセスを軸に、製品単体のデザインに留まらず包括的なアプローチを実践している。素材や加工技術への洞察に重きを置き、特に金属素材の美しさを引き出すデザインをライフワークとしている。
これまでの主な受賞として「EDIDA Young Japanese Design Talent 2025」など多数。
日本大学生産工学部機械工学科非常勤講師。
https://www.kotarousugami.com

Kotaro Usugami
デザイナーコメント:
筒が互い違いにつながり、まるで時が止まったような感覚をもたらす照明。薄くても強度があるステンレス素材の特性を最大限に活かすことで、彫刻的で浮遊感のあるデザインが生まれました。ありふれた規格品を高度な金属加工技術で仕上げ、オブジェとしての存在感を追求しています。 時が止まったように感じるデザインは耐久性・リサイクル性に優れる素材の永続性を示唆しており、長さの異なる筒の連続が空間に心地よいリズムをもたらします。

Y.S.M〈Sail to the moon〉designed by Kotaro Usugami
デザイナー:Kotaro Usugami / 薄上紘太郎
プロフィール:同上
デザイナーコメント:
アルミの結晶模様加工を活かしたブラケットライト。傾けるたびにきらきら光るアルミ板を照明の反射板に取り入れることで、光の角度によって表情が変化する幻想的なプロダクトが生まれました。光に対して自在に角度を変えることができる帆のような構造に、太陽と月の関係を重ね合わせ”Sail to the Moon”と名付けています。

〈ALBA〉designed by NAO IWAMATSU
デザイナー:NAO IWAMATSU / 岩松直明
プロフィール:
奈良県生まれ。京都工芸繊維大学大学院修了。東京を拠点に活動するインダストリアルデザイナー。 “Narrative Minimalism|語りかけるミニマリズム”をテーマに掲げ、機能的でありながら、ミニマルなフォルムと明快な構造を探索する過程で詩的な存在感をプロダクトに纏わせることを探索する。日本の伝統文化や現代のものづくりへの問いなどを起点にする、独自のアナロジカルなアプローチを用いて、素材や技術の特性・企業の思想やビジョンを体現するデザインを数多く手掛ける。
https://naoiwamatsu.com

NAO IWAMATSU
デザイナーコメント:
ALBAは、光源と提灯の関係を現代の技術を前提に再構築することで、現代的でありながら時代を超えて人々を魅了するアイコニックな光の彫刻としてデザインしました。すり鉢形状が合わさった和紙のリングは、その象徴的な存在感で人々を魅了すると同時に、空間を柔らかな間接光で包み込みます。この構造は水平・垂直どちらの向きでも吊るすことができ、専用のベースと組み合わせることでウォールランプやフロアランプとしても機能します。
提灯制作:小嶋商店

〈SHAKU〉designed by NAO IWAMATSU
デザイナーコメント:
SHAKUは、「光を注ぐ」というコンセプトのもと、日本の神社や寺院で使われる柄杓の伝統的な構造から着想を得てデザインしました。日本の伝統的な木製の柄杓は、分解できるように作られており、壊れた部分だけを交換することで、何十年、時には何世紀にもわたって使い続けることができます。SHAKUの照明デザインにおいても、この考え方を取り入れ、露出したワイヤーを特徴とすることで、分解を容易にし、角度の自由な調整を可能にしています。

〈Stir〉designed by Ryosuke Akagi
デザイナー:RYOSUKE AKAGI DESIGN
プロフィール:
兵庫県生まれ 神戸芸術工科大学卒業。東京を拠点に建築、空間設計を軸に活動するデザイナーの赤木亮介が主宰。 住宅や店舗設計、展示会の会場構成などを手掛ける。空間にまつわるプロダクトや家具のデザインも積極的に行い、 空間とモノの迫間から生み出される、新たな感覚や価値観を探求している。領域に囚われることなく手を動かしながら思考し、フィジカルな経験からアウトプットを行うことを心がけている。
https://ryosukeakagi.com

Ryosuke Akagi
デザイナーコメント:
“Stir”は職人の手作業と機械による工場製造、2つのガラスの手法を組み合わせてつくられた照明です。ガラスは人々に”柔らかさ”と”硬さ”という異なる2つの感覚を与えます。職人の吹きガラスで制作されたものは柔らかく、機械での製造は硬い印象があり、同じガラスでありながら全くの別の質感を感じる事ができます。異なった技法のガラスが上下に組み合わさり、1つの照明器具が出来上がることで、 シェードの内部に光が浮き上がるような不思議な効果が生まれます。Stirという言葉の意味と同じく、新旧の製造技術が混ざり合い新しいガラスのニュアンス をつくり上げます。
参加デザイナー:AATISMO|Atelier matic × ONE KILN|Baptiste Vandaele|Hiroto Yoshizoe|JUNICHIRO YOKOTA STUDIO|Kotaro Usugami|NAO IWAMATSU|RYOSUKE AKAGI DESIGN
会期:2025年10月16日(木)〜19日(日)※会期中無休
開場時間:木・金曜 16:00-20:00、土・日曜 12:00-20:00
会場:TIERS GALLERY by arakawagrip
所在地:東京都渋谷区神宮前5丁目7-12 TIERS 3F(Google Map)
入場料:無料(予約不要)
主催:ワイ・エス・エム
協⼒:荒川技研⼯業
展示ディレクション:BOOKSHOPBOYS

詳細
https://www.arakawagrip.co.jp/tiersgallery/archive/behind-the-light-vol-2/
Y.S.M インスタグラム
https://www.instagram.com/ysm_co/