富山県高岡市で1916年(大正5年)に創業した鋳物メーカー・能作(のうさく)から、新たなジュエリーブランド・NS by NOUSAKU(エヌエス バイ ノウサク)がデビュー。その第一弾となる、1st collection “Ribbon”のデザインを、永山祐子建築設計を率いる建築家の永山祐子氏が担当しています。
NS by NOUSAKU キービジュアル / ブランド名の「NS」とは、錫の元素記号である「Sn」に由来し、それを反転させて命名
能作は、鋳物のまちとして知られる富山の高岡にて、仏具や茶道具の製造からスタートして以来、100年以上にわたって鋳造の技を受け継いできました。近年では、錫(すず)の金属としての特性を生かした、錫100%製の曲がる〈KAGO〉や酒器など、現代の居住空間・ライフスタイルにあわせたプロダクトやインテリアを製造・販売しています。
今回、永山氏とのタッグを組むことで、錫という素材の可能性を拡げたジュエリーの開発に成功、合わせて26のプロダクトを世に送り出しています。
『TECTURE MAG』では、永山氏も出席して11月初旬に都内にて行われた「NS by NOUSAKU」のローンチ発表会を取材しました(特記なき画像はすべて能作提供)。
NS by NOUSAKU ローンチ発表会での展示風景 Photo: TEAM TECTURE MAG
永山祐子氏によるコンセプトテキスト
古来、日本では、錫は食器など直接肌に触れるモノに使用されてきました。
錫の魅力は、白く温かい輝き、やわらかさ、軽さ、すっと体温に馴染む心地よさです。
主にジュエリーに使われてきた金属は金、銀、プラチナですが、
錫もそこに並ぶ可能性を秘めています。
錫の良さでもあるやわらかさは、ジュエリー製作の上では
不利になる部分もありましたが、技術的に強度を上げることができました。
錫の特徴を生かしたジュエリーを通し、
さらなる錫の可能性を世界に発信していきたいと思います。シリーズコンセプト
1st collection “Ribbon”しなやかに体へと巻きついていく“リボン”
曲線上を流れるようにあしらった
アコヤパールの深い輝きと、
錫の穏やかな輝きが共鳴します。体の形に馴染んでいくのも
やわらかい錫ならではの特徴。リボンの結び方を変えるように、
シチュエーションにあわせて、
組み合わせを楽しんでいただきたいと思います。永山祐子
錫は(上のテキストでも永山氏が触れているとおり)、独特のしなやかさをもった”やわらかい金属”です。言い換えれば、細くて小さなプロダクトの加工が難しい素材でもあります。このため、能作では、2023年にM&Aによって傘下におさめた、ジュエリー製造の高い技術をもつユーボネクス(新潟)とともに、錫特有の”しなやかさ”を維持しつつ、ジュエリーに必要な強度をもたせた素材の開発に取り組みました。錫97%に3%の金を配合した合金は、永山氏による流麗なデザインに応え、イヤーカフ、ピアス、リング、チョーカータイプを含めたネックレスの4シリーズを展開しています(下のプロダクト画像はコレクションからの抜粋)。
「素材として、錫は長い製造の歴史があり、アコヤパールも日本で育まれた養殖技術で生み出されるものです。両者はどちらもやわらかな白さを帯び、見た目にもマッチするのではないか。そして今回のコレクションはユニセックスなジュエリーにしたかったこともあり、男性が使っても違和感のない真珠を採用しました。肌への馴染みがよく、体に合わせて形を変えることができる錫のしなやかさは、人の体に巻き付いていくリボンのよう。そんなイメージでファーストスケッチを描いて、流れるような錫の曲線の上にアコヤパールをのせ、白い輝きの共鳴を意識しながら、全体のデザインを考えていきました。」(永山氏談)
Ring / Ribbon Ring Dubble
Ring / Ribbon Ring Flare
Ring / Ribbon Ring Tinfinity, Small
Ribbon Ring Tinfinity, Large
Earring / Ribbon Earring Small Pearl + Short Back Ribbon, Single
Earring / Ribbon Earring Line + Short Back Ribbon, Single
Earrings / Ribbon Earring Drop A, Single
