大阪・関西万博でトイレをはじめ、休憩所、展示施設、ギャラリー、ポップアップステージ、サテライトスタジオなど、多彩なかたちで生み出された共用施設。本記事では、これら20の施設を一挙にご紹介します。
これらの施設は、若手建築家を対象とした公募型プロポーザルによって選出されました。設計者には、大阪・関西万博の会場デザインコンセプト「多様でありながら、ひとつ」に沿い、SDGs(持続可能な開発目標)の達成につながる意欲的かつ大胆な提案によって、個性豊かで魅力的な施設を創出することが求められました。
プロポーザル審査員であり、大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーでもある藤本壮介氏は、20の施設について次のように総括しています。
「皆さんがチャレンジングなことをやっている。それは僕が最初に若手を登用しようと意図したところでもあるのですが、当然ただのチャレンジではなくて、これからの社会の中で建築がどういうふうに社会を良くしていくのか、あるいは新しい価値観を生んでいくのかというところが深く考えられています。
(中略)
若いというのは素晴らしいですね。ビジョンとパッション、アイディアがあって。ただアイディアがあっても、すぐ実現できるわけではありません。いろんな議論があったり、制約があったりする中で、粘り強く実現していく。そのエネルギーと発想の柔軟さがあるので、僕は今回の万博で、この20組のつくったものを見て歩くだけでも、とても価値があると思います」
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藤本氏が語るように、20組の若手建築家による挑戦は、それぞれの施設に個性と未来への視点をもたらしています。そんな意欲作の数々を機能別に紹介していきます!
ポップアップステージ 4施設
〈ポップアップステージ(東外)〉
設計:萬代基介建築設計事務所
▼建築のここに注目!
- 会期後の移築を前提とした、用途変更にも対応する柔軟性
- 万博を象徴する「太陽のような開口」と「リング」を纏った構造体
- 緑と調和する軽やかな膜の鉄骨ドーム

Photo: 高木康広
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〈ポップアップステージ(東内)〉
設計:KIRI ARCHITECTS
▼建築のここに注目!
- 自然に委ね絶えず形を変える、人工霧による雲の建築
- 曖昧な雲が輪郭を描く、涼やかで柔らかなステージ

Photo: Ikuya Sasaki
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〈ポップアップステージ(西)〉
設計:三井嶺建築設計事務所
▼建築のここに注目!
- 門型構成が導く、鳥居のような引力をもつステージ
- 松の素材をそのままに、祝祭場の原点をかたちに
- 丸太を建て起こし屋根を葺く人力施工

Photo: 鈴木淳平
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〈ポップアップステージ(北)〉
設計:axonometric
▼建築のここに注目!
- 木材の流通過程に万博の開催期間を挿入する
- 乾燥収縮の個体差を受け止める、丸太が浮かぶテンセグリティ構造
- 乾燥という時間を抱き込む、プロセスが風景となる建築

Photo: Yasu Kojima
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サテライトスタジオ 2施設
〈サテライトスタジオ(東)〉
設計:ナノメートルアーキテクチャー
▼建築のここに注目!
- 使い道を失った”困った木”で組み上げる、唯一無二の積層木構造
- 入手が容易な苫を用いた、仮設建築における建材の再考
- 建材選定から始まる、建築の”外側”へのまなざし

Photo: ToLoLo studio
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〈サテライトスタジオ(西)〉
設計:佐藤研吾建築設計事務所
▼建築のここに注目!
- 基礎から屋根まで、すべてを運べる可搬型構成
- 移設を前提に据えた建築のあり方

Photo: 大竹央祐
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トイレ 8施設
〈トイレ1〉
設計:GROUP
▼建築のここに注目!
- 万博会場の中に再構成した、人間以外のための生態系
- 鋼板がぼんやりと映す、もう1つの夢洲の風景

Photo: 村田 啓
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〈トイレ2〉
設計:studio m!kke+Studio on_site+Yurica Design and Architecture
▼建築のここに注目!
- “残念石”が400年の時を経て建築として蘇る
- 石を一切傷つけずに空間をつくる、最新デジタル技術による設計手法

