2021年9月15日初掲載、12月12日解説動画情報を追記
「建築家・坂倉準三と髙島屋の戦後復興」が、東京・日本橋の髙島屋史料館TOKYOにて、9月15日から開催されます。
髙島屋創業190周年を記念した展覧会で、建築史家の松隈 洋氏(京都工芸繊維大学美術工芸資料館教授)が監修者を務めます。
日本の高度経済成長期に呼応し、神奈川県立近代美術館(現・鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム)、新宿駅西口広場など、数々の建築物を手掛けた坂倉準三(1901-1969)。日本近代を代表する建築家の1人でもある坂倉が、髙島屋の戦後復興と関わりがあったことは、あまり知られていません。
1929年に渡仏した坂倉は、近代およびモダニズム建築史上最も重要な建築家の1人である、ル・コルビュジエ(1887-1965)に学び、1937年に開催されたパリ万国博覧会では〈日本館〉を設計。そこで、出品していた髙島屋と出会うこととなります。
戦後間もない1948年には、坂倉と髙島屋との初めての仕事として、〈髙島屋和歌山支店〉が竣工(現存せず)。戦後の苦難を乗り越えて設計された木造建築で、延べ1,300m²ほどの小規模な百貨店ながら、バタフライ屋根とその下に広がるスロープ空間が、都市的な視点から発想されており、調和のとれた近代的な百貨店空間を印象づける建築でした。各階をスロープでつないだ斬新かつ近代的な百貨店空間で、坂倉の都市的視点からなる商業施設の先駆けといえる建築でした。
続いて坂倉は、〈髙島屋大阪難波新館〉改増築(ニューブロードフロア)に取り組みます。延床面積が1万m²を超える大型プロジェクトで、戦争で被災した南海難波駅の高架下の大食堂跡(地下部分)を髙島屋の売場へと改築するという困難なものでしたが、坂倉は駅コンコースと百貨店を往来する人流を「谷川の水」の流れに見立て、複雑な動線を見事に処理、1950年に完成します。坂倉の熱意と、70日間の突貫工事によって実現した、坂倉が初めて取り組んだ、交通空間と商業施設の複合建築でした。
これらの仕事で成功をおさめた坂倉は、1957年に南海電鉄の事業〈南海会館〉の設計を担当しています(現存せず)。
さらに、坂倉と髙島屋の関わりは建築だけにとどまらず、フランスの建築家・デザイナーであるシャルロット・ペリアン(1903-1999)との交流を通して、1941年には東京・日本橋髙島屋にて「ペリアン女史日本創作展覧会 2601年住宅内部装備への一示唆 選擇・伝統・創造」展を開催。さらに1955年には「巴里1955年―芸術の綜合への提案―コルビュジエ、レジェ、ペリアン3人展」が開催されるに至りました。
戦後の社会が高度経済成長と大衆消費に向かうなか、坂倉は髙島屋での仕事を通じて、都市への人口集中、交通の混雑、商業施設の大型化など、複雑化する機能をはじめとする諸条件を、合理的に解決することをとことん考え、挑んだ建築家でした。
本展では、坂倉と髙島屋の仕事が、のちに彼が取り組んだ都市デザインの代表作といわれる渋谷〈東急会館〉(1954年竣工、現存せず)や〈新宿西口広場・地下駐車場〉(1966年)へと接続し、坂倉の都市デザインの礎をつくったこと、また、坂倉が髙島屋と協働し、多くの人々が集まる百貨店という公共空間を、どのように快適で美しい空間へと創造してきたかを紹介します。
関連コンテンツとして、監修者の松隈 洋氏による、本展解説動画が期間限定で公開されます。視聴は無料。
著書『坂倉準三とは誰か』(王国社、2011年)をはじめ、近代建築史研究の第一人者として知られる松隈氏が、本展では紹介しきれなかったことなどについても語ります。(en)
公開期間:2021年12月11日(土)~2022年2月13日(日)
会期:2021年9月15(水)〜2022年2月13日(日)
※12月15日(水)より一部資料の展示替えあり
会場:髙島屋史料館TOKYO(日本橋髙島屋S.C.本館4階)
所在地:東京都中央区日本橋2丁目4-1(Google Map)
開館時間:11:00-19:00
休館日:月・火曜、年末年始(12月27日[月]~202年1月4日[火])
入場料:無料
※日本橋髙島屋S.C.ではCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策を実施。今後の拡大状況などを踏まえ、臨時に休館あるいは開館時間を変更する場合あり。最新の開館状況は、主催者・会場のウェブサイトにて随時掲載
本展詳細
https://www.takashimaya.co.jp/shiryokan/tokyo/archives/exhibition_vol1.html
髙島屋史料館TOKYOウェブサイト
https://www.takashimaya.co.jp/shiryokan/tokyo/exhibition/