Ear cuff / Ribbon Ear cuff Double Pearl
Ear cuffs / Ribbon Ear cuff Mini Pearl B
永山氏がデザインした今回のファーストコレクションの中でも、”やわらかい金属”である錫の特性を生かしたデザインとなっているのがイヤーカフ(Ear cuffs)です。耳につけたとき、指先にほんの少し力を入れれば、耳たぶのかたち・厚みにぴったりと合わせることができます(下の画:イヤーカフを含めたファーストコレクションを身につけている永山氏)。
ジュエリーおよび展示什器のデザインについてメディアに説明中の永山氏。「イヤリングの類はなにかの拍子に耳から外れ、片方を失くしまったという人は多いと思いますが、NSのカフならその心配はなくなるはず。」(同氏談) Photo: TEAM TECTURE MAG
「このジュエリーシリーズは、たとえば仕事終わりにパーティなどに出かけるという場面でも、ワンパーツ足すだけで華やかさが増します。デイリーではシンプルに、夜はシチュエーションに合わせてボリュームを変化させることができます。だからできれば、単体ではなく複数で購入してほしい(笑)。少しずつ買い足していくのも楽しいし、つけかた、位置、つける数など、その人の好みでバリエーションを展開できるようにデザインしました。結び方ひとつで表現を変えられるリボンのように、さまざまなシーンで組み合わせを変えて楽しんでもらえたら。」(永山氏談)
ローンチ発表会の数日後にコレド室町テラス 1Fに構えるストアの空間デザインイメージ(スクリーンの画)と、連動した展示什器のデザインについて解説する永山氏(画面右は能作 代表取締役社長 能作千春氏) Photo: TEAM TECTURE MAG
「最初のストアとして、空間全体でブランドの世界観を伝えられるデザインにしたいと考えました。イメージしたのは、錫が雨のように上から降ってきて、雫となって降り注ぐ光景。雫が落ちる先、蓮の葉のような天板には、所々にくぼみを設けて、ここにジュエリーを置いてディスプレイできるようになっています(天板製作:能作)。手鏡は落ちてきた錫の雫をイメージした台形で、手鏡だけ別物にならないよう、トータルでデザインしました。台を支える円錐形は、錫の鋳造の現場で鋳型づくりに使われる砂を固めてつくったものです。この展示什器は分解が可能で、POP-UPやイベントなどで使うことができます。」(永山氏談)
ローンチ発表会でのジュエリー展示風景
天板に差し込まれている台形の手鏡や、ピアスを吊り下げている小型のスタンドを含め、すべて永山氏がデザインした
NS by NOUSAKU イヤーカフ
NS by NOUSAKU リング
NS by NOUSAKU ローンチ発表会でのタッチ&トライ(体験会)の様子
NS by NOUSAKUのジュエリーを身につけ、フォトセッションに応じる永山氏と能作氏(右)
ブランドメッセージ
やさしく肌に馴染む、
なめらかな錫ジュエリー
しなやかに、軽やかに、穏やかに。
人生とともに変化し、自らに馴染んでいく。
流れるような美しい曲線と、洗練されたミニマルなデザイン。
錫から生まれた、上品でなめらかな素材感。
お気に入りのひとつを選んでみても、
その日の気分によって組み合わせてみても。
これまでにない、錫ジュエリーを日常に。
NS by NOUSAKU キービジュアルをはじめ、商品パッケージやショッピングバック、公式ウェブサイトのデザインなどのアートディレクションを、ブランディングディレクターも兼任した永山氏が起用した、グラフィックデザイナーでアートディレクターの脇田あすか氏が担当している
販売価格は税込で9,900円から74,800円、ほとんどが30,000円台。ジェンダーフリー・ユニセックスでの購入のほか、結婚10年の節目に迎える「錫婚式」を祝う品としても想定している能作は、この錫ジュエリーに「この先もしなやかで美しく光輝き続けられる関係を」という願いを込めている
永山氏がデザインし、コレド室町テラス1Fに11月20日にオープンしたストア(下の画像)では、すべてのラインナップを展開。そのほか、プロダクトの販売は、オンラインストアを有するブランドの公式サイトでも行っています。
Photo: Satoshi Takae
NS by NOUSAKU ウェブサイト
https://www.ns-by-nousaku.com/