Photo: 大竹央祐
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〈トイレ3〉
設計:小俣裕亮建築設計事務所 new building office
▼建築のここに注目!
- 気温や風速に応じてかたちを変える、環境応答型の空気膜屋根
- 光と風を取り込む膜構造が、柔らかく包む共用空間
- 1970年の万博と接続する構造表現

Photo: new building office
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〈トイレ4〉
設計:浜田晶則建築設計事務所
▼建築のここに注目!
- 地層のように立ち上がるランドスケープ建築
- 土壁と3Dプリンターが融合する、人・自然・機械の共生のかたち
- 日本各地の石をサンプリングした、有機的で身体に寄り添う曲線形状

Photo: 大竹央祐
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〈トイレ5〉
設計:米澤隆建築設計事務所
▼建築のここに注目!
- 積み木のように積み重なる軽やかさ
- ユニット単位で再構成・再利用できる、持続可能な仮設建築モデル

Photo: TECTURE MAG
〈トイレ6〉
設計:KUMA & ELSA
▼建築のここに注目!
- 水の循環を建築全体で可視化した、”水のパビリオン”としてのトイレ
- 介助や多様な性に配慮した、包摂的な設計によるオールジェンダートイレ
- 水を介して人と人が交差する、ひらかれた公共空間なかたち

Photo: KUMA & ELSA
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〈トイレ7〉
設計:HIGASHIYAMA STUDIO+farm+NOD
▼建築のここに注目!
- 複雑な曲面を構成する、3Dプリンターによる外皮
- ポリカーボネートパネルの透過と反射が演出する光あふれる空間体験

Photo: 鈴木悠生
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〈トイレ8〉
設計:斎藤信吾建築設計事務所+Ateliers Mumu Tashiro
▼建築のここに注目!
- 多様な性と文化に配慮した新しいトイレの構成
- 個性ある棟が群として1つの風景をつくる

Photo: 斎藤信吾建築設計事務所+Ateliers Mumu Tashiro
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休憩所 4施設
〈休憩所1〉
設計:o+h
▼建築のここに注目!
- 約40種類のデッドストック生地が織りなす、色と質感のグラデーション屋根
- 風に揺れるテキスタイルがやわらかな光を生み出す
- 冷気が伝わるハンモック状の床がつくる休憩スペース

Photo: 太田拓実
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〈休憩所2〉
設計:工藤浩平建築設計事務所
▼建築のここに注目!
- 瀬戸内産の自然石を編むように吊るした、石のパーゴラがつくる半屋外空間
- 機能ごとに独立させた透明性のある分棟形式
- 石が語る、会期後の数万年の時間

Photo: 楠瀬友将
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〈休憩所3〉
設計:山田紗子建築設計事務所
▼建築のここに注目!
- 建築郡と樹木郡が織りなす開放的な風景
- 多様な色・かたち・密度が、屋内外の境界を横断し交錯する

Photo: 大竹央祐
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〈休憩所4〉
設計:MIDW+Niimori Jamison
▼建築のここに注目!
- 埋立地の地盤処理という制約から発想された、”掘る”ことを起点とする設計プロセス
- 山と谷の地形が織りなす、連続する洞窟状の空間体験

Photo: 大竹央祐
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展示場 2施設
〈ギャラリーWEST〉
設計:teco
▼建築のここに注目!
- 廃棄食材や食品残渣からつくられた”ベジタブルコンクリート”
- 小さな鉄骨溝形鋼を連結して自重でたわむカテナリー屋根

Photo: TECTURE MAG
〈フューチャーライフヴィレッジ〉
設計:KOMPAS JAPAN
▼建築のここに注目!
- 大小の円形展示棟が点在する集落のような風景
- 蛇籠壁による半屋外空間と、解体・再利用可能な構法
- 中庭を核に水が循環する実験的な環境空間

Photo: TECTURE MAG